『海辺へ行く道』答えのない芸術を作る答えのない人生を生きる人々を描いた答えのない映画
瀬戸内の光と潮風に包まれた小豆島を舞台に、子どもたちの奔放な想像力と、大人たちの秘密や嘘が交錯する――横浜聡子監督の最新作『海辺へ行く道』は、人生の「余白」を描き出すかのような、優しさとユーモアに満ちた物語だ。
主人公は、美術部員の中学生・奏介(原田琥之佑)。夏休みの間も、演劇部に頼まれた絵を描き、新聞部の取材を手伝い、さらには人魚の模型制作といった奇妙な依頼まで舞い込み、休む暇がない。だが、彼は夢中になって手を動かし続ける。街には“アーティスト移住支援”を掲げた行政によって、どこか怪しげで風変わりな大人たちが出入りし、さまざまな秘密や嘘が渦巻いている。海辺の町に広がるのは、笑いと戸惑いがないまぜになった、不思議で愛おしい日常だ。
本作は、孤高の漫画家・三好銀が晩年に描いた「海辺へ行く道」シリーズを原作に映画化。800人を超えるオーディションから抜擢された新星・原田琥之佑を主演に、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、宮藤官九郎、坂井真紀ら、世代も個性も異なる豪華キャストが集結した。さらに、独創的な音楽世界で注目されるラップトリオ Dos Monos の荘子 it が映画音楽を初担当。「朗らかに見えて、不気味さと明るさが同居する前代未聞の映画」と自ら語る劇伴が、物語に唯一無二のリズムを与えている。
その独特の世界観は海外でも高く評価され、第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門でスペシャルメンションを受賞。国際審査員は「この映画は、優しさと遊び心のあるユーモアで私たちの心を掴みました。明るく陽気な想像力と創造力で、芸術の無限の可能性と、予期せぬ出来事と出会う幸福を思い出させてくれました」と絶賛した。
プロデューサーの和田大輔は「この映画には“余白”がある。余分や余計、無駄と思えるものにこそユーモアが宿り、幸福な偶然が立ち上がる」と語る。その“無駄”を愛おしむ姿勢は、原作に触れたときから彼が強く感じ続けてきたテーマでもある。
そして横浜監督自身もこう述べている。
「この映画は劇的な出来事は起こりませんし、社会問題を叫ぶ映画でもありません。何か素敵なことが起こるかもしれないというささやかな予感を胸に、無邪気に作品を作り続ける若者たちの映画です。今回賞をいただけたのは、そんな目に見えない、言葉で表せない彼らの“予感”が伝わったからかもしれません」。
監督が語る“ささやかな予感”は、映画全体を通じて観客の胸に宿る。散歩の途中にふと足を止めるように、何気ない風景にふと魔法を見つけるように。『海辺へ行く道』は、観る者に「人生は予測できない魔法であふれている」という事実を思い出させてくれる。
劇場を出るとき、観客はきっと自分の毎日にも目を凝らすだろう。何でもない会話や道端の風景に、小さな偶然の幸福を見いだすかもしれない――
『海辺へ行く道』は、そんな“余白を楽しむ勇気”を手渡してくれる、答えのない芸術を作る答えのない人生を生きる人々を描いた答えのない映画だ。(CI)
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イントロダクション
第 75 回ベルリン国際映画祭ジェネレーション Kplus 部門特別表彰。
日本最大級の芸術祭・瀬戸内国際芸術祭 2025 正式参加。
15 歳の新星・原田琥之佑主演で描く、横浜聡子監督待望の最新作!
『ジャーマン+雨』『ウルトラミラクルラブストーリー』『俳優 亀岡拓次』『いとみち』で、その度ごとに話題を巻き起こして来た監督・横浜聡子が、知る人ぞ知る孤高の漫画家・三好銀の晩年の傑作「海辺へ行く道」シリーズをまさかの映画化。
主演をつとめるは、約 800 人のオーディションを経て主演を射止めた、15 歳の俳優・原田琥之佑。街を彩る登場人物たちに、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春、諏訪敦彦、村上淳、宮藤官九郎、坂井真紀ら個性豊かな大人たちに加え、蒼井旬、中須翔真、山﨑七海、新津ちせなど、実力派の若手俳優たちが見事集結。
さらに、様々なシーンから熱烈な支持を受ける至高のラップトリオ Dos Monos のフロントマン荘子 it が、初の映画音楽を担当。
2025 年 2 月、第 75 回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門 Kplus にて正式上映され、特別表彰を獲得した。また、今年で 6 回目を迎える日本最大級の芸術祭・瀬戸内国際芸術祭 2025 への参加も決定し、映画ながら現代アート作品のひとつとして芸術祭に参加する。なお、同芸術祭での映画の参加は本作が初となる。
本編の撮影は 2023 年の夏にオール小豆島ロケで実施され、小豆島特有の陽光や海と空に囲まれた絶好のロケーションが十二分に生かされている。予期せぬ出来事と出会う人生の幸福を、陽気なユーモアと想像力で描く、永久不滅のマスターピース爆誕!
