『死神バーバー』終わりからはじまる物語。泣きたいくらいに愛おしい、いまおかしんじの世界。

『死神バーバー』終わりからはじまる物語。泣きたいくらいに愛おしい、いまおかしんじの世界。

2026-06-23 17:23:00

当たり前に訪れるはずの明日が突然きえる。
あ、死んだんだ、と気がつく。
冥土に向かう前にお色直しをして、最期に会いたい人に会いに行けと言われる。
不満をぶつけ、言えなかったアレコレを吐き出して、そして──。

ーーー

「人間って面倒くさいな」と死神・サクマが言う。

そのとおりだと素直に思った。

仕事がなかなかうまくいかない。そんなときに限って、恋人ともぎくしゃくしたりする。
なんなんだよって、当たり前のようにやってくる明日に嫌気がさして眠りにつく。

死んだことにされたヒロインの美帆とその恋人・将吾。
解散寸前の漫才師・ピーナッツボーイズの諏訪と相方・田淵。
コンカフェ嬢に貢ぐ男性も、冷え切った関係の夫婦も、美帆の職場の同僚たちも──。

不器用で、不格好で、歪なかたちのまま、生臭い“生”の重力に翻弄されている彼らの姿は、あまり直視したくない現実の私たちそのものだ。

なんてことない日常と、取るに足らない出来事たち。

そんな日常に突如“神”があらわれる。
もうこの先はないんだと告げる。
終わりを意識した途端に、惰性的に続いてきた日常が、ほんのりと熱を帯びはじめる。

見慣れた景色が劇的に輝きだす、なんて大げさなことはない。
それでも、伝えそびれていた言葉が重みを持ち、何気なく過ごしてきた時間がかけがえのないものだったと気がつく。

もう死ぬのだから、どうせなら言いたいことをぜんぶ言ってしまえ、と思う。
でも、いざその瞬間がくると、言いたくもない愚痴や不満は次々と口をついて出るのに、本当に伝えたいことほど言葉にならない。
懶い想いばかり募る。時間が来て、「さよなら」を絞りだす。

ーーー

私たちのすぐそばにある“死”という存在。
生まれてきた以上抗えない絶対的な結末を自明のこととしながら、それでも私たちは、生きている奇跡を忘れてしまう。
死に際に、もっと生きたかった、なんて願ったりする。

そんな姿をみて、「100年すら生きられない人間が何を考えているのか、さっぱりわからん」と死神・サクマは呆れるだろうか。

けれど、潔い死神の黒さを内包しながら、揺るぎない温もりですべてを包み込むいまおかしんじ監督からの贈り物は、愚かしいことこそ愛おしいのだと、不格好な私たちを優しく肯定してくれる。

どっと疲れた一日の終わりに。明日が来るのが少し怖い夜に。
この世の可笑しさと愛おしさをまるごと抱きしめるように、本作を観てほしい。

すべてがいやになる一歩手前でこの作品に出会えたなら、まだちょっと生きていけると思えるかもしれない。

(鈴木栞)

イントロダクション

死を迎えた人たちとの出会いと別れを通じて
自分の人生を見つめ直すヒューマン・ファンタジー

亡くなった魂が冥土に向かう前に訪れると言われる、死神が営む死神美容室「冥供愛富(メイクアップ)」
現世と冥土を行き来することができる死神たちは、現世では通常の美容師として美容室を経営している。
そこでは、亡くなった人間が死神美容師によるお色直しをしてもらい、魂が具士に送られる前に、現世にいる残された家族や大切な人を1日だけ繋ぎ、魂の最後の供養として、故人との大切な思い出に誘い、本当の意味での「最期の別れ」を告げることができるーーー。

ヒロイン・佐伯美帆(29)を演じるのは、テレビドラマ「人事の人見」(CX/25)や映画『殺さない彼と死なない彼女』など話題作に出演し、近年は映像作品にとどまらず、舞台「シャイニングな女たち」(25)
にも出演するなど、幅広い活躍を見せる桜井日奈子。さらに、4月スタートのドラマ「余命3ヶ月のサレ夫」(EX)ではヒロインを務め、4月29日公開の実写映画『SAKAMOTO DAYS』への出演も決定しており、話題作への出演が続き、多彩なフィールドで存在感を放つ彼女から目が離せない。
新米の死神・サクマ(1020)には、SKY-HI率いる BMSGのオーディション企画「THE LASTPIECE」を経て、「STARGLOW」としてのデビューが決定し、映画『代々木ジョニー』(25)で主演を務めた注目の新星・(KANON)。

さらに、岡部大や平井亜門、猪塚健太、工藤遥、宇野祥平、美保純ら、実力と個性を兼ね備えた魅力あふれるキャストが集結した。

「生きること」の喜びと、「死」の新たな捉え方を描きながら、ファンタジーの装いの中に、喜怒哀楽あふれる濃密な人間ドラマを織り込んだ本作。

老若男女すべての世代に寄り添う、共感性の高い物語が、いま誕生する。

ストーリー

ある日、職場でもプライベートもうまくいかずイライラしていた佐伯美帆はうっかり階段で足を滑らしてしまう。
その後、目を覚ますと目の前にいた新米の死神・サクマに、怪しい美容室<冥供愛富>に連れてこられるが、サクマのミスにより、
本当の死は数日後であることが判明して・・・。

いまおかしんじ監督コメント

ある日死ぬ。死神がやってくる。会いたい人に会えと言う。会う。何か喋る。必死に考えて何か喋る。
「実は死んだんだ」とはなかなか言えない。代わりに何か言う。大事なことを伝えたいと思うけど、うまくいかない。時間になる。帰らなきゃいけない。
思い残すことばっかだ。でも仕方ない。笑顔を見せて「さよなら」と言う。死にたくない。本当は死にたくない。もっともっと生きてみたいと思いながら、でも死ぬ。
未練たらたらで死ぬ。アホだと思う。愚かとも思う。でも愛おしい。泣きたくなるくらい愛おしい。

いまおかしんじ監督プロフィール

1965年生まれ、大阪府出身。
瀬々敬久、神代らの助監を経て『彗星まち』(95)で監督デビュー。
代表作に『たまもの』(04)『つぐない新宿ゴールデン街の女』(14)『あなたを待っています』(16)「れいこいるか』(2020 年度映画芸術ベストテン第1位)(20)『葵ちゃんはやらせてくれない』などがある。脚本を手掛けた作品に『苦役列車」(12)『超能力研究部の3人』(14)「銀平町シネマブルース』(22)「まなみ100%』(22)など、俳優としての出演作品に『あの頃』(20)『うみべの女の子』(21)などがある。








アップリンク吉祥寺 アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

(2026年/日本/102分/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch)
監督:いまおかしんじ
出演:桜井日奈子、日穏
原案:梅木陽一
脚本:谷口恒平
主題歌:Furui Riho「太陽になれたら」(LOA MUSIC/PONY CANYON)
製作:『死神バーバー』製作委員会
制作プロダクション:レオーネ
配給・宣伝:スポッテッドプロダクション
©︎『死神バーバー』製作委員会