『エレノアってグレイト。』誰かの物語を借りて、わたしたちは生きていく。
紛れもない嘘と、真っ赤な事実。
嘘のなかで本当が語られるとき、欺くためではない嘘をつくとき、嘘と事実との距離感は簡単に計れないものとなる。
『エレノアってグレイト。』が描くのもまた、そんな嘘と事実のねじれたような関係性だ。
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夫に先立たれたあと17年もの間、親友のベッシーと二人で暮らしていた95歳のエレノアは、彼女の死をきっかけに、娘親子を頼って50年ぶりにニューヨークへ戻る。
娘の誘いで参加したホロコースト生存者たちの自助グループで彼女は、ホロコーストでの経験を語り出す。しかしそれは、ユダヤ人であるベッシーが生前、エレノアだけに打ち明けた、壮絶な半生の記憶だった。
その日の自助グループにはジャーナリズムを専攻している大学生のニナも参加していた。エレノアの話に胸を打たれたニナは、授業の発表のために取材をしたいと申し出る。最初は断っていたエレノアだったが、半年前にユダヤ人の母を亡くしたというニナと、次第に心を通わせていく。
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エレノアが話したことは真っ赤な嘘だった。しかし同時に、それは紛れもない事実でもあった。
そしてそれは、騙すためでも、ましてや注目を集めるためでもない。ベッシーというかけがえのない存在を失くしたエレノアは、ベッシーの物語を語ることで、彼女とともにいるような気持ちになれたのかもしれない。だからエレノアは目を閉じて、最愛の友人が声を詰まらせながら語る姿を想像しながら、まるで彼女のくちびるが自分のものになったかのように、彼女の痛みが自らの痛みであるように、語りつづける。
「嘘も方便」とも「ホワイト・ライ(善意の嘘)」とも少し違う、あたらしい嘘、あたらしい真実があるように思う。
しかし、"嘘" を最初に語った場所が、ホロコーストという計り知れないほど強大で繊細な出来事を経験した者たちの自助グループであったこと。そして "嘘" によってつながりが生まれた相手が、真実を追い求めるジャーナリストを志す学生だったことが、この嘘と真実、そして個人的な物語をめぐる物語に、ヒューマンコメディに留まらない問いと奥行きをもたせる。
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そして心ゆさぶるこの映画もまた、フィクション(虚構)だ。
脚本をつとめたトリー・ケイメンは、95歳にしてフロリダからマンハッタンに移り住んだ祖母や、自身の家族の歴史を基にこの一作を書き上げたという。エレノアがベッシーの物語を語り継いだように。
自分以外の誰かの物語を借りて生きることが、時にわたしたちには必要なのかもしれない。
(小川のえ)
イントロダクション
さまざまな人種、民族、文化が共存する街、ニューヨーク。その街角で、底ぬけに明るい老婦人と、母を亡くした学生が「嘘」をきっかけに出逢い、人生の再スタートを切る――。
本作の脚本に心を打たれたスカーレット・ヨハンソンは、キャリア初となる長編監督を務め、プロデュースも兼任。そんな彼女のもとに、一流の俳優とスタッフが集結した。
エレノアを演じるのは、御年96歳のジューン・スキッブ。日本でも大ヒットを記録した『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』でテルマを豪快に演じた、あの老婦人だ。エレノアと友情を深める学生ニナを演じるのは、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』や『28年後...』シリーズのエリン・ケリーマン。
撮影監督エレーヌ・ルヴァール(『墓泥棒と失われた女神』、『17歳の瞳に映る世界』)をはじめとした超一流のスタッフたちは、監督スカーレットとともに、観光地ではなく「生活感いっぱい」のニューヨークの風景を追求した。
「嘘」からはじまる最高の友情が、人々の心を動かしていく。愛する祖母に捧げられた、とっておきの物語が、いよいよ日本初公開!
ストーリー
長年連れ添った親友の急死で心にぽっかり穴が空いてしまったエレノアは、余生を故郷で過ごすためニューヨークへ。
だけど娘はよそよそしく、孫もなにかと忙しい。
そんなある日、出掛けた先でふとホロコースト生存者の会に迷い込む。
場違いなエレノアは戸惑いながらも、ホロコースト生存者の亡き友が自分だけに語っていた半生を、まるで自分の体験であるかのように話してしまった。
ジャーナリスト志望の学生ニナは、その壮絶な過去に胸を打たれ、エレノアに心を開いていく。
母を亡くしたばかりのニナとの、年の差をものともしない新しい友情に、エレノアの心も躍る。
ところが悪気のない嘘は一人歩きし、大騒動に発展してしまうのだった……。
スカーレット・ヨハンソン監督プロフィール
ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。『ノース/ちいさな旅人』(1994年)の端役でデビュー。10歳で出演した『のら猫の日記』(1996年)でインディペンデント・スピリット賞の主演女優賞にノミネート。その後『ゴーストワールド』(2001年)でトロント映画批評家協会賞の助演女優賞を受賞。『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)ではヴェネツィア国際映画祭コントロコレンテ部門で最優秀女優賞を受賞。2010年にはブロードウェイデビューでトニー賞演劇助演女優賞を受賞。『マリッジ・ストーリー』と『ジョジョ・ラビット』(ともに2019年)では同年にアカデミー賞に2部門でノミネートされた。2017年にはThese Picturesを設立。本作でキャリア初となる長編映画監督に挑んだ。











アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開
監督:スカーレット・ヨハンソン
脚本:トリー・ケイメン
出演:ジューン・スキッブ、エリン・ケリーマン、ジェシカ・ヘクト、リタ・ゾーハー、キウェテル・イジョフォー
配給:東映ビデオ
2025年|アメリカ|ビスタ|カラー|98分
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