『サタデー・フィクション』コン・リー演じる女スパイがオダギリジョー演じる日本海軍少佐から暗号を聞き出そうとする本格スパイ映画

『サタデー・フィクション』コン・リー演じる女スパイがオダギリジョー演じる日本海軍少佐から暗号を聞き出そうとする本格スパイ映画

2023-10-31 17:50:00

ロウ・イエ監督の第11作目に当たる本作『サタデー・フィクション』は、2019年のベネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品作である。上海出身のロウ・イエ監督は国際的にデビューした『ふたりの人魚』(2001)で上海の蘇州川の水中ダンサーに恋する男を描き、『パープル・バタフライ』(2003)では、チャン・ツィイーと仲村トオルを起用し、1939年日本軍占領下の上海を描いた。

本作『サタデー・フィクション』は、再び上海を舞台にした映画。冒頭に「1937年11月に上海は陥落したが日本軍の侵入を免れた英仏租界は“孤島”と呼ばれていた」という説明が表示され、太平洋戦争開戦7日前の1941年12月1日から映画は始まる。監督が一度は挑戦したかったという映画の原点でもあるモノクロ映像を用い、映画音楽を一切排したストイックなつくりだ。「蘭心大劇場」「キャセイ・ホテル」など当時からある選りすぐりの建物をロケ地として、スタイリッシュな本格スパイ映画が完成した。

原作は、ロウ・イエ監督とプロデューサーのマー・インリーの友人でもあるホン・インの小説『上海の死』で描かれる女スパイ(コン・リー)の物語を脚色し、その脚色した物語の中での演劇公演の物語の主役に、横光利一の『上海』中国共産党の女性闘士・芳秋蘭(コン・リー)という設定を採用している。魔都と呼ばれていた上海は当時、欧米中日各国の諜報部員が暗躍する都市だった。物語は、一見荒唐無稽のスパイ映画のようではあるが、原作者のホン・インは物語の設定とその歴史的真実に対して次のように語っている。

「真珠湾攻撃において、日本海軍の奇襲が成功するまで、連合国側が情報を得るチャンスは少なくなかった。情報の解読が困難であったとしても、ほぼ正しく解釈された情報が少なくとも4つあったが、これらの情報はさまざまな理由で届けられなかった…。小説の中で、ユー・ジンが持っていた情報は、すでに解読されているのに届いていなかったいくつかの情報のうちの1つである」

諜報部員が暗躍する物語にふさわしく国際色豊かな豪華出演者がキャスティングされた。フランスの諜報機関にスパイとして育てられた孤児院出身のユー・ジンを演じるのは、『紅いコーリャン』でデビューし、『さらば、わが愛/覇王別姫』で女優としての評価を確立したコン・リー。日本海軍少佐の古谷三郎には、自ら監督した『ある船頭の話』が本作と同じ年のベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門に出品されたオダギリジョー。その護衛の梶原を、映画・ドラマと活躍が著しい中島歩。ユー・ジンを養子として引き取り、スパイに育て上げるフランス諜報部員フレデリック・ヒューバートを、『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』『それでも私は生きていく』のパスカル・グレゴリーが演じる。さらに、キャセイ・ホテルの支配人ソール・シュパイヤーに、『ストレンジャー・シングス』『 ゲーム・オブ・スローンズ』のトム・ヴラシア。蘭心大劇場で演じられる演目『サタデー・フィクション』の演出家タン・ナーに、台湾の人気俳優マーク・チャオ。ユー・ジンのファンを装い近づく謎の女性バイ・ユンシャンには、一人芝居など舞台女優としても活躍するホァン・シャンリーが起用された。

本作の中国語タイトルは『蘭心大劇院』、日本及び海外タイトルは『サタデー・フィクション』。その意味は、当時の娯楽雑誌に掲載されていた上海娯楽小説流派の一つ「サタデー派の小説」から来ている。

 

ロウ・イエ 監督コメント


©️YINGFILMS

 私が子供だった頃、両親が裏方として働いていた上海の蘭心大劇院に、よくついていった。そこで、数多くの面白い経験をした。

衣装をつけた俳優と知り合い、また舞台で繰り広げられる彼らが演じる様々な役柄や、恋愛や憎しみ合い、そして生き別れや、死別を見た。そしてステージを降りてきた彼らと、楽屋でおしゃべりをしたりした。その後、俳優たちの後を追うと、劇場を出た後、彼らは何の変哲もないごく普通の暮らしに戻っていく……。

虚と実の世界を行ったり来たりする奇妙な体験だった。それから何年も経った後、ホン・イエが書いた「上海の死」(上海の“孤島期”を描いた小説)を読んだ時、同じような感覚を味わった。

1941年12月の最初の週、世界の歴史が変わることになるんだが、もちろん当時の人は、そんなことを知る由もない。訪れる運命を知らないまま、彼らはいつものごとく日々の暮らしを過ごしており、それぞれの日課をこなし、ゴールを目指している。

上海の“孤島期”、劇場の内外で、また舞台の上や外で、彼らの運命が変わる“土曜日”が、ゆっくりと近づいてくる…。

『サタデー・フィクション』は、複雑な世界危機の時に様々な人の運命を描いた映画だ。また中国文学史上で最も重要な位置を占める“礼拜六派(サタデー派)”へのオマージュでもある。

 