ストーリー
海辺の町で交差する、子供たちの小さな冒険と大人たちの秘密と嘘。
人生は予測できない魔法で溢れている。
アーティスト移住支援をうたう、とある海辺の街。
のんきに暮らす 14 歳の美術部員・奏介(原田琥之佑)とその仲間たちは、夏休みにもかかわらず、演劇部に依頼された絵を描いたり、新聞部の取材を手伝ったりと毎日忙しい。
街には何やらあやしげな“アーティスト”たちがウロウロ。
そんな中、奏介たちにちょっと不思議な依頼が次々に飛び込んでくる。
ものづくりに夢中で自由奔放な子供たちと、秘密と嘘ばかりの大人たち。
果てなき想像力が乱反射する海辺で、すべての登場人物が愛おしく、
優しさとユーモアに満ちた、ちょっとおかしな人生讃歌。
横浜聡子監督コメント
この映画は劇的な出来事は起こりませんし社会問題を叫ぶ映画でもありません。何か素敵なことが起こるかもし
れないというささやかな予感を胸に、無邪気に作品を作り続ける若者たちの映画です。今回賞をいただけたの
は、そんな、目に見えない、言葉で表せない彼らの”予感”が伝わったからかもしれません。ジェネレーション
部門の審査員の皆さん、この作品を選んでくださり本当にありがとうございます。
私はこの作品の原作者である三好銀さんから、寛容さとユーモアを学びました。否定もせず肯定もせず、ただ人
の存在を丸ごと受け止める寛容さ、そしてユーモア。ユーモアは人を絶望や断絶から時に救ってくれます。ベル
リンの観客の皆さんは、この映画に散りばめられたユーモアを見てたくさん笑ってくれました。私はその瞬間が
一番幸せでした。ベルリンで聞いた笑い声と温かい拍手を支えにこれからしばらく生きていける気がします。観
客の皆さん、ありがとうございます。
監督プロフィール
1978 年、青森県出身。横浜の大学を卒業後、東京で1年ほど会社員をし、2002年に第6期映画美学校フィクションコース初等科に入学。2004年、同高等科卒業。卒業制作の短編『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』が 2006 年第2回 CO2 オープンコンペ部門最優秀賞受賞。CO2 からの助成金を元に長編1作目となる『ジャーマン+雨』を自主制作。翌 2007 年、同作で第3回 CO2 シネアスト大阪市長賞を受賞。自主制作映画としては異例の全国劇場公開となる。2008年、商業映画デビュー作『ウルトラミラクルラブストーリー』(出演:松山ケンイチ、麻生久美子)を監督、2009 年 6 月に全国公開。同年のトロント国際映画祭、バンクーバー国際映画祭他、多くの海外映画祭にて上映された。また同作にて主演の松山ケンイチが第64回毎日映画コンクール男優主演賞、第24回高崎映画祭最優秀主演男優賞を受賞、作品が第 19 回 TAMACINEMA FORUM 最優秀作品賞を受賞した。2016 年『俳優 亀岡拓次』(出演:安田顕、麻生久美子)が公開。2021 年に全編青森にて制作した『いとみち』では同県出身の駒井蓮をヒロインに迎え、第 16 回大阪アジアン映画祭にて観客賞とグランプリをダブル受賞。第 13 回 TAMA 映画賞特別賞、第36回山路ふみ子文化賞を受賞するなど、多数の賞を受賞した。日常にたゆたう「名もなき存在」を捉える鋭い洞察力とオリジナリティ溢れるユニークな表現は中毒性が高く、業界内外で熱狂的なファンを擁す。その他の作品に、短編映画『おばあちゃん女の子』(2010)『真夜中からとびうつれ』(2011)『りんごのうかの少女』(2013)『トチカコッケ』(2017)、テレビドラマ「バイプレイヤーズ 」シリーズ(2017〜18/TX)「ひとりキャンプで食って寝る」(2019/TX)「有村架純の撮休」(2020/WOWOW プライム)「季節のない街」(2023/Disney+)など。
アップリンク吉祥寺・アップリンク京都ほか全国劇場にて8月29日(金)より公開
監督・脚本:横浜聡子
出演:原田琥之佑、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春、蒼井旬、中須翔真、山﨑七海、新津ちせ、諏訪敦彦、村上淳、宮藤官九郎、坂井真紀
原作:三好銀『海辺へ行く道』シリーズ(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
製作:映画「海辺へ行く道」製作委員会
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025 映画『海辺へ行く道』製作委員会