『9月のアル・ラシード通り』「ガザからの声」第3弾。
『9月のアル・ラシード通り』は、ガザに拠点を置く映像制作会社アレフ・マルチメディアとアップリンクの共同プロジェクト「ガザからの声」の第3弾。
2025年9月から11月の2か月間に撮影された本作は、ガザ地区の海岸沿いを走るアル・ラシード通りを映す。
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2005年にイスラエルが包囲して以降、電力の供給が不安定になったガザ地区。人びとは暗い家での生活から逃れるため、灯りを求めて、アル・ラシード通りに集まっていたという。「眠らない通り」。かつてそう呼ばれたその通りは、明るく、そしておだやかな時間を過ごすために人びとが集う場所だった。
しかし2023年10月に戦争が始まると、アル・ラシード通りはべつの役割を担うようになる。つづく戦禍のなかでたびたび出されるイスラエル軍からの避難命令によって、アル・ラシード通りは人びとが北から南へ、南から北へと、移動するための避難路となったのだ。
2025年9月9日。かねてよりソーシャルメディアや空から撒かれるビラを通して予告されていたとおり、イスラエル軍はガザ地区北部で大規模な地上軍事作戦を開始する。
人びとは暮らしていた場所を離れ、家財道具を背負い、50キロほど離れた南部の町へと向かう。
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何千人もの人びとの列が、何十キロにも渡ってつづいている。背後には、粉々になった街が見える。
通りすがりの男性がつぶやくように言い放った声がカメラに入り込む。「悲しみを撮りたいのか」。
しかしこの映画では、ニュース映像で見るような爆撃の瞬間や泣き叫ぶ子どもの姿は映し出されない。
そして、人びとのすぐ傍らには、どこかの国の子どもの大きな瞳の色にそっくりの、ブルーの海がどこまでも続いている。
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「2025年10月に停戦が発表された後、私たちはガザ北部へと戻りました。(中略)人々は生活のほんの一部でも取り戻そうとしましたが、戻ってきた彼らを待ち受けていたのは、以前とは全く異なる現実でした。ガザ地区の広大な地域がイスラエル軍の軍事支配下に置かれ、住民はそこに戻ることができなくなってしまったのです。現在、大半の人々はガザ西側の狭い帯状の地域に閉じ込められています。
本物の停戦などありません。空爆や標的を絞った攻撃は毎日続いています。それでもなお、あらゆる困難の中でも、人々の顔から笑顔が消えることはありません。」
今年7月12日、ハンマド・サウワーフ監督から報告が届いた。(全文:『9月のアル・ラシード通り』デジタル・パンフレット)
矜持。
人びとの姿にわたしがたどり着けた言葉は、この一語だった。
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テクノロジーが進み、不便なものは駆逐され、賢くなった気でいる現代、そしてわたしたち。ほんとうにそうだろうか。
誰かから奪い取ったものの上に成り立つ富や生活のなかに見出す幸せとは、噛み締めることのできるものだろうか。
これから奪うぞ、と突きつけられながら、それでも手放すことなど決してしないと思える何かを、わたしは選べているだろうか…。
この映画が伝えるメッセージを受け取ることよりも重要なのは、映された本当の人びとを見て、私たちが何に思いを馳せるのかということだろう。
(小川のえ)
ストーリー
2025年9月9日、イスラエル軍はソーシャルメディアや空から撒かれたビラを通じて、ガザ市北部の住民に対し避難命令を発した。
海沿いのアル・ラシード通りを通って、南部のアル・マワシまで避難するようにと。
撮影チームは避難路であるアル・ラシード通りへと向かう。そこで見たのは、北から南へと逃げる人々の流れだった。
ムハンマド・サウワーフ監督プロフィール
パレスチナ・ガザ出身の映像作家、プロデューサー、ジャーナリスト。ALEF Multimediaの創設者。16年以上の経験を持ち、携わった作品は30作品以上。主な作品に、イギリスのマイケル・ウィンターボトム監督と共同制作した2021年のガザ攻撃を記録したドキュメンタリー『Eleven Days in May』(邦題『忘れない、パレスチナの子どもたちを』2024年、配給:アップリンク)がある。
ALEF Multimediaについて
パレスチナ・ガザを拠点とする映像制作会社。ドキュメンタリー映画、モーショングラフィックス、写真撮影など多様なメディア制作を専門にしている。
16年以上の実績があり、紛争や困難な環境下にある地域のリアルな人間の姿を高品質な映像で記録。作品は国際映画祭や映画館で上映され、数々の賞を受賞している。
BBC、アルジャジーラ、WHO、UNDPなどの国際機関やメディアとも協力し、視覚的な物語を通じて社会問題に光を当てる。
公式HP:https://alef.ps





監督:ムハンマド・サウワーフ
撮影:イブラヒム・アル・ウトゥラ、ハッソナ・アル=ジャルジャウィ
ナレーション:ガダ・アブド・アルファッタ
編集:芝暢佑
整音:真野悠作
製作:アップリンク、アレフ・マルチメディア