「ガザからの声」Episode1『アハマドの物語』報道でも記録でもない。そこにいる一人の日記をめくるように。

「ガザからの声」Episode1『アハマドの物語』報道でも記録でもない。そこにいる一人の日記をめくるように。

2025-08-20 08:00:00

ガザの映像制作会社アレフ・マルチメディアとアップリンクのプロジェクト「ガザからの声」の第1弾。

監督を務めるのはアレフ・マルチメディアの創設者で、2024年10月4日公開の映画『忘れない、パレスチナの子どもたちを』をイギリスのマイケル・ウィンターボトム氏と共同監督したムハンマド・サウワーフ監督。

映画を配給し劇場公開するというスピードでは遅いという思いから、ガザで暮らすとある一人の、とある一日を映し、伝えてゆく企画だ。

第一弾の”とある一人”は、16歳の少年、アハマド・アル=ガルバン。彼は今から半年も経たない3月22日、イスラエル軍の砲撃により、両脚と指、そして双子の兄弟ムハンマドを失った。その彼の”とある一日”、砲撃から約2か月後の、5月21日。

映し出されるのは、アハマドの1日を誰かが記録したものというより、アハマドのその日の日記そのもののようだ。

それゆえ、スクリーンの向こう側、どこかに存在することは疑わないけれどはるか遠い場所としてではなく、まるではためくカーテンの向こう、窓の外での出来事のように感じられる。耳を傾けるべき事柄であるよりも先に、窓の外から聞こえてくる声それ自体がある。

アハマドが家族と暮らすのは、ガザ・イスラーム大学の跡地。かつて大学があった場所は2023年10月9日、イスラエル軍の爆撃により大破され更地となり、そこにキャンプが設置されている。キャンプの周りを、倒壊した建物が囲む。そういう街並みに、彼らは暮らしている。そこで生活を営む人びとがいる、その一点だけで、かろうじて街並みと呼べるような土地。

「そよ風すら彼らを傷つけそうで怖かった」。息子たちのことを母親はそう話す。ではなぜ彼らは、傷つくどころか死の危険がある場所に住みつづけるのか。「ガザはどんな時でも美しい」。自分たちが留まることで故郷を守るという矜持は、計り知れないにしろ。

第2弾は、「無名兵士公園」の避難民キャンプで生活するミュージシャン、アハマド・アブ=アムシャの7月12日が、10月に公開される予定だ。

(小川のえ)

イントロダクション

ニュースの向こうにある物語

ガザの映像制作会社アレフ・マルチメディアと東京の映画配給会社アップリンクによる共同プロジェクト『Voices from GAZA(ガザからの声)』が始動。本プロジェクトは、ガザに生きる人々の声を伝えることを目的としています。

断片的なニュース映像やSNSの短い動画では伝えきれない、ひとりひとりの物語を世界に届けます。本作は、ガザに拠点を置くアレフ・マルチメディアと、東京のアップリンクの共同制作によって進められます。現地での取材はアレフが担い、アップリンクが編集、配信、劇場公開を担当します。

映画館での劇場公開と同時に特設サイトで世界に向けて配信します。本プロジェクトは、ガザの映像制作チームの視点で捉えた映像によりガザの現状を継続して伝えるプロジェクトです。

この度公開されるエピソード1「アハマドの物語」は2025年5月21日、たった2か月半ほど前に撮影されたものです。

このように、ニュースより細かいガザの様子を、通常の映画公開よりも早いスピードで世界に発信する『ガザからの声』は、エピソード2の制作にすでに取り掛かっています。

ストーリー

Episode1『アハマドの物語』  撮影日: 2025年5月21日

ガザ北部、ベイト・ラヒア出身のアハマド・アル=ガルバンは3月22日のイスラエル軍の攻撃により一命を取り留めたが、両脚と指を失った。双子の兄ムハンマドと叔父、そして、6歳のいとこが命を落とした。

アハマドは、亡くなった兄と共にサーカス教室で学び将来パフォーマーになることを夢見ていた。

避難してきたキャンプは、かつてガザ・イスラーム大学があった場所。四六時中ドローンが頭の上を飛び交う避難民キャンプで一家は生活をしている。

ムハンマド・サウワーフ監督プロフィール

パレスチナ・ガザ出身の映像作家、プロデューサー、ジャーナリスト。ALEF Multimediaの創設者。16年以上の経験を持ち、携わった作品は30作品以上。
主な作品に、イギリスのマイケル・ウィンターボトム監督と共同制作した2021年のガザ攻撃を記録したドキュメンタリー『Eleven Days in May』(邦題『忘れない、パレスチナの子どもたちを』2024年、配給:アップリンク)がある。

ALEF Multimediaについて

パレスチナ・ガザを拠点とする映像制作会社。ドキュメンタリー映画、モーショングラフィックス、写真撮影など多様なメディア制作を専門にしている。
16年以上の実績があり、紛争や困難な環境下にある地域のリアルな人間の姿を高品質な映像で記録。作品は国際映画祭や映画館で上映され、数々の賞を受賞している。
BBC、アルジャジーラ、WHO、UNDPなどの国際機関やメディアとも協力し、視覚的な物語を通じて社会問題に光を当てる。

公式HP:https://alef.ps

アップリンク吉祥寺 アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開

特設ストリーミングサイト

2025年/50分/パレスチナ・日本/1:1.65/カラー

製作:アップリンク、アレフ・マルチメディア

プロデューサー:浅井隆、ムハンマド・サウワーフ

監督:ムハンマド・サウワーフ

撮影:イブラヒム・アル・ウトゥラ、サラ・アル・ハワ

編集:芝暢佑(劇場版)、長尾淳史(短縮版)

配給・宣伝:アップリンク

©UPLINK Co. & ALEF MULTIMEDIA

 

 

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