『ぜんぶ、ボクのせい』孤立化された人たちを「社会のせい」と言わない映画
『ぜんぶ、ボクのせい』は、秋葉原無差別殺人事件で母親が殺され、残された女子高生を描いた『Noise ノイズ』で話題となった松本裕作監督の最新作。
松本監督は「僕自身、子供から大人に成長していくにつれ、今まで見えていたことが見えなくなってしまったのでは?という危機感を感じていました。だからこそ、もう一回、子供時代を疑似体験しながら映画を作りたかった」と語る。
母親がいるにも関わらず児童養護施設に預けられた13歳の中学生優太(白鳥春斗)、家庭は裕福だが援助交際を繰り返す女子高生、詩織(川島鈴遥)、そして故障した軽トラで暮らす坂本(オダギリジョー)とこの3人が地方の海辺の町で邂逅する。
それぞれが、心の中に家族問題と孤独を抱え、社会からの疎外感を感じている。ある事件でこの3人の共振し合う関係は崩れる。本作のタイトルは孤立化された人たちを「社会のせい」といわずに「ぜんぶ、ボクのせい」としたところが観客の心に刺さる。
エンディング曲は大滝詠一の『夢で逢えたら』松本監督は、この曲に起用について次のように語る。
「曲はもちろん知っていたのですが、大滝さんご自身が歌っている曲を初めて聴いて、この映画にぴったりだと思いました。この曲は恋愛ソングというイメージを勝手に持っていたのですが、本作の登場人物が抱いている気持ちにぴったりだし、いま世界で起こっている様々な出来事のなかでこの曲を聞くと、また感じ方も変わってくると思いました。大滝さんの声がまた素晴らしくて、とても優しい声なんです。その声に惹かれたところも大きかったです。今回、映画用にサラウンドでミックスして頂いたのですが、それがすごく良い効果を生んでいると思います。それを聞くだけでも、映画館で見る価値があると思います」
ストーリー
児童養護施設で暮らす13歳の中学生、優太(白鳥晴都)は、施設でも学校でもいじめられ、いつも一人ぼっち。自分を理解してくれる大人もいない。母・梨花( 松本まりか)が迎えに来てくれることだけを心の支えに毎日を過ごしているが、一向に現れず不安を募らせていく。そんなある日、偶然母の居場所を知った優太は、会いたい一心で施設を抜け出し、地方に住む母のアパートを訪ねる。ようやく再会するも、同居する男に依存し自堕落な生活を送る母は、優太に施設へ戻ってほしいと頼むのだった。
絶望した優太は、施設の職員の追手を逃れ、当てもなく辿り着いた海辺で、軽トラで暮らすホームレスの男・坂本(オダギリジョー)に出会う。何 も聞かず自分を受け入れてくれる坂本。二人でわずかな金銭を稼ぎながら寝食をともに過ごす。
ある日、坂本の元を訪れる少女・詩織(川島鈴遥)とも顔見知りになる。詩織は、近くの高級住宅地に住み裕福な家庭に育つも、誰にも言えない 苦しみを抱え、空虚感を埋めるかのように援助交際をしていた。優太は自分と同じ寂しさを抱えながらも心優しい詩織に惹かれていく。孤独を抱えた二人と過ごしていく中で、優太は自由気ままに生きる坂本をいつしか 会ったことのない父親の姿と重ね合わせるようになる。そして優太は、軽トラの修理が終わったら坂本と一緒に名古屋に行くことを約束する。
しかし、そんな穏やかな日々もある事件によって終わりを告げる―。
松本優作監督
1992年生まれ、兵庫県出身。ビジュアルアーツ専門学校大阪に入学し映画制作をはじめる。17年自主映画『Noise ノイズ』がレインダンス映画祭をはじめ、多数の海外映画祭で上映され、海外メディア「Psycho-cinematography」では日本映画 ランキング第1位、「Asian Film Vault」ではアジア映画ランキング第4 位に選出され高い評価を得る。また、ニューヨーク、サンフランシスコでも劇場公開される。18年ネパール×日本の合作短編映画『Bagmati River』が、Moon Cinema Projectにて企画グランプリを獲得。19年に公開された短編映画『日本製造/メイド・イン・ジャパン』でも国内外の映画祭に出品、30分の短編としては異例の単独公開を成功させる。また映画作品のほか、BMW、三井住友カードなどの広告作品や、『乃木坂シネマズ~STORY of 46~』、『湘南純愛組!』、『神様のえこひいき』、『雪女と蟹を食う』、などのドラマ作品も手掛ける。
予告編
公式サイト
8⽉11⽇(木・祝)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
8月19日(金)よりアップリンク京都にて公開
監督・脚本:松本優作
エンディング・テーマ:大滝詠一『夢で逢えたら』(NIAGARA RECORDS)
製作・プロデューサー:甲斐真樹
製作:藤本 款 定井勇二 前 信介 鈴木 仁 水戸部 晃
アソシエイトプロデューサー:永井拓郎 ラインプロデューサー:中島裕作
出演:白鳥晴都、川島鈴遥、松本まりか、若葉竜也、仲野太賀、片岡礼子、木竜麻生、駿河太郎、オダギリジョー
2022年/日本/121分/カラー/ビスタ/5.1ch/PG12
製作:スタイルジャム、クロックワークス、ビターズ・エンド、グラスゴー15、ミッドシップ、コンテンツ・ポテンシャル
制作プロダクション:スタイルジャム
宣伝:ミラクルヴォイス 配給:ビターズ・エンド
©️ 2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会