ロマン・ポランスキー監督特集:初期傑作三作品『水の中のナイフ』『反撥』『袋小路』
今年6月に最新作『オフィサー・アンド・スパイ』が日本で公開され、90歳を目前にした今でも精力的に活動していることが伺える巨匠、ロマン・ポランスキー。
そんなポランスキー監督の初期傑作三作品『水の中のナイフ』『反撥』『袋小路』の配信が、DICE+にてスタート。それぞれ『水の中のナイフ』は28歳、『反撥』は31歳、『袋小路』は32歳のときの作品であるため、早熟の天才であると言って差し支えないだろう。
彼のモノクロ時代の作品は、より芸術的・技巧的で、その表現方法も剥き出しで鋭利な印象を受ける。『反撥』はベルリン国際映画祭にて審査員特別賞、『袋小路』も同映画祭のグランプリにあたる金熊賞を受賞するなど、確固たる評価を受けている作品である。
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『水の中のナイフ』(1962)
裕福な知識階級で、ワルシャワのスポーツ記者である壮年の夫アンジェイと美しいその妻のヨット遊びに、ヒッチハイクで拾った反抗的な貧しい若者が同行する。ヨット上で過ごす二日の間に起こる、それぞれの感情の揺れを鋭利な映像感覚で紡ぐ。ことごとく対立する夫と若者の新旧の価値観の間で不安げに佇む妻はやがて青年に傾斜していくが……。
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『反撥』(1965)
ロンドンのアパートで暮らす姉妹キャロルとヘレン。姉のヘレンが活動的な性格なのに対し、妹のキャロルは内気な女性だった。姉とその恋人との情事の音を毎晩のように聞かされていたキャロルは、次第に男性恐怖症に陥っていく。彼らがキャロルを部屋にひとり残して旅行に出かけた後、彼女の精神状態は急速に不安定になり、荒くれ男に暴行される夢やさまざまな幻覚を見始める。やがてその幻想は、彼女に殺人を犯させるまでになっていく……。
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『袋小路』(1966)
社会のしがらみから逃れ、孤島にそびえる古城を買い、そこで美しい若妻テレサと新生活を始めた中年男性ジョージ。そこへ、強盗をしくじって負傷した二人組のギャング、アルバートとリチャードが逃げ込んでくる。重傷を負っていたアルバートは翌日死ぬが、野卑な大男リチャードは我が物顔で振る舞い、城に居つく。やがて臆病なジョージと対照的に、テレサはその奇妙な同居生活を自由奔放に楽しんでいるような様子を見せるが……。