『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』35年ぶり!シルベスター・スタローン自らの手により再構築された『ロッキー4』のディレクターズ・カット版
ロッキーシリーズの頂点を極めた『ロッキー4 /炎の友情』が、シルベスター・スタローン自らの手により再構築されたディレクターズ・カット版として、80年代ブームの再来を勢いづけるかのように今、スクリーンに帰ってくる。
4Kデジタルリマスターの映像、5.1chサラウンドの音声、さらにシネスコ(2.39 : 1)での上映。当時の時代の熱気が私たちの日常に浸食してくるような、パンチの効いた映画体験をもたらしてくれるはずだ。
『ロッキー』――これは、シルベスター・スタローンの実人生に限りなく近い映画である。
というのも、左顔面麻痺や言語障害を負っていた子供時代はいじめに遭い、両親の離婚から不良になり、俳優に憧れては何十回とオーディションに落ち、さらには脚本家を志し、自作自演を目指して書いた『ロッキー』の脚本が認められ映画化の話になるも、キャスティングから外されて脚本ごと引き揚げる……など、彼にはその不撓不屈の精神を示すエピソードがいくつもある。
紆余曲折を経てようやく映画化に辿り着いた『ロッキー』では脚本、主演を担い(監督はジョン・G・アヴィルドセン)、この成功を皮切りに、続編では監督もスタローンが担う。こうして監督、脚本、主演すべてを手がけた『ロッキー2』(1979)、『ロッキー3』(1982)、『ロッキー4』(1985) が実現する。
『ロッキー4』で最高興行収入を記録し、大成功を収めたロッキーシリーズ。その後も、『ロッキー5 /最後のドラマ』(1990/監督ジョン・G・アヴィルドセン)、『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006/監督スタローン)ほか、ロッキーの友人アポロの息子を主人公にした『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)も誕生し、そこではアポロの息子をコーチングするロッキーの姿が描かれた。ロッキーの宿敵であるドラゴの息子とクリードが戦う続編『クリード 炎の宿敵』(2019)では、ロッキーとドラゴが再会する姿も描かれる。こうしてスタローンは、愚直にこの物語の行末と向き合い、共に生き、こだわり続けた。
最も興味深いのは、35年の歳月を経てあえて、頂点を極めた『ロッキー4』を再編集し蘇らせたということ。そこに、スタローン自身のその後の人生の歩み、あるいは後悔から生まれた希望のようなものが映し出されているに違いないからだ。
もはや作家性を超えて、本作は彼自身である。そんなサンプルは滅多にないように思える。でも、ホンモノというのは、本当はいつもそうなのかもしれない。
ストーリー
アポロ・クリードとの2度の戦いを経て友情を育んだチャンピオン、ロッキー・バルボア。
二人の前にソ連から”殺人マシーン”イワン・ドラゴが現れる。
ドラゴとの激戦によってアポロを失ったロッキーは、対ドラゴ戦のため、ソ連へ乗り込むが……。
シルベスター・スタローン 監督インタビュー
過去の自分のミスを修正したかったんだ。例えば80年代っぽいトレンディな部分を直してドラマの中身に重点を置きたかった。派手な部分を削除し、登場人物の心に注目してね。良いこともあったけど、悩ましい時間だったし、気分がたかぶることもあれば凹むこともあった。
何故このシーンを使っていない? 俺は何を考えていたんだ?って。今思えば使うべきシーンは明確だ。だから、当時の自分の人生観に疑問をもったさ(笑)
前の『ロッキー4』を作った頃の俺は、今よりかなり薄っぺらだった。ロッキーはみんなが注目するほど目立つタイプの人間じゃない。知的にも肉体的にも普通だ。でも彼の描写の仕方にすごく親しみやすい何かがある。言うことは独特でシンプル。ボクシングに関係のない人にすら、すごく意味がある。だから時々腹が立つんだ。ちょっと言いすぎかもしれないけど……時々イライラするんだ(笑)
『ロッキー』をスポーツ映画と呼ぶことがあるが、実は全然「スポーツ映画」ではないんだ。これは人間ドラマで、たまたま主人公がボクサーだっただけ。特にロッキーは試合が主題の映画ではない。試合は二の次で、戦う理由こそがメインテーマだ。だからロッキーは人間ドラマなんだ。今回はそこを明確にしたかった。ただの試合映画じゃなく、登場人物に起こるドラマを味わえる映画に。
戦うまでの道のりにはいろんな感情がある。そうだな、人間は変わらない、常に変わらないものだ。状態、政治、ファッション、天候などの環境が変わっても、基本的な命題の生きる意味は変わらない。なぜ人生は辛いのか? どうやって乗り越える? 俺は弱い。普通、生まれた時はみんな弱者だよね。
例えばあなたは秘書かも? 本屋で働いているかも? アスリートかも?
