第82回ヴェネツィア国際映画祭が開幕──映画は“歴史を記録するもの”

イタリア・ヴェネツィアで第82回ヴェネツィア国際映画祭が8月27日に幕を開けた。会期は9月6日までの11日間。世界最古の映画祭として、ここでの初上映作品は過去4年で90本以上がアカデミー賞候補に選ばれ、20近い受賞につながっており、今年も映画賞シーズンの号砲として位置づけられている。

オープニングを飾ったのはパオロ・ソレンティーノ監督『La Grazia』。レッドカーペットにはジュリア・ロバーツ、エマ・ストーン、ジョージ・クルーニーら世界的スターが集結し、華やかさに包まれた。一方で、イスラエルとガザを巡る戦争の影も差し、映画人団体「Venice4Palestine」が映画祭に対しパレスチナ支持とイスラエル行為への非難を求める声明を発表。ケン・ローチやマッテオ・ガローネら著名監督、俳優チャールズ・ダンスやアルバ・ロルヴァケルら1,500人以上が署名し、政治的緊張も高まっている。

こうした状況に対し、映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラは「誰かをボイコットするのではなく、現代の状況についての発言を歓迎する」と語り、議論の場として映画祭を開く姿勢を示した。また審査委員長を務めるアレクサンダー・ペイン監督も「映画は世界を変えるのではなく、その時代を記録するもの」と発言し、映画祭の理念を改めて強調した。

特に注目されるのは、カウテール・ベン・ハニア監督の『The Voice of Hind Rajab』。イスラエル軍の攻撃で命を落とした5歳の少女の実話を基にした作品で、バルベーラは「最も大きな印象を残す一本になる」と評している。ほかにも、キャスリン・ビグロー監督『A House of Dynamite』、オリヴィエ・アサイヤス監督『The Wizard of the Kremlin』、ギレルモ・デル・トロ監督『Frankenstein』、ノア・バームバック監督『Jay Kelly』など話題作が目白押し。アジアからはパク・チャヌク監督『No Other Choice』、ツァイ・シャンジュン監督『The Sun Rises on Us All』、スー・チー監督『Girl』がメインコンペに並んだ。

86歳の巨匠フランシス・フォード・コッポラも姿を見せ、名誉金獅子賞をヴェルナー・ヘルツォーク監督に授与。映画の華やかさと時代を映す政治性が同居する、まさに「現実の映画の復活」を体現する開幕となった。

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参照:Reuters

 

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