『モガディシュ 脱出までの14日間』1990年、ソマリアで内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちによる脱出劇

『モガディシュ 脱出までの14日間』1990年、ソマリアで内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちによる脱出劇

2022-06-28 15:38:00

韓国民主化から3年、ソウル五輪からわずか2年後に起こった知られざる実話が映画化された。1990年、ソマリアの首都モガディシュで内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちによる生死を駆けた脱出劇である。

『1987、ある闘いの真実』のキム・ユンソク、『ザ・キング』のチョ・インソン、『国家が破産する日』のホ・ジュノ、『新感染半島 ファイナル・ステージ』のク・ギョファンなど韓国を代表する名優らの共演によって、思惑絡み合う人間ドラマが繰り広げられてゆく。

なにより衝撃的なスピード感とダイナミックなカメラワークが話題となった本作。手掛けたのは、『ベテラン』『ベルリンファイル』などで知られるリュ・スンワン監督だ。韓国のアカデミー賞と称される「第42回青龍映画賞」で最優秀作品賞、監督賞含む5部門を受賞。コロナ禍にもかかわらず、2021年韓国映画No.1の大ヒットを記録した。

渡航禁止国家に指定され、実際に現地へ行くことができない状況の中、当時のアメリカ海軍の記録から国内外交協会の記事、ソマリア国営テレビの資料など徹底した事前調査を行い、撮影は西アフリカモロッコでのオールロケを実施するなど、内戦当時の状況を克明に再現したという。

韓国映画のアクション&エンタメ力を見せつけると同時に、戦争という混乱の中で、それぞれの立場の理念や理想を超え、人間として真にあるべき姿とは何かを問いかける一作。劇場に足を運ばない手はない。

 

 

ストーリー

1990年、ソウル五輪を成功させた韓国は国連への加盟を目指し、多数の投票権を持つアフリカ諸国にロビー活動をしていた。ソマリアの首都、モガディシュの韓国大使ハン(キム・ユンソク)はなんとかソマリア政府上層部の支持を取り付けようと奔走している。

一方、韓国より20年も早くアフリカ諸国との外交を始めていた北朝鮮も国連加盟を目指しており、両国間の妨害工作や情報操作はエスカレートしていく。 

そんな中、政府に不満を持つ反乱軍によってソマリア内戦が勃発し、国はたちまち大混乱に陥る。各国の大使館は略奪や焼き討ちにあい、外国人の命の危険が差し迫っていた。

反乱軍に襲われ北朝鮮大使館にいられなくなったリム大使(ホ・ジュノ)は職員とその家族たちを連れて、絶対に相容れない韓国大使館へ助けを求める決心をする。

果たしてハン大使は彼らを受け入れるのか、また彼らは全員モガディシュから生きて脱出できるのか。そしてその方法はーー?

 

 

リュ・スンワン監督インタビュー


ーー本作を作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。

数年前、偶然にもこの映画に出てくる実際の事件について知る機会がありました。しかし実は当時は『神と共に』のキム・ヨンファ監督がこの事件についての映画制作/監督を準備している状況で、この作品は私がやる作品ではないと思っていました。しかし、とてもドラマティックなテーマだったのでよい映画になればと応援していたんです。時間が経ってある時、まるで運命かのようにキム・ヨンファ監督のほうから私にこのプロジェクトの演出のオファーをくださったんです。とても興味のある話だったので断る理由もありませんでした。


ーー1990 年に起こった実際の事件を題材にした作品ですが、当時の資料などはどのように集めたのでしょうか。特に北朝鮮側の資料についてはどのように集められましたか。

まず、実際の事件を体験した大使の方が自身の体験に基づいて書かれた小説があるんです。その小説をもとに取材をはじめ、80年代のアフリカを含む第三世界地域*で活動していた当時の外交官たちに会い意見を聞き、外交資料を広範囲にわたって収集しました。その過程で、モガディシュで起きた事件以外の外交官たちの生活ぶりを知ることができました。北朝鮮に関する資料は韓国にある北朝鮮大学院の教授の方々や、私の以前の作品『ベルリンファイル』で一緒に仕事をした北朝鮮関連の専門家たちの力も借りました。

*注:西側諸国(第一世界)と東側諸国(第二世界)のどちらにも属さない国々を指すものとして第二次大戦後の冷戦時代に使われた言葉。アジア・アフリカ・ラテンアメリカなどの発展途上国のこと。


ーー実際の事件を映画化するにあたり、一番こだわった、または大切にされたことは何でしょうか?

実際に起こった事件自体がものすごく劇的であったため、オーバーになりかねない要素については厳しく判断しようと思いました。大規模な映画を作る時、多くのことを盛り込もうとすると結局どれも半端になってちゃんと表現することができないということがあるので、何を選択して集中するべきかを決めることが重要でした。何より歴史の悲劇の中で起こった事件からインスピレーションを受けて出発した映画なので、実際の歴史と人物に対する尊重と、謙虚な態度を失わぬように努力しました。


ーー撮影にあたって一番苦労されたことは何でしょうか?