例えば無視されたと感じたり、そういう恐怖心にどう対処したら良いのか。ロッキーは恐怖についての物語で、彼はKOもされる。ロッキーですら恐いの?ってみんな言うけど、そう、彼も恐怖を感じる。『ロッキー3』のロッキーのようにね。ロッキーシリーズは恐怖を描いているんだ。つまり総括すると、ロッキーはどのシリーズにも特別な感情が描かれていて、その感情に観客は共感するんだ。でもそれは俺が意図してできたものではない(笑)計画的にこうなるとわかってたって? そんなことじゃないんだ。時代の組み合わせもあるだろう。
1976年はアメリカにとって変化の年だった。オリンピックと愛国心に国が湧いていた暗い時代から抜け出して楽観的に世の中の風潮が変わり、ロッキーはちょうどその波に乗ったんだ。そして今も乗り続けてる。人生の教訓を持ち帰ってなんて思ってないさ。もし何かを感じて、言葉や身振りとか何か良いと思えるものを得てくれたらメッセージは二の次さ。純粋に現実逃避でいいんだ。リラックスしてワイワイと見て欲しい。
この『ロッキー』にはCGも無いし、特撮だって無い。俺がこの映画が好きな理由さ。映画は一層大きくなった。オリジナルは1:85だったけど。今回はシネスコだ。音楽も新たな手法で編集された。4チャンネルが100チャンネルになった。俺は耳がおかしくなったのか? と信じられないくらいだよ。
セリフがこんなにクリアに聞こえたのは初めてさ。素晴らしいことだよ。まるで古い車を、例えば自分の車を修理して色を塗り直した感じさ。古い車でずっと大切だった車がイマドキの車になったみたいさ。
懐かしかったのは試合だ。あんなことができていたなんて。肉体的にかなり辛かった。それも3日間でやったんだ。まさに奇跡さ。だって試合の振り付け自体は6ヶ月以上かかったからね。すごく懐かしかったよ。今だったら絶対無理さ、不可能だよ。あの頃は機会に恵まれて。俺も若かった。勢いも野心もあった。撮影されていてよかったよ。
タイムマシンに乗るようなこのチャンスを得たことに感謝している。オリジナルが作られてから35年の間に、僕はたくさんのことを経験し、生きてきた。僕は変わったし、映画も変わった。この作品は『ロッキー』に関わった全ての人に敬意を示した作品なんだ。
メイキング画像
『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』予告編
公式サイト
2022年8月12日(金)から1週間先行で 立川シネマシティ《極上音響》上映
2022年8月19日(金) アップリンク吉祥寺、アップリンク京都、ほか全国ロードショー
監督・脚本・主演:シルべスター・スタローン
出演:ドルフ・ラングレン、タリア・シャイア、カール・ウェザース、ブリジット・ニールセン、バート・ヤング、ジェームズ・ブラウン、トニー・バートン、マイケル・パタキ、ロバート・ドーンニック、ストゥ・ネイハン
撮影:ビル・バトラー
編集:ジョン・W・ウィーラー、ドン・ジマーマン
音楽:ヴィンス・ディコーラ
主題歌:サバイバー
テーマ曲:ビル・コンティ
2021/アメリカ/94分/5.1ch/ シネスコ 2.35:1
原題:「ROCKY IV: ROCKY VS. DRAGO」
配給:カルチャヴィル/ガイエ
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