【MOOSIC LAB 2026】『エミレット+ブルー・アンバー』恋愛に潜む“前提”の重さ— ちがうまま、歩み寄るために。
MOOSIC LAB とは
音楽×映画×エトセトラな祭典
MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)は、2012年より新進気鋭の映画監督×アーティストのコラボレーション企画で映画作家とミュージシャン、映画と音楽との化学反応を意識的に制作、
それらをコンペ形式・対バン形式で上映する音楽×映画の祭典として始まった映画祭。
2020年のコロナ禍以降はコンペ形式や音楽×映画のコンセプトを和らげ、多様性を意識した温故知新なラインナップを形成。
進化し続けながら、今年で15年目を迎える──。

【MANIAC 田中未来監督特集】エミレット+ブルー・アンバー
無機物しか愛せない青年・三崎と、彼を愛しながらもそこに渇きを感じる恋人・にーなの関係を、にーなの視点で描きだす『エミレット』。
人を好きになれないことに悩むカメラマン・木崎の孤独や違和感、周囲との関係性の変化を繊細に捉えた『ブルー・アンバー』。
『エミレット』も『ブルー・アンバー』も、セクシャルマイノリティの人物を主人公に据えた作品だ。
けれどそれは、物語の中心にあるものを覆い隠す蜃気楼のようで、その奥にある光に気づけるかどうかを、静かに問われているようだった。
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恋をする。しない。
同性が好き。異性が好き。どちらも好き。どちらも好きではない。
自分の恋愛の在り方と、他者のそれに“ちがい”があることを、私たちはどれほど想像しているのだろうか。
観終わった直後から、そんなことをぼんやりと考えつづけている。
恋人と身体的接触をもたないこと。他者に恋愛感情を抱かないこと。
それを理解しがたいと感じる人がいるのも、無理はないのかもしれない。
『エミレット』では、三崎との距離や欲望の扱い方に戸惑いながら生きるにーなの揺らぎを通して、“恋人”という関係性に潜む前提の重さと、そこに苦しむ三崎の姿がリアルな熱量で描かれている。
『ブルー・アンバー』で木崎に恋をするふたりもまた、彼のなかに恋心があるはずだと信じて疑わない。
どれだけ理解しようとしても、どれだけ相手を想っても、
私たちは結局、“自分”というフィルターを通さなければ、他者を見つめることができないのだから。
そして、一度抱いた前提を手放すことは、簡単ではない。
にーなの揺らぎや三崎の苦しみ、そして木崎をめぐる関係性の変化は、そうした相手の気持ちを慮る難しさをリアルに映し出している。
“あなたとわたしはちがう”という事実。
その厳しさに頭を抱え、人と関わることの途方もなさに呆れながら、それでも他者を想像しつづけること。
田中未来監督は、その選択から目をそらさないための視線を、静かに差し出しているのかもしれない。
(鈴木栞)

『エミレット』
ストーリー
第21回大阪アジアン映画祭<インディーフォーラム部門>正式出品作品
にーなは、恋人である三崎と誰もが羨む同棲生活を送っていた。
何も問題などないように見える二人だったが、実は三崎は無機物しか愛せない青年だった。
恋人との肉体的接触が一切ない毎日に、次第に渇きを覚えていくにーな。
にーなは、三崎と肉体関係を持とうとすることが関係を壊すことだと知っていながらも、 ついには己の欲望を止めることができず…。


©︎JIJI
(日本/36分)
監督・脚本:田中未来
出演:日下玉巳、工藤孝生、ミノリ、成嶋翔太、大瀧慶祐
配給:スポッテッドプロダクション
『ブルー・アンバー』
ストーリー
第21回大阪アジアン映画祭<インディーフォーラム部門>芳泉短編スペシャル・メンション受賞
映画監督を目指すカメラ映画監督を目指すカメラマンの木崎翔也は、これまで一度も人を好きになった経験がなく、常にどこか孤独を感じていた。
それでも明るく社交的な翔也は、一見社会に順応できているようにみえる。
そんななか、仕事場で知り合った歌手の歌音や、カメラアシスタントの守谷からの想いに応えられなかったことで「人を好きになれない」自分がどこかおかしいのではないかと悩むようになる。
翔也はいつからか、自分が自分らしくいられる楽園「ブルー・アンバー」に想いを馳せる。


©︎JIJI/SPOTTED PRODUCTIONS
(日本/34分)
監督・脚本:田中未来
出演:栗原颯人、羽音、林裕太、續木淳平、大瀧慶祐、佐久間祥朗、斉藤里奈、カトウシンスケ
配給:スポッテッドプロダクション
田中未来監督プロフィール

1993年生まれ、東京出身。 中央大学文学部で近現代文学を学び、小説の執筆を始める。
2019年シナリオセンターで脚本、2020年ニューシネマワークショップで映像の基礎を学ぶ。2024年、ENBUゼミナール監督コース在学中に本作『ジンジャー・ボーイ』を制作。
第78回カンヌ国際映画祭ラ・シネフ部門にて第3位に入賞の快挙。
続いて第21回大阪アジアン映画祭インディフォーラム部門にて<焦点監督・田中未来>という特集が組まれ『ジンジャー・ボーイ』『エミレット』『ブルー・アンバー』の3本が上映され、
『ジンジャー・ボーイ』がJAPAN CUTS Award、『ブルー・アンバー』が芳泉短編賞<スペシャル・メンション>のW受賞を果たした。
アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開