『マンティコア 怪物』物語の後半は、観客に委ねられた人間の心の闇を抉り出す映画

『マンティコア 怪物』物語の後半は、観客に委ねられた人間の心の闇を抉り出す映画

2024-04-18 08:37:00

『マンティコア 怪物』は、日本のアニメ『魔法少女ユキコ』にあこがれる少女を主人公にし話題となった映画『マジカル・ガール』が長編デビュー作のスペインの監督、カルロス・ベルムトの作品。

本作の主役フリアンは、会社のコンピュータとソフトを勝手に利用し、自宅でVR上に空想のモンスターを生み出すクリエイター。作り出すのはいつも怪物とか獣とかの恐ろしい生き物たちで、フリオは「人間を作るのが一番難しい、なぜなら見慣れているから誤魔かせない」という。

海外の映画評をつなぎ合わせると「人間の最も暗い部分のタブーを恐れずに描く、巧妙に仕組まれたラブストーリーで、人間の心の闇を抉り出す、私たちの中にいるかもしれない”怪物”についてのドラマ」と言えるだろう。

監督は映画演出に関して「私は単純に物語が空白を必要としているかどうかを考えます。情報を省略することによって物語が成長することが多い。その空白を完成させるのは観客です」と述べている。

物語の後半が観客に委ねられた『マンティコア 怪物』を、映画館で体験してみてはどうだろう。

 

カルロス・ベルムト 監督

 

カルロス・ベルムト
CARLOS VERMUT
監督・脚本
1980年3月6日生まれ。マドリードの第10 美術学校でイラストレーションを学び、エル・ムンド紙でイラストレーターの第一歩を踏み出す。2006年、初の単独著作「El Banyàn rojo」を出版。同書はバルセロナ国際コミック・コンベンションで4 部門にノミネートされる。続いて短編集「Psicosoda」、「Plutón BRB Nero」を出版し、「la venganza de Maripili」はアレックス・デ・ラ・イグレシアが制作した同名のテレビシリーズの原作となる。

2008年、TVE で放送されたテレビシリーズ「Felly Famm」を製作。翌年、初の短編映画「Maquetas」が第7 回ノトド映画祭でグランプリを受賞。2011年、初の長編映画「Diamond Flash」を自身の会社サイコソーダ・フィルムで製作。映画視聴サイトでリリースされるや話題を呼び、映画雑誌「Caiman」が選ぶ2012年のスペイン映画第1 位に選ばれる。

2012 年、コメディアン・グループ、ヴェンガ・モンハス出演のブラックユーモアあふれる短編映画「Don Pepe Popi」の監督・脚本を務める。また、大ファンだと公言している漫画「ドラゴンボール」にオマージュを捧げ、再解釈したコミック「Cosmic Dragon」を出版。

2014年、劇場デビュー作『マジカル・ガール』(日本公開は2016年)が第62 回サン・セバスチャン国際映画祭グランプリ& 監督賞をダブル受賞。第29回ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)やスペイン批評家協会賞など国内主要映画賞の主演女優賞を総なめにする。

2018年、『シークレット・ヴォイス』が第43回トロント国際映画祭、第66回サン・セバスチャン国際映画祭などで上映され、第32 回ゴヤ賞では7部門にノミネートされる。また、第28回ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭で監督賞を受賞した「The Grandmother」(パコ・プラザ監督/21)では脚本を手掛け、第68回バリャドリッド国際映画祭で作品賞を受賞した「The Permanent Picture」(ラウラ・フェレス監督/23)では共同脚本を担当している。

 

ストーリー

空想のモンスターを生み出すゲームデザイナーのフリアン。VR 空間で獣のデザインを立体的に形作っていく。

ある日、自宅で作業をしていると助けを求める子どもの声が。アパートの向かいの部屋から炎があがっている。玄関のドアが開かずパニックになっているクリスチャン。フリアンは必死にドアを蹴破り救い出す。

夜中、息が苦しくなり目を覚ますフリアン。病院にたどり着くと気を失ってしまう。しかし、心電図も検査の数値も正常だ。強いストレスや恐怖に対する脳の自己防衛によるパニック発作だと診断される。

フリアンは同僚サンドラの誕生日パーティーで美術史を学ぶディアナに出会う。聡明でどこかミステリアスなディアナ。彼女の父は2年前に脳卒中を患い、いまはふたり暮らしで、ほぼひとりで介護をしているという。映画やゲーム、アートについて語りあい、次第に惹かれ合っていくふたり。

しかし、フリアンはある秘密を抱えていた。それは火事から子どもを救ったあの日から、まるで肺に吸い込んでしまった煙のように彼の中で静かに渦巻いている“ある感情”。やがてそれが思いもよらぬマンティコア [怪物] を作り出してしまう……。

 

『マンティコア 怪物』予告編

 

公式サイト

 

2024年4月19日(金) シネマート新宿、渋谷シネクイント、アップリンク京都、ほか全国順次ロードショー

 

Cast
フリアン:ナチョ・サンチェス
ディアナ:ゾーイ・ステイン
クリスチャン:アルバロ・サンス・ロドリゲス
サンドラ:アイツィべル・ガルメンディア

Staff
監督・脚本:カルロス・ベルムト
プロデューサー:ペドロ・エルナンデス・サントス アレックス・ラフエンテ ララ・テヘーラ
撮影監督:アラナ・メヒーア・ゴンサレス
編集:エンマ・トゥセイ
セット・デザイナー:ベロニカ・ディエス
美術:ライア・アテカ
衣装:ビニェト・エスコバル

2022年/スペイン・エストニア/カラー/DCP/5.1ch/ビスタ/116分

原題: Mantícora /英題:Manticore /PG12
配給:ビターズ・エンド 

©Aquí y Allí Films, Bteam Prods, Magnética Cine, 34T Cinema y P unto Nemo AIE

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