『誰が為に花は咲く』凶悪殺人犯の娘の⼈⽣を描く異色の設定、観客にボールは投げられた

『誰が為に花は咲く』凶悪殺人犯の娘の⼈⽣を描く異色の設定、観客にボールは投げられた

2024-01-23 15:11:00

『誰が為に花が咲く』は、事件の被害者に寄り添う設定の映画が多い中、主人公の父親が殺人犯という設定だ。

藤原知之監督は観客に問いかける。
「自分の知らない親の一面。もしそれが絶対的な“悪”だった場合、子供は親を拒絶するのか、それでも愛し求めるのか。家族であろうと、お互いの全てを理解できる訳ではない。そこにある感情の奥底にあるものとは…。本作では、逃亡中の凶悪殺人犯を父に持つ椿(つばき)の⼈⽣を描くことで、見る人にこのボールを投げたいと思います」

本作は、CMやTVドラマ、映画などの映像業界で活躍している監督や俳優たちによる自主制作映画だ。画作りやドラマの構成、演技の安定感は抜群で、22年に亡くなった渡辺裕之氏(椿を支える祖父)の遺作のひとつにあたる。

殺人犯の父(マツモトクラブ)の娘椿を演じた湯川ひなは公開に向けてこう語っている。

「私が演じた椿の人生は、2時間では語りきれない程の壮絶なものでした。自分が演じることで、劇的で大きな出来事の感情にだけ目が向けられることを恐れました。椿と自分の間にある距離を、部外者的な目線で埋めてしまわないためにも、むしろ見逃してしまうような瞬間にこそ表れる椿の為人を、監督と話し合いながら大切に演じました。けれども私は結局、椿のような立場で人生を送る人たちにとって部外者であることに変わりはなく、その葛藤は今でも続いています。皆さんにご覧いただくことは少し怖いです…。でもやっぱり嬉しい気持ちが強いです。何かを受け取ってもらえたら嬉しいです!」

藤原監督と主役を演じた湯川ひなのボールは、観客にどう届くだろうか。

 

藤原知之 監督コメント


子供にとって親は、人生で初めて近くにいる大人です。この人が全て正しいのだと思って幼少期は育ちます。しかしそんな絶対的に正義だと思っていた親が許されない悪に手を染めたら、子供はどう思うのか。

モラルと感情、善と偽善など色々なことを考えながらこの映画の脚本を書きました。

映画を作るということは自分の生き方と正面から対峙して目を逸らさず見つめ直す作業でもあるので毎回苦しいのです。特に今作は強く感じました。自分にこの題材を扱う資格があるのか。結局答えは出ず、自問自答しながら撮影する日々でした。

しかし撮影をしながら主人公・椿が不器用にいろんなことを模索しながら生きる様を見て、自分の資格云々は置いといて、椿を多くの人に見てもらいたい、この作品を多くの人に見て貰いたいと強く思いました。この作品に触れることで何かを感じてくれる人がいるのなら届けたいと思いました。見てくれた人にどういう感情が芽生え、どういう疑問や不条理を感じるのか見てみたいと思いました。この作品は上映がゴールではなく、見てくれた人の中でも動き続ける、そんな作品になればと思っています。

ぜひご覧ください。

藤原知之
監督・脚本
映像制作会社でバラエティー番組・CM・Music Video等のディレクターを経験した後に、映画・TVドラマの助監督としてキャリアを積む。連続ドラマ「家族⼋景Nanase, Telepathy Girl's Ballad」(MBS,TBS)で初監督。2020年よりフリーランスで活動。
短編映画「幸せの⻘い⿃居」がSHORT SHORTS FILM FESTIVAL&ASIA2013に⼊選、ベストアクターアワード(最優秀俳優賞)を受賞。短編映画「U・F・O」で第12回⼭形国際ムービーフェスティバルグランプリ受賞。短編映画「無題」がMIRRORLIAR FILMS PROJECTに選出され、優秀作品賞を受賞。

 

ストーリー

高校3年生の椿(湯川ひな)は、将来について考えなければいけない時期をむかえていた。しかし椿は他の人とは違う環境にいた。椿の父・秀明(マツモトクラブ)は4年前に小学生を殺害する事件を起こして消息を絶ち、もう死んだと思われていた。

ある日、秀明に似た男が公園で子供に声をかけたと目撃情報が入る。しかし男は別人だった。警察に思いを吐露する椿。「私、目撃情報を聞いて『お父さんが生きていて嬉しい』と思っちゃったの。また小さい子が襲われかけたのに、私の心もお父さんみたいに壊れているのかもしれない」

2年後、椿の弟が行方不明になる事件が起こる。SNSに「卑劣な殺人犯の息子を殺害した」と犯行声明が出される。だが犯行声明はイタズラで、弟は無事だった。しかし今度は、弟を心配して出てきたであろう秀明が目撃されたという情報が入り……。


『誰が為に花は咲く』予告編

 

公式サイト

 

2024年1月26日(金)  アップリンク吉祥寺にて公開

 

Cast
湯川ひな
髙橋里恩、マツモトクラブ、小島聖、奥村心結、
齋賀正和、梅田誠弘 / 渡辺裕之

松本優翔、阿部翔平、木村龍太、小松勇司、髙野旬二、瓜生真之助、上村侑、内海誠子、空花、永瀬未留、森脇なな、青木崚、東虎之丞、長岩健人、後藤龍馬、高山璃子ほか

Staff
監督・脚本・編集:藤原知之
プロデューサー・キャスティング:𠮷川春菜 撮影:伊藤麻樹
照明:石川裕士 録音・サウンドデザイン:桐山裕行 スタイリスト:三浦玄
ヘアメイク:小浜田吾央 美術:TENTEN 制作:梶本達希
音楽:Uta 助監督:小野裕昌・大西広晃 スチール:迫村慎 ほか

英題:For whom the flowers bloom / 上映時間:119分 / 製作:2021年(日本)

製作・宣伝・配給:Memento Film Club
製作協力:Kinema Century Investment

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