『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』小屋の数だけ、異なる時間と思いがある。

『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』小屋の数だけ、異なる時間と思いがある。

2026-01-07 08:00:00

小屋番。山の中で、来る日も来る日も嵐の日も、登山者を受け容れる山小屋で働く人々をそう呼ぶ。気取らない無骨なネーミングだと思う。

以前とある山小屋で、紅葉やゴールデンウィークの繁忙期の限られた期間だけ、働いたことがある。だから観る前、この作品も自然讃歌や人間讃歌に留まるのではと、少しだけ身構えていた。

夜明け前に次の目的地へと出発する登山客のため、真っ暗闇の中でストーブに火をつける。かつて自分が立っていた小屋での朝を思い出す。

本作『小屋番 八ヶ岳に生きる』は、山梨・長野両県にまたがる八ヶ岳連峰全体を舞台とし、そこにある山小屋で働く小屋番たちと、山小屋を取り巻く山々のいまを伝える。

登場する山小屋は、南北の境界に位置する根石岳山荘からはじまり、東天狗岳山頂を越えて、北八ヶ岳の黒百合平にたつ黒百合ヒュッテ、標高2100メートルに位置する白駒の池のそばにある青苔荘、蓼科山頂ヒュッテとつづく。

そして、八ヶ岳の最南部に位置する編笠山の青年小屋、池でのキャンプも楽しめる双子池ヒュッテ、八ヶ岳最高峰の赤岳にある赤岳鉱泉・行者小屋へと巡る。

自然界になまけ者がいないように、自然の中で、自然と向き合いながら暮らす小屋番は働き者だ。もくもくと、せっせと身体を動かす。

しかしその働き方はがむしゃらでも禁欲的でもなく、自然と同じように、ほどく時間と踏ん張る時間が正しい配分で機能している。

「山の厳しさを教えることが山小屋の使命」。

「自然は好き、山は嫌い」。

「ここ(小屋)がなければもっといい場所だなと思う」。

「山小屋はなくてもいいが、この自然はなくてはならない」。

本作で語られる小屋番それぞれの言葉。それが単なる持論でないことを、その表情の真っ直ぐさと顔に浮かぶ繊細な曲線のしわが伝える。その言葉には、必要なものだけを最低限度で使い、強い日差しや風雨にさらされて生きてきた時間の蓄積がにじんでいる。

働くこと。生きること。感動しつづけること。

モルゲンロートの赤は、ほかのどの赤とも代えられない。山小屋で迎える朝にだけ現れるその赤色を、スクリーンの中に見つめ、かつて山のあいだで抱いた雄大で、同時にひどく繊細だった、あの忘れがたい感覚を追体験するようだった。

(小川のえ)

イントロダクション

今年3月に開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2025」で上映され、舞台挨拶回が即完になったほか超満員での上映を迎えるなど、6都市各地で大きな注目を集めた映画『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』。

その後、追加撮影や再編集を重ね、四季折々の荘厳な自然を捉えた新たな映像やインタビューが加わった『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』が完成した。

“コヤガタケ”と呼ばれるほど沢山の山小屋が存在する八ヶ岳。本作では、そんな日本百名山のひとつを山岳写真家の菊池哲男と巡っていく。

ナレーションを務めるのは、庄司智春(品川庄司)、木村卓寛(天津)らと<東野登山隊>としてガチ登山に挑戦していることでも知られるお笑い芸人・東野幸治。そして日頃から数多くの登山に挑戦し『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』でも声を吹き込んだ一双麻希が続投をしている。

監督は、連続ドラマや報道特番のMAミキサーとして活動する傍ら、コロナ禍を機に山小屋支援のため、山の美しさや登山の魅力を動画などで届けてきたTokyo Climb代表・深澤慎也。企画・プロデュースを、多くの情報番組やドラマ制作に携わってきた永山由紀子が担当している。

ストーリー

さまざまな想いを抱えながら「小屋を営むもの=小屋番」という道を選んだ人々。

コンビニも車もない、自然と真正面から向き合う過酷な日常を選んだ理由とは?

「最後の逃げ場が山しかない」「お客さんや仲間が遭難し、亡くなられるケースを防ぎたい」「ちょっと立ち止まって自分を振り返る」……

“山”を、“命”を知る者たちの言葉が紡がれていく。

深澤 慎也監督プロフィール

2004年専門学校卒業後、約20年に渡って主にTBSの連続ドラマ、報道特番のMAミキサーとして番組制作に携わる。2018年の西日本豪雨を機に、所属するNPOの活動で災害支援を行った際に現地で活躍する「プロボノ」に興味を持ち、2020年から世界的なパンデミックで営業自粛を余儀なくされた山小屋支援をスタート。本業の傍ら、動画制作チームTokyo Climbのプロボノ活動の一環として「山小屋動画」の制作を行なっている。現在は、東京からもアクセスしやすい八ヶ岳エリアの山小屋のPV動画を制作中。

アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開

公式X (Twitter)

監督・撮影・MA:深澤慎也(TBS ACT)

プロデューサー:永山由紀子

出演:菊池哲男(山岳写真家)

エグゼクティブプロデューサー:津村有紀

総合プロデューサー:須永麻由 小池 博

協力プロデューサー:石山成人 塩沢葉子 和田圭介

進行プロデューサー:鈴木秀明 尾山優恵

製作:TBS

配給:KeyHolder Pictures

宣伝:KICCORIT

2026 年/日本/85 分/5.1ch/16:9

レイティング:G

©TBS