『プアン/友だちと呼ばせて』観客の元カノ、元カレと過ごした記憶を自己投影できるスペースのある映画

『プアン/友だちと呼ばせて』観客の元カノ、元カレと過ごした記憶を自己投影できるスペースのある映画

2022-08-04 15:00:00

ウォン・カーウァイがタイのバズ・プーンピリヤ監督の『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を見てその才能に惚れ込みプロデュースしたというのが『プワン/ 友だちと呼ばせて』だ。

プーンピリヤ監督は「我々フィルムメーカーにとって、ウォン・カーウァイ監督は、アイドルのような存在だから作らない理由は何もなかったし、彼にNOなんて言う人はいないよね」という。

ウォン監督のアイデアの提示は「バケット・リスト・ムービー(死ぬまでにやりたいことリスト映画)でいこう」だった。

プーンピリヤ監督は脚本を書くにあたって1年間ウォン・カーウァイともんで、却下され、その後すぐに余命宣告を受けた主人公が元カノに謝罪と感謝の旅に出るという今の脚本の設定を思いつき、ウォン・カーウァイの忠告も受け、その後3か月でウォンも納得の脚本を完成させた。

サンダンス国際映画祭の上映、タイ国内での大ヒットを受けてプーンピリヤ監督は、「人によって好きと言う部分が違うのが面白い、観客も自分の人生や記憶を投影しているのだろう」と観客の反応を分析する。

確かに本作の映像と構造は、観客の元カノ、元カレと過ごした記憶を自己投影できるスペースをあらかじめ準備しているような作りになっている。では、そういった記憶がない観客は、時代設定が2019-2020年と言う本作だが、十分に音楽をはじめとしたノスタルジックな演出を楽しむのがおすすめ。
そして『バッド・ジーニアス』同様、ゲームの最後には大きな仕掛けが待っているのがプーンピリヤ映画である。

 

ストーリー

ニューヨークでバーを経営するボスのもとに、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話が入る。 白血病で余命宣告を受けたので、最期の頼みを聞いてほしいというのだ。バンコクに駆けつけたボスが頼まれたのは、 元カノたちを訪ねる旅の運転手。カーステレオのカセットテープから流れる思い出の曲が、二人がまだ親友だった頃の記憶を呼びさます。 かつて輝いていた恋への心残りに決着をつけ、ボスのオリジナルカクテルで、この旅を仕上げるはずだった。 だが、ウードがボスの過去も未来も書き換える〈ある秘密〉を打ち明ける──。

 

バズ・プーンピリヤ監督

1981年、タイ・バンコク生まれ。シーナカリンウィロート大学の芸術学部で舞台演出を学び、修士号を取得。テレビ広告業界で働いた後、ニューヨークに渡り、プラット・インスティテュートでグラフィックデザインを学ぶ。2011年にタイに戻り、ミュージックビデオの監督を務めた後、2012年に初の長編映画であるホラー・スリラー『COUNTDOWN』(未)を監督した。その後、2作目の長編映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が、アジア全域で大ヒット。本作は第27回スパンナホン賞(タイのアカデミー賞)で 12部門を受賞し、2017年のタイ映画で最高の興行収入を記録した。また、中国を含むアジア数カ国のタイ映画の興行収入記録を更新し、3,000万ドル以上を稼ぎ出し、その結果、国際市場においてタイ映画史上最も成功を収めた作品となった。これからの世界的な活躍がますます期待される俊英の監督である。

 

 

予告編

 

公式サイト

8⽉5⽇(金) 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイント、池袋HUMAXシネマズ、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

監督:バズ・プーンピリヤ(『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』)
製作総指揮:ウォン・カーウァイ(『花様年華』『恋する惑星』)
脚本:バズ・プーンピリヤ、ノタポン・ブンプラコープ、ブァンソイ・アックソーンサワーン
出演:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオ―レット・ウォーティア、オークベープ・チュティモン

2021年/タイ/129分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/原題:One For The Road

字幕翻訳:アンゼたかし 監修:高杉美和
配給:ギャガ

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