『NOCEBO /ノセボ』単なるホラー映画ではない。ファストファッションを糾弾する社会的な映画

『NOCEBO /ノセボ』単なるホラー映画ではない。ファストファッションを糾弾する社会的な映画

2023-12-26 10:23:00

『ノセボ』は恐怖を煽るだけのホラー映画ではなく、そのホラー・シチュエーションの原因が社会派ともいえる映画だ。

アイルランド・ダブリン出身のロルガン・フィネガン監督の前作『ビバリウム』では、均一で普通の生活を強いるサバービアの恐怖が描かれ、話題になった。

本作は、エヴァ・グリーン演じるファッション・デザイナー、クリスティーンの家にフィリピンからメイドがやってきた。謎の病気にかかった彼女に対してメイドの民間療法がはじまる。

「ノセボ」とは、「プラセボ」が偽薬を信じて体が改善されるのとは逆に、偽薬の副作用を信じて、実際に副作用効果が発症することを指す。

メイド、ダイアナ(チャイ・フォナシエ)の故国フィリピン。低賃金労働で作られるフィリピンの衣料工場にファッション・デザイナー(エヴァ・グリーン)が訪れそこでの言動が数年後に起こる彼女に降りかかる恐怖の原因だったという、”アンチファストファッション・ホラー”ともいうべき新しいジャンルの映画だ。

フィネガン監督はこう語っている。「私たちは、フィリピンを訪れ、シャーマンや呪術師、セブ島のバジャオ族や長たちと会い、そして、縫製工場も訪問しました。そこで、植民地主義と新植民地主義それらの搾取との関係を目の当たりにしました。 つまり、搾取と植民地主義、そしてそれが資本主義や新植民地主義的な搾取へとつながっていく。労働搾取工場は、遠くから人々を搾取する。現地に滞在して初めて、すべての要素がどのようにつながっていくのかがわかったんだ」

また、アイルランドからフィリピンにシナリオ・ハンティングに行った理由はこう語っている。「プラセボとノセボがどのようにシャーマニズムに関連しているのかを考え始めました。それは、信仰でした。キリスト教以前のアイルランドは異教徒で、シャーマンがいて、社会には賢女と呼ばれるパワフルな女性たちがいて、自然との結びつきが強く、人々を治療することができた。本質的には、この習慣が今でも一般的に行われている世界のどこにあるのかと考え始めました」

そして、エヴァ・グリーンは、これから『ノセボ』を観る観客に向けてこう語っている。

「この映画は単なるホラー映画ではない。ファストファッションを糾弾する社会的な映画であり、それが地球上の生命にとっていかに破壊的であるか、そして私たち人間は、どんな代償を払っても、より多くのものを手に入れることに執着する貪欲な生き物になってしまったということ。だから、この映画には深いメッセージが込められているのです」

ロルカン・フィネガン 監督:インタビュー

エヴァ・グリーン:インタビュー

https://www.youtube.com/watch?v=iedgitFtktw&t=44s

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ロルカン・フィネガン 監督


ロルカン・フィネガン

監督
1975年5月25日、アイルランド・ダブリン出身。第69回エミー賞で脚本賞にも輝いた超人気SFテレビシリーズ「ブラック・ミラー」(11~)の脚本家・クリエイターとして広く知られるチャーリー・ブルッカ―に認められ、彼の製作会社Zeppotronでモーションデザイナーや編集者として働き下積み時代を過ごした。その後自身の制作スタジオLovely Productionを設立し、MTVやソニーを相手にコマーシャルや短編映画などの制作業務を手掛けるようになる。短編「Foxes(原題)」(11)はSXSWでプレミア上映されたほか、トライベッカ映画祭など世界中の映画祭で高く評価され、アイルランド映画テレビ賞(IFTA)では最優秀短編映画賞を受賞。初長編監督作「Without Name(原題)」(16)はトロント国際映画祭を皮切りにシッチェス・カタロニア国際映画祭、ロンドン映画祭と続々上映され大きな話題を呼んだ。前作『ビバリウム』(19)はカンヌ国際映画祭でギャン・ファンデーション賞を受賞したほか、IFTAとシッチェス・カタロニア国際映画祭でもノミネートされるなど話題沸騰、全世界のジャンル映画ファンの賞賛と信頼を勝ち取った。

 

ストーリー

幸せの絶頂にいる家族を襲う怪異
さらに彼らの前に現れる乳母の正体とは――

ファッションデザイナーとして名を馳せるクリスティーン(エヴァ・グリーン)は、夫のフェリックス(マーク・ストロング)と幼い娘のボブス(ビリー・ガズドン)とダブリン郊外で悠々自適に暮らしていた。ある日、仕事中にクリスティーンはダニに寄生された犬の幻影に襲われる。8ヶ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣、記憶喪失や幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされていた。そんな彼女の前に、ダイアナと名乗るフィリピン人の乳母が現れる。彼女は雇った覚えのない乳母を最初は怪しむが、ダイアナは伝統的な民間療法を用いてクリスティーンの治療にあたり彼女の信頼を得ていく。やがてクリスティーンは民間療法にのめり込んでゆくが、それは一家を襲う想像を絶する悪夢の始まりだった――

◆ノセボ効果(反偽薬効果)◆

偽薬(プラセボ)の投与によって、望まない有害な作用が現れること。
偽薬効果とは逆に、薬物や医師に対する不安感などの心理作用によるものとされる。

 



『NOCEBO/ノセボ』予告編


公式サイト

 

2023年12月29日(金) 新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

監督:ロルカン・フィネガン
脚本:ギャレット・シェインリー
音楽:ホセ・ブエンカミーノ
編集:トニー・クランストン
撮影:ラデク・ラドチェック、ジャクブ・キヨフスキ
衣装デザイン:レオニー・プレンダーガスト
プロダクションデザイン:ルーシー・ヴァン・ロンクハウゼン
出演:エヴァ・グリーン、マーク・ストロング、チャイ・フォナシエ、ビリー・ガズドン

2022年|アイルランド・イギリス・フィリピン・アメリカ|カラー
ヨーロピアンビスタ|5.1ch|97分|英語
日本語字幕:平井かおり|原題:NOCEBO|レイティング:G
配給:クロックワークス

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