映画製作において重要な仕事であるキャスティング。ながらく本編にはクレジットさえされず、今もなおアカデミー賞の受賞対象とはなっていないプロフェッショナルを描く。

映画製作において重要な仕事であるキャスティング。ながらく本編にはクレジットさえされず、今もなおアカデミー賞の受賞対象とはなっていないプロフェッショナルを描く。

2022-03-26 12:30:00

観客がスクリーンで見るのはまずキャスト。映画を形作る大きな要素は俳優であることは間違いない。そのキャストを選ぶ仕事は長らく光が当てて来られなかった。スコセッシ監督の信頼を得、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノらをキャスティングしてきたマリオン・ドハティのプロフェッショナルな仕事ぶりを本作『キャスティング・ディレクター』は描く。


日本とアメリカでは俳優が映画の仕事を得るシステムが違う。日本の場合、多くの俳優が芸能事務所に所属しているケースが多い。本作のマリオン・ドハティのような無名の俳優を見出す役割は、日本では、新人を見出し育てる芸能プロダクションが担っている。

 

キャスティングの仕事が評価されず、最初はクレジットなし、そしてキャスティングby、そしてキャスティング・ディレクターとクレジットされるようになったが、アカデミー賞では撮影、美術、衣装デザインなどの門はあっても、キャスティング・ディレクターが評価される部門は、本作でも紹介されるように全米監督組合の反対によってないという。

 

トム・ドナヒュー監督コメント


この映画を作るまで、私はキャスティング・ディレクターというものを全く理解していなかったし、その裏にこんな深い物語があるとは想像もしていませんでした。しかし取材を始めてすぐに、キャスティング・ディレクターがハリウッドの中心的役割を担っていることを知りました。役に命を吹き込む俳優を見つけ、彼らの背中をおしてやるキャスティング・ディレクターが、映画スターたちを最初に発掘し、素晴らしい役へ推薦してきたのだと。彼らは、映画の中の生き生きとしたアンサンブル(そして作品の本質)の創造に貢献し続けていたのです。

この映画のきっかけは、ロサンゼルスの友人ジョアナ・コルベアに尋ねられた何気ない質問でした。「ねぇ、マリオン・ドハティって知ってる?」 私は何年も映画を学び、この業界で働いてきたのに、それは初めて聞く名前でした。ロスからニューヨークへ戻ると直ぐに、あらゆる方法で彼女について調べ、オクラホマ大学の教授による彼女のインタビュー記事に辿り着きました。そこには、彼女が見出した伝説級の名優らの名前と、彼女が配役をした映画史に残る数々の役名が並んでいましたが、彼女に関する情報はこの資料の他には見つかりませんでした。私は決意しました。「マリオン・ドハティの映画を作らなくてはいけない」。

そしてプロデューサーのケイト・レーシーと共に、マリオンと仕事をした人々へ連絡をとりはじめ、その数はどんどん膨れ上がり、数年かけて取材した相手は200人を超えていきました。あらゆる映画の場面を検証し、大学や図書館や個人が所有する資料と膨大な映像をかき集めると、その全てがマリオン・ドハティという女性が途方もないインパクトをアメリカ映画に与えた事実と、キャスティングという重要な仕事が何十年も、いかに軽んじられてきたかを証明していました。

マリオン・ドハティは映画の世界を革新し発展させた先駆者(パイオニア)の一人であり、彼女が築いた道を継承する現代のキャスティング・ディレクター達は(色々な壁にぶつかりながらも)マリオンがしてきたように俳優たちを鼓舞し続けるでしょう。この映画でキャスティング・ディレクターへの理解が深まり、長年阻まれてきた正当な評価を受ける一助になることを心から願います。どんな素晴らしい役も脚本に記されただけでは動きださず、有能なキャスティング・ディレクターと制作者と俳優の共同作業で息を吹き込まれるということを、どうか忘れずにいて下さい。

 

予告編

 

『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた⼥性』

公式サイト

4⽉2⽇(⼟)よりシアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開

監督:トム・ドナヒュー

出演:マリオン・ドハティ、マーティン・スコセッシ、ロバート・デ・ニーロ、ウディ・アレン、クリント・イーストウッド、ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン、アル・パチーノ、メル・ギブソン、ジョン・トラボルタ、グレン・クローズ

配給:テレビマンユニオン

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