ロウ・イエ
婁燁
監督・脚本
1965年生まれ。中国の脚本家、監督、プロデューサー。
1994年、『デッド・エンド/最後の恋人』で監督デビュー。2000年、『ふたりの人魚』は当局の許可なしにロッテルダム国際映画祭に出品したため中国では上映禁止となった。2003年、チャン・ツィイーを主演に1930年代の中国と日本の間の対立を描いた『パープル・バタフライ』は、カンヌ国際映画祭の公式コンペティション部門に選出。2006年、天安門事件にまつわる出来事を扱った『天安門、恋人たち』はカンヌ国際映画祭で上映された結果、再び5年間の映画制作・上映禁止処分となる。禁止処分の最中、検閲を避けるためフランスと香港合作で作られた『スプリング・フィーバー』は2009年カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。その2年後、2011年タハール・ラヒム主演で『パリ、ただよう花』をフランスで撮影。2012年、カンヌ国際映画祭“ある視点部門”オープニング作品に選ばれた『二重生活』は、映画制作禁止後に、ロウ・イエが公式に復活を果たした作品。2013年、『ブラインド・マッサージ』はベルリン国際映画祭にコンペティション部門に選出され、台湾のアカデミー賞金馬奨で作品賞を含む6冠を受賞。2018年、広州・香港・台北を舞台にしたクライムサスペンス『シャドウプレイ』は金馬奨で4部門ノミネート。本作『サタデー・フィクション』はコン・リー主演、オダギリジョー共演による、1941年の太平洋戦争開戦前夜の上海租界を舞台としたスパイ映画で、第 76 回ベネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品した。最新作は、『少年の君』のイー・ヤンチェンシー(易烊千璽)と『象は静かに座っている』のチャン・ユー(章宇)が出演する『三文字(原題:三個字)」(公開未定)と、日本及び欧米でも有名なバンド「重塑雕像的權利(Re-TROS)」のドキュメンタリー(公開未定)。

 

ストーリー

「マジックミラー計画を開始せよ」

1941年、日本軍の占領を免れた上海の英仏租界は、当時「孤島」と称されていた。魔都と呼ばれるこの上海では、日中欧の諜報部員が暗躍し、機密情報の行き交う緊迫したスパイ合戦が繰り広げられていた。

日本が真珠湾攻撃をする7日前の12月1日、上海に、人気女優のユー・ジン(コン・リー)が現れる。新作の舞台『サタデー・フィクション』で主役を演じるためだ。その舞台の演出家タン・ナー(マーク・チャオ)はかつてのユー・ジンの恋人だった。ユー・ジンは幼い頃、フランスの諜報部員フレデリック・ヒューバート(パスカル・グレゴリー)に孤児院から救われ、諜報部員として訓練を受けた過去があり、銃器の扱いに長けた「女スパイ」という裏の顔があった。

12月3日、日本から海軍少佐の古谷三郎(オダギリジョー)が海軍特務機関に属する梶原(中島歩)と共に、暗号更新のため上海にやってくる。ヒューバートはユー・ジンに「古谷の日本で亡くなった妻は君にそっくりだ」と告げる。それは、古谷から太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るためにフランス諜報部員が仕掛けた”マジックミラー計画”の始まりだった……。


『サタデー・フィクション』予告編


公式サイト 

 

2023年11月3日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

Cast

コン・リー(鞏俐):ユー・ジン(于堇)役
マーク・チャオ(趙又廷):タン・ナー(谭呐)役 
中島歩:梶原役
パスカル・グレゴリー:フレデリック・ヒューバート役
トム・ヴラシア:ソール・シュパイヤー役
ホァン・シャンリー(黄湘麗):バイ・ユンシャン(白雲裳)役
ワン・チュアンジュン/エリック・ワン(王傳君):モー・ジーイン(莫之因)役 
チャン・ソンウェン(張頌文):ニイ・ザーレン(倪則仁)役
オダギリジョー(小田切譲):古谷三郎役

Staff
監督: ロウ・イエ(婁燁)
プロデューサー: マー・インリー(馬英力)、チャン・ジーホン(常繼紅)、ロウ・イエ(婁燁)、ドン・ペイウェン(董培雯)、ウー・イー(吳毅)
共同プロデューサー:チャン・ジン(張進)、ホァン・シン(黃欣)、リー・シンユェ(李新月)
エグゼクティブプロデューサー: マー・インリー(馬英力)
ライン・プロデューサ: シュー・ラー(徐樂)
アソシエイトプロデューサー:リー・シンユー(李星宇)
脚本:マー・インリー(馬英力)
撮影:ツォン・ジエン(曾劍) 
サウンドディレクター:フー・カン(富康)
編集:ロウ・イエ(婁燁)、フォンシャンユーリン(封山育林) 
衣装:マイ・リンリン(迈琳琳)
キャスティングディレクター:チャン・ルン(張蓉)
アートディレクター:ジョン・チョン(鐘誠) 
VFXディレクター:ワン・レイ(王磊)
アクションディレクター:ヤン・ダイー(楊德毅) 

2019年/中国/中国語・英語・フランス語・日本語/126分/モノクロ/5.1ch/1:1.85/日本語字幕:樋口裕子

原題:蘭心大劇院/英題:SATURDAY FICTION
配給:アップリンク 宣伝:樂舎

©YINGFILMS

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