モガディシュを首都とするソマリアは現在、韓国政府からは渡航禁止国家に指定されています。それゆえに、ソマリアのモガディシュを背景にした映画を作りながら実際のモガディシュには行けないまま映画を作らなくてはいけないという状況は、決して簡単ではありませんでした。当時、モガディシュの資料を探すのがとても大変でした。また、アフリカのモロッコで撮影をしたので、現地で黒人の俳優たちをキャスティングする過程も大変でした。

しかし、多くの時間と努力でアフリカ各国のとても素晴らしい俳優たちに出会えましたし、彼らとの経験は大変ではありましたがとても美しい思い出として残っています。言葉の疎通の問題というのはありましたが、全世界やはり映画を作る人々の特性はどこか似ていて、そういった問題は撮影の序盤に克服しました。言語を越える映画の言語で。意外にも一番苦労したのは食べ物でした。モロッコの食べ物はとても美味しかったですが、モロッコはイスラム国家なので豚肉を食すことが禁じられています。豚肉がたっぷり入ったキムチチゲを4カ月以上も食べることができなかったのは本当に辛かったです。


ーー本作はモロッコでのオールロケーションと聞いていますが、海外での大規模な撮影を 実施するにあたり(ロケハンや現地の人たちへの演出など)大変だったことは何でし ょうか?

モロッコはとても素晴らしい撮影のインフラを持っている国です。数多くのハリウッド映画がモロッコで素晴らしいシーンをたくさん撮影してきましたし、現在もハリウッドで最も愛用される撮影地の中の一つです。芸術的な太陽の光とハリウッド仕込みの技術に慣れた完璧な現地スタッフ、そしてとても良い人々とアフリカとヨーロッパ、中央アジアの文化まで多様に混在しているモロッコでのロケーションは、私が経験してきたどんな映画ロケーションよりも素晴らしかったです。

『モガディシュ』を作りながら経験した大変さは海外撮影であるが故に起きることではなく、総合的に映画を作る際に経験する創作過程で発生するものでした。映画を作る監督ですから、それに打ち勝たねばいけないこと以外には特別難しいことはありませんでしたし、むしろとても良い思い出として残っています。


ーー本作で初共演となったキム・ユンソクとチョ・インソンとは初めての仕事だったと思いますが、一緒に仕事をされてみての感想を お聞かせ頂けませんでしょうか?

日本語で、“最も最高”の状態を表現できる言葉で書いてください(笑)!本当に素晴らしく、それ以上説明できないくらいです。私はいつかお二人と仕事をしてみたいと思っていました。そしてチョ・インソンさんは私の最新作『SMUGGLE』でも一緒に仕事をしました。監督という職業に就いたおかげで、この世で誰よりも先に『モガディシュ』で演技をする彼らの姿を見ることができて本当に光栄でした。


ーー本作にこめたメッセージがあれば教えて下さい。

果たして、戦争と理念は誰のためのものなのか? と問いかけたかったのです。私たちが共に生きていくには憎悪を止めなければなりません。


ーー本作は興収30憶円を超える 2021 年度の韓国No.1大ヒット作品となっていますが、それだけ多くの方がご覧になった理由は何だと思われますか?

まず、コロナによるパンデミックの状況下でもこの映画を観に劇場に足を運んでくださった観客の皆さんに本当に感謝しています。映画館に来てくださった皆さんがこの映画を応援してくださったのは、ストーリーと俳優の力がとても大きかったのではないかと思います。そう遠くない歴史的な事実に基づき、リアルな背景から発生した特別な物語が与える力と、演技力の高い俳優たちが見せるサスペンスと共に普遍的なヒューマニズムを貫く力が、この映画の最も強烈な力だと考えます。これに加えて韓国映画界最大のプロダクションノウハウが生み出した戦争の残酷さとカーチェイスが与える迫力、観客たちが、実際に冷戦が起きているアフリカのど真ん中にいるように感じることができるリアリティなどがヒットの原動力になったと思います。


ーー映画監督として今までに影響を受けたと思うものがあれば教えて下さい。映画でも実 際の事件でもなんでも結構です。 また日本の文化で好きなものや影響を受けたものがあれば教えて下さい。

無数に作られた傑作、今も作られている個性あふれる映画、そんな映画たちを作った人々は皆わたしの師匠です。映画監督として今まで影響を受けたのは、私が生きて来たこの“世の中”です。そして私を導いてくれた家族と友達、同僚たち全てが私に影響を与えた人々です。

日本の文化では、ラーメン、丼物をはじめ、特に食べ物が好きです!サムライ活劇とヤクザ映画、アニメーション、柔道や合気道、黒澤明、鈴木清順、宮崎駿、高倉健、三船敏郎、千葉真一、稲中卓球部、ぼのぼの……それ以外にもとても多くて整理できません(笑)。


ーー日本の観客へメッセージをお願いします。

『モガディシュ』は劇場で鑑賞することに最も適している映画です。この映画をご覧になる観客の皆さんには、できるだけ大きなスクリーンで鑑賞することをおすすめします。互いを憎んでいた韓国と北朝鮮の外交官たちが、内戦が勃発したアフリカのある地域で生き残るために敵対することをやめ、力を合わせる決意をします。

コロナのパンデミックによって全世界が苦しい時期を過ごしています。私たちが憎悪を止め、力を合わせたら、この状況からも共に脱することができると思います。皆さん、がんばりましょう。

 

 

『モガディシュ 脱出までの14日間』予告編

 

公式サイト

 

7月1日(金) 新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー

7月15日(金) アップリンク吉祥寺

 

監督:リュ・スンワン 
出演:キム・ユンソク、ホ・ジュノ、チョ・インソン、ク・ギョファン、キム・ソジン、チョン・マンシク

原題:모가디슈ESCAPE FROM MOGADISHU/2021年/韓国/カラー/121分/シネスコ/5.1ch/字幕翻訳:根本理恵

提供:カルチュア・エンタテインメント 
配給:ツイン、 カルチュア・パブリッシャーズ  宣伝プロデュース:ブレイントラスト

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