『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』痛みと悲しみに満ちたシンデレラの物語。
ガラスの靴、かぼちゃの馬車、真夜中の12時。継母と義姉妹にいじめられながらも、健気に働きつづけるシンデレラは、妖精たちの力を借りて王子様と結ばれる──わたしたちがよく知っているこのシンデレラの物語は、1697年にフランスで書かれたもので、ディズニーのシンデレラもこれが下敷きになっている。
しかし他の昔話と同じように、シンデレラの物語は世界中に数百以上のバリエーションがある。そしてそれらの多くは、おとぎ話のイメージからは大きくかけ離れた、残酷な内容が含まれている。
たとえば、1812年にドイツで出版されたグリム童話版では、妖精ではなく母の墓に生えた木と鳥がシンデレラを助け、義姉妹たちは靴を履くために足の指やかかとを切る。さらには、現存する最古のシンデレラの逸話とされる1634年ごろのイタリア版ではなんと、物語の最初にゼゾラ(シンデレラ)が継母を殺してしまう。
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本作の主人公は、シンデレラの義姉妹(ステップシスター)、エルヴィラ。王子との結婚を夢に見、美しいシンデレラを敵対視する彼女は、王子にみそめられるために整形手術や人体改造にのめり込んでいく。美しさのためならどんな激痛にも耐える彼女の、血も涙もない末路が描かれる。
エミリア・ブリックフェルト監督は、シンデレラ物語のどれか一つのバージョンに固執することなく、自身が共感する要素を組み合わせ、自分なりの解釈を加えながら本作の脚本を書いたと言う。
『現代のシンデレラ物語として語ることもできたと思いますが、私は最初から、特定の時代ではない、曖昧な「昔」として舞台を設定しようと決めていました。そうすることでこの物語の主題は、現代の問題に共鳴するのです』。
ピンヒールは女の骨、という文章の一節だったか何かのコピーだったかを思い出す。わたしたち女性が履くピンヒールは、エルヴィラが鼻をより高くするためにつけている矯正器具と、ほとんど同じ意味をもつ。
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過激で生々しい痛みの描写。その傷口のまわりで、死に至るような悲しみという痛みが救いの悲鳴をあげている。
夢は叶わず、痛みをともなっただけで努力も優しさも報われないフェアリーテール。エミリア監督版シンデレラは、これまでのどのシンデレラ物語よりも深い悲しみに満ちている。
(小川のえ)
イントロダクション
北欧発のゴシック・ボディホラーが日本上陸! 第41回サンダンス映画祭でプレミア上映され、斜め上をいくプロットと容赦ないグロテスク描写で「退出者続出!」の衝撃的な幕開けを飾った『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』がいよいよ日本で公開される。
本国ノルウェー公開時には4週連続でTOP10入りを果たし、大ヒットを記録した本作は、第75回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、第43回ブリュッセルファンタスティック国際映画祭シルバーレイブン受賞、第29回富川ファンタスティック国際映画祭グランプリ&観客賞受賞を含み、実に20もの映画祭にて正式出品され、世界中の批評家や観客を虜にし、数々の賞を獲得している。
誰もが知るおとぎ話「シンデレラ」をモチーフとし、美しいシンデレラへ強い嫉妬と妬みを向ける醜い義姉妹を主人公にした本作。
王子の花嫁の座を射止めるためなら手段を選ばない母と娘の、美に対する底なしの執念が描かれる。
ストーリー
――スウェランディア王国のユリアン王子は、淑女たちの憧れの存在。
彼と結婚するために、彼女たちは日々努力を重ね、美しさに磨きをかける――。
エルヴィラは、母レベッカの再婚のために妹 アルマとこの王国へとやってきた。
ユリアン王子の花嫁になることを夢見ながら・・・。
新しい家族となる義姉妹のアグネスは、家柄に恵まれたとても美しい女性。
一方、エルヴィラは矯正器具に覆われた口元、ふくよかな体形、こじんまり とした鼻、つぶらな瞳。
しかし、アグネスの父が急逝したことで事態は一変する。
レベッカはアグネスを貶め、エルヴィラを国王の花嫁にするため手段を選ばずに美を施してゆく。
そんななか、ユリアン王子の花嫁候補を集めた舞踏会が開かれることになるが――。
エミリア・ブリックフェルト監督メッセージ

『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』の包括的なテーマである「美のホラー」は、ボディホラーや「美の痛み」という女性蔑視的な考え方から着想を得ています。
私は本作を通して、美がもたらす束縛や、それが若い女性たちにどのような影響を与えるかについて、さらに深く追求しました。
ボディイメージや、女性らしさについて、長年葛藤してきた私にとっては、とても個人的なテーマでもあります。
私がこの作品で目指しているのは、観客がこの物語に触れることで、共感や不快感を覚えて自らを振り返り、エルヴィラの体験に完全に入り込むことです。
観客が、自らの身体をエルヴィラの肉体的な苦痛と重ねることで、強い身体的なつ ながりを感じ、自分自身について深く考える機会になることを願っています。
エミリア・ブリックフェルト監督プロフィール
1991年生まれ、ノルウェー出身。ノルウェー映画学校の卒業制作として2018年に制作した作品『SARA'S INTIMATE CONFESSIONS(原題)』が、2018年ロカルノ国際映画祭や2019年クレルモン=フェラン国際短編映画祭など、数々の映画祭に選出された。そのほか、大胆かつ挑発的な短編映画で高い評価を集めてきた。本作『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』は、長編監督デビュー作となる。







アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開
監督:エミリア・ブリックフェルト
出演:リア・マイレン、アーネ・ダール・トルプ、テア・ソフィー・ロック・ネス、 フロー・ファゲーリ、イサーク・カムロート
日本語字幕翻訳:原田りえ
映倫 R15+
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム/提供:ニューセレクト
2025 年/ノルウェー、デンマーク、ポーランド、スウェーデン
ビスタサイズ/DCP/109 分/カラー/ノルウェー語/5.1ch
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