2005年の『パラダイス・ナウ』で、自爆攻撃へ向かう若者たちを描き、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたハニ・アブ=アサド監督による本作は、分離壁で囲まれたパレスチナの今を生き抜く若者たちの日々を、切実に、サスペンスフルに描く。カンヌ国際映画祭をはじめ、多数の映画祭で絶賛され、2度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートとなった。スタッフは全てパレスチナ人、撮影も全てパレスチナで行われ、100%パレスチナの資本によって製作された。

 監督いわく、本作の舞台は分離壁によって分断されてしまったパレスチナの町であり、壁の両側ともパレスチナ人居住地区である。イスラエルが現在も建設を続ける分離壁は、イスラエルとパレスチナの境界に沿って建てられているわけではなく、パレスチナ人の領土に侵入し、財産の破壊と土地の接収、および移動の自由の制限を伴いながら建てられており、国際人道法に違反するものである。