『ボイリング・ポイント/沸騰』シェフ経験者監督の願いは、レストランビジネスと労働者に対する人々の認識を変えること

『ボイリング・ポイント/沸騰』シェフ経験者監督の願いは、レストランビジネスと労働者に対する人々の認識を変えること

2022-07-13 22:00:00

『ボイリング・ポイント』は、15年間レストランでシェフを務めた経験のあるレストランビジネスの裏と表を知り尽くしたフィリップ・バランティーニ監督ならではの作品だ。​

ワンカット撮影というコンセプトのため、入念なリハーサルを重ね合計8回撮影する予定が、コロナ禍により、2回目の撮影を控える翌日からロンドンの街自体がロックダウンされることになった。結局、ワンカットの撮影は合計4回行われ、3回目に撮影したテイクが本作となった。

クリスマス前の金曜の夜、オープンを控えたレストランに日本で言う保健所の調査が入り、スタッフに手洗いは専用の手洗いシンクでしろと指摘する係官。これは日本でも同じルール。保健所のお役所的な数々の指摘で評価が5から3に落とされシェフのイライラはいきなりトップギアに入る。観てる側の緊張も最初で一気にマックスまで持っていかれ、ワンカットのせいもあるのだが、それよりも物語のリアルさでその緊張は最後まで1ミリも休まることなくワンカット90分間突っ走る。​​

ロンドンのレストランの食事は今ひとつというのは昔のこと、今は高級レストランが数多くあり、レベルも世界のトップクラス。​ニューヨーク同様人種のるつぼのロンドンではレストランで働くスタッフの出身国もまちまちで、スタッフ間のコミュニケーションを取るのは、シェフとフロアのマネージャーの重要な仕事だ。共同オーナーでシェフのアンディはレストランの全ての責任者だ。さらに家庭問題も抱えるアンディのメンタル状態は映画の終盤最悪へと向かっていく。

シェフを経験した​バランティーニ監督が描くレストランの裏側は、とにかくリアル、これはロンドンも東京も同じリアルさだ。このリアルさを演出したバランティニー監督は次のように語る。

「私はもう7年近く禁酒していますが、キッチンで酒を飲み、あらゆることをしていた時期、私の精神状態は最悪でした。『ボイリング・ポイント』を製作した主な理由のひとつは、社会に光を当てることで、人々が共感し、自分自身を見たり、知り合いの誰かのこういうところに気づいて、”大丈夫かい?” と声をかけてあげてほしい。

この映画のテーマは、誰もが2つの仮面を持っているということです。前向きのマスクは幸せで、世界で一番素敵な人かもしれない。でも、夜家に帰るときや、プライベートな瞬間には、誰もが別なマスクを持っているんだ。この映画を観て、自分は一人じゃない、誰もが人生のどこかで何か問題を抱えていて、そこに救いはあるんだと知ってもらいたかったんです。

私たちの願いは、観客の誰もがその環境で働く人の立場に立つことで、レストランビジネスおよび労働者に対する一般の人々 の認識を変えることです」​。​

参考インタビュー記事Digital Spy

ストーリー

一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日、ロンドンの人気高級レストラン。その日、オーナーシェフのアンディは妻子と別居し疲れきっていた。運悪く衛生管理検査があり評価を下げられ、次々とトラブルに見舞われるアンディ。気を取り直して開店するが、予約過多でスタッフたちは一触即発状態。そんな中、アンディのライバルシェフが有名なグルメ評論家を連れてサプライズ来店する。さらに、脅迫まがいの取引を持ちかけてきて…。

フィリップ・バランティーニ監督

1980年7月13日、イギリス・リバプール出身。96年から俳優としてのキャリアをスタートし、2000年にサッカードラマ“Dream Team”(98-07)でデビュー。『ケリー・ザ・ギャング』(03)、HBOドラマ「チェルノブイリ」(19)など数多くの映画やドラマに出演。2010年代の後半から、監督と脚本に力を注ぎ始める。19年、若いボクサーのメンタルヘルスを描いた短編映画“Seconds Out”が幾つかの映画祭で賞を受賞。同年に、スティーヴン・グレアムを主演にワンショットで撮影された短編映画“Boiling Point”を発表、BIFAにノミネートされ、アメリカなどからも長編映画化のオファーが殺到し、本作へとつながった。20年には初長編“Villain”を監督、10年刑務所にいた男が、娘との絆を再び取り戻そうとする切ない物語を描いた。21年には、マーティン・フリーマン主演のBBCドラマ“The Responder”の1エピソードを監督、4エピソードに出演している。

 


予告編

 

メイキング映像スタッフ編

メイキング映像キャスト編

公式サイト

7⽉15⽇(⾦) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク京都ほか全国公開

製作・監督:フィリップ・バランティーニ
脚本:フィリップ・バランティーニ、ジェームズ・A・カミングス
出演:スティーヴン・グレアム(『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』『アイリッシュマン』)、ヴィネット・ロビンソン(『SHERLOCK/ シャーロック』)、レイ・パンサキ(『コレット』)、ジェイソン・フレミング(『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)

2021年/イギリス/英語/95 分/原題:BOILING POINT/PG12

後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:セテラ・インターナショナル

© MMXX Ascendant Films Limited

 

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