『明日になれば』タリバン制圧前に撮影されたカブールで生きる3人の女性たち

『明日になれば』タリバン制圧前に撮影されたカブールで生きる3人の女性たち

2022-05-01 11:11:00

「アフガニスタンの女性のストーリーを語るというのは自分の義務だと思いました。今まであったステレオタイプではない別の視点を提供するのが私にとって重要だったのです」

ローマにいるサハラ・カリミ監督とリモート舞台挨拶(5月7日@アップリンク吉祥寺)

ローマに滞在するカリミ監督と俳優の南圭介氏司会によりリモート舞台挨拶がアップリンク吉祥寺で行われた。冒頭、現在ローマにいるカリミ監督が「本日は来ていただいて本当にありがとうございます。このように私の映画が日本で上映する機会ができたことを本当に幸せに思います。過去20年間、日本人や日本政府がアフガニスタンの発展のサポートをしてくださり、アフガニスタンと日本は良い関係がありました。現在アフガニスタンではタリバンが権力を掌握してしまったことで状況は悪くなっているんですが、日本の皆さんには、無視せずに、今まで達成してきた様々なものを見捨てないで、アフガン女性に手を差し伸ばしていただくという意味でも、私の映画が上映されることは大変重要なこと、喜ばしいことだと思っています」と挨拶。

「現在アフガニスタンで大きな闘いとなっているのが女性の権利問題です。制限に関して、宗教団体のリーダーたちが女性の権利管理の新しい、さらに厳しい制限を検討している最中だそうです。日本の人々にこの映画を見ていただいて、アフガニスタンの状況を考えていただいて、声をあげていただければと思います。」と想いを語った。

本作を作った理由を聞かれた監督は、「私はどんな国であってもどんな人であっても物語を語るということは大事なことだと思います。アフガニスタンに関する映画というのは、ステレオタイプが多いんですけれど、もちろんその中に真実もある程度含まれています。けれども、母性や妊娠や堕胎についてのテーマに関してはまだ語られていませんでした。私はアフガニスタン出身ですけれど、幸い物語を語るという機会に恵まれたので、アフガニスタンの女性のストーリーを語るというのは自分の義務だと思いました。今まであったステレオタイプではない別の視点を提供するのが私にとって重要だったのです。アフガニスタン国内で作られた映画はとても少ないんですけれど、幸い私がアフガニスタンにいた際にこの映画を撮ることができました。本作は全てアフガニスタン国内で撮影されています。出ていただいた役者さんたちも全員アフガニスタン人です。新しいストーリーを世界にお届けできると思いました。」と回答。

本作の日本での上映での収益の一部は人道支援、復興支援のためにウクライナ大使館に寄付される。監督は、「本作がウクライナに少しでも助けられることは大変嬉しいことです。というのも、カブールにタリバンが入ってきて、アフガニスタンから逃げなくてはいけなくなった時に私の脱出を手伝ってくれたのは、ウクライナ政府の飛行機だったからです。そのため、感謝の気持ちも込めて、少しでも恩返しができればと思います。アフガニスタンではタリバンと直接的な闘いとなっているわけではないのですが、そういうことが起きている国で女性や子供が生き延びるのは大変なことです。ですので、女性や子供達をはじめとした人々が生きながらえるよう手助けをしていただければと思います。私たちのペルシャ語では、『少しの水が一滴ずつ集まると海になる』というようなことわざがあります。少しかもしれないですけれど、手助けをしていただければと思います。誰かの人生を変えることができるかもしれないですし、自分の周りの方にも手伝おうと語りかけることで、小さな力も大きな力に変わることがあります。アフガニスタンやウクライナなど苦労している人たちには必要なことです。」と熱いメッセージを送った。

 

作品紹介

2021 年8月、イスラム原理主義組織タリバンによって制圧されたアフガニスタン。カ ブール掌握後初の記者会見で、タリバンの報道担当幹部は女性の権利は「シャリア(イ スラム法)の枠組みの中」で尊重されると発表した。あくまで女性の権利を男性より下に見るイスラム法の下でという意味だった。

