『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』オダギリジョーが放つジャンル越境のダークファンタジー
2021年にオダギリジョーが脚本・監督・編集・出演を務めたオリジナルテレビドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』。鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮)だけには、なぜか相棒の警察犬・オリバーが、酒と煙草と女好きの欲望にまみれた犬の着ぐるみのおじさんに見えてしまう(他の人間には優秀な警察犬にしか見えていない)。しかもその着ぐるみのおじさんをオダギリジョー自身が演じるという奇抜な設定は、発表当初から大きな話題を呼んだ。
そんな伝説的ドラマが、『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』としてスクリーンに帰ってきた。観客としてスクリーンに向き合った私は 、この作品を「ジャンル分け不能な映画体験」と呼びたくなる。警察官と犬のコンビという設定だけ聞くと軽いコメディを想像されるかもしれないが、実際は笑いと不穏さが絶妙に交錯する異色作で、気づけば観客をどこまでも奇妙な世界へと連れていく。
特に印象的だったのは、登場人物の濃さ。池松壮亮のどこか不器用で人間味のある主人公をはじめ、麻生久美子、國村隼、佐藤浩市、深津絵里、永瀬正敏といった日本映画界を代表する面々が、それぞれ強烈な存在感を放っている。しかもそれぞれが濃すぎる役を存分に楽しんで演じており、そのセッションを眺めるだけでも価値がある。
そして何より忘れてはいけないのが、犬のオリバーだ。人間社会の滑稽さや不条理を、ただそこにいるだけで照らし出す存在。人間たちが右往左往する中誰よりも真っすぐで、ある意味いちばん「まとも」なのはオリバーなのかもしれない。
オダギリジョーはインタビューで、「自分にしか作れないものを作りたい」と映画版への意気込みを語っている。テレビシリーズの延長ではなく「映画でしかできない挑戦」を目指したといい、その挑戦心は随所に刻まれている。彼にとって編集作業は「力不足を補うクリエイティブな時間」であり、現場で叶わなかった部分を後で取り返す場だとも語っており、その徹底した姿勢が本作の独特なテンポや質感を生んでいるのだろう。
見終わったあと、これは単なるコメディー映画ではなく、オダギリジョーが「今」の社会に感じている違和感を、真剣に、でも遊び心を持って投げかけた作品だと気づく。好悪が分かれる作品かもしれない。だが私は、こうした「なんとも形容しがたい作品」に出会えること自体が映画を観る喜びだと感じる。笑いながらも不穏さに包まれる90分、そして思わず考えさせられる人間社会の滑稽さ。観客としてこんなに振り回されつつ楽しめる映画は久しぶりだった。
ぜひ、皆様も奇妙な体験をスクリーンで味わってみてはいかかだろうか。
(小出)
イントロダクション
2021年にオダギリジョーが脚本・演出・編集を務めたオリジナルのテレビドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」。鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮)だけには、なぜか相棒の警察犬・オリバーが、酒と煙草と女好きの欲望にまみれた犬の着ぐるみのおじさんに見えてしまう(一平以外の人間には優秀な警察犬に見えている)。しかもその着ぐるみのおじさんオリバーをオダギリジョー自身が演じるという奇抜な設定に、ドラマ化発表時から話題を呼んだ伝説のドラマ。放送が開始されると多くの視聴者を虜にし、2022年にはシーズン2が放送、Twitter(現X)では世界トレンド1位を獲得するなど、社会現象に。その評価は視聴者のみにとどまらず、「東京ドラマアウォード2022」では単発ドラマ部門作品賞グランプリ受賞、ギャラクシー賞月間賞受賞など、各方面で高い評価を受けた。
その伝説のドラマが、オダギリジョー脚本・監督・編集・出演『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』(配給:エイベックス・フィルムレーベルズ)としてこの秋、満を持してスクリーンに登場!
オダギリ監督のもとに集結したのは類を見ない超豪華キャスト!ドラマ版から引き続きの出演となる、主演の池松壮亮、共演に麻生久美子・本田翼・岡山天音・黒木華・鈴木慶一・嶋田久作・宇野祥平・香椎由宇・永瀬正敏・佐藤浩市。そして映画版の新メンバーとして吉岡里帆、鹿賀丈史、森川葵、髙嶋政宏、菊地姫奈、平井まさあき(男性ブランコ)、さらに8年ぶりの映画出演となる深津絵里。映画版のオリバーで描かれるのは、開けてはいけないドアの先に見たこともない不思議な世界が広がっている、前代未聞のダークファンタジー。一平とオリバーが立ち向かう新たな事件とは?この秋、笑いとシリアスやシニカル、そして不条理がスクリーンから襲い続けてくる、新たなオリバーの世界が幕を開ける。
ストーリー
狭間県警鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮)。
一平の相棒は、数々の難事件を解決に導いた伝説の警察犬・ルドルフの子供であるオリバー。しかし、一平には、どういうわけか、オリバーが口が悪くやる気がない、女好きで慢性鼻炎の着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えている。
ある日、一平や鑑識課メンバーの前に、隣の如月県のカリスマハンドラー・羽衣弥生(深津絵里)がやってきた。如月県でスーパーボランティアのコニシさん(佐藤浩市)が行方不明になったため、一平とオリバーに捜査協力を求めてきたのだった。
「コニシさんが海に消えていくのを見た」という目撃情報を基に、コニシさんのリヤカーが残されていた海辺のホテルに向かった一平とオリバーと羽衣だったが...
オダギリジョー監督 プロフィール
1976年岡山県生まれ。俳優として映画やドラマに幅広く出演し、独特の存在感と高い演技力で評価を集めている。2003年公開の映画『アカルイミライ』(黒沢清監督)で注目を浴び、その後も『ゆれる』『横道世之介』『ある船頭の話』など話題作に出演。国内外の映画祭でも高い評価を得てきた。近年は監督・脚本家としても活動し、2019年には長編監督デビュー作『ある船頭の話』を発表。俳優業にとどまらず表現の幅を広げ続けている。
アップリンク吉祥寺ほか全国劇場にて9月26日(金)公開
脚本・監督・編集・出演:オダギリジョー
池松壮亮 麻生久美子 本田翼 岡山天音
黒木 華 鈴木慶一 嶋田久作 宇野祥平 香椎由宇
永瀬正敏
佐藤浩市
吉岡里帆 鹿賀丈史 森川 葵
髙嶋政宏 菊地姫奈 平井まさあき(男性ブランコ)
深津絵里
製作:「 T HE オリバーな犬 、 Gosh!! このヤロウ MOVIE 」 製作委員会
制作プロダクション:MMJ
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
©「 T HE オリバーな犬 、 Gosh!! このヤロウ MOVIE 」 製作委員会