本作ではカブールで生きる、リアルな3人の女性たちの姿が描かれる。 
義父母の面倒を見ながら家事に追われる孤独な妊婦。7年間浮気し続けた夫と離婚を 決意するも、妊娠が発覚した高学歴のテレビニュース・キャスター。妊娠したと同時 に姿を消した恋人がいながら、いとこのプロポーズを受け入れた 18 歳の少女。

監督のサハラ・カリミは、アフガニスタン映画機構(Afghan Film)初の女性会長を務める新鋭、サハラ・カリミの長編監督デビュー作にして、ヴェ ネチア国際映画祭オリゾンティ部門出品となった。タリバンがカブールを制圧したのち、イタリア、ローマに渡り映画学校で教鞭を取っている。

 

 

【ストーリー】

アフガニスタンの首都カブール。妊婦のハヴァは認知症を患う義母の世話をしながら、家事に追われる日々を送っている。身重の彼女を気遣うことなく、用事を言いつける義父と、連日のごとく友人を自宅に招き入れる夫。そんな彼女の唯一の喜びは、お腹の中にいる子どもと話すことだけだった。一方、ニュースキャスターのミリアムは結婚していた7年もの間、浮気三昧だった夫と離婚しようとしていたが、妊娠していることが発覚する。復縁を懇願する夫ファリードにうんざりしながらも、仕舞い込んでいたウエディングドレスを手にするミリアム。そして、結納の日を迎えたアイーシャには家族に言えない秘密があった。問題を解決するため、友人のマルジェに協力を仰ぐアイーシャだったが、そのためには多額のお金が必要だった。彼女たちが時同じくして向かった場所とは......。 

 

 

サハラ・カリミ監督コメント

伝統に縛られた社会での生活を変えようとしている同胞の女性たちについて語ること は、アフガニスタン出身の女性映画製作者としての私の使命です。

アフガニスタンの 多くの町や村を回り、ハヴァ、マリアム、アイーシャのような女性たちの実話を見つ けました。ハヴァはアフガニスタンの主婦、マリアムは知的で学のある女性、アイー シャは中産階級のティーンエイジャーです。

彼女たちは家父長制社会に屈服しないよ うに努めています。彼女たちの選択は、あらかじめ決められた人生への抵抗です。 私が目指したのは、何年も声を出すことができずにいたけれども、運命を変える覚悟 ができた女性たちの人生について語ることです。

略歴

1985 年生まれ。イランのアフガニスタン難民二世。15 歳の頃、2 本のイラン映画に出演。これをきっかけにス ロバキアで映画を学び始め、映画監督として博士号を 取得。その後 30 本以上の短編映画やドキュメンタリー 映画を制作し、国際映画祭で多数の受賞実績を持つ。 10年間、短編映画やドキュメンタリーを制作した後、 カブールに戻る。制作したドキュメンタリー映画 2 本 が国際的成功を収め、ARTEFrance と BBC で放送。
『明日になれば〜アフガニスタン、女たちの決断〜』(Hava、Maryam、Ayesha)』は、カリミ監督の長編処 女作であり、アフガニスタンの女優を起用し全編カブー ルで撮影。

 

監督が語る映画の背景 29分

 

 

『明日になれば』予告編

公式サイト

5月6日 アップリンク吉祥寺
5月27日 アップリンク京都

監督:サハラ・カリミ
脚本:サハラ・カリミ、サミ・ハシブ・ナビザダ
出演:アレズー・アリアプール フェレシュタ・アフシャール ハシバ・エブラヒミ

2019年/アフガニスタン・イラン・フランス/ペルシャ語、ダリ語/83分/カラー/原題:『Hava, Maryam,Ayesha』
配給:NEGA

©2019 Noori Pictures

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