『真夏の果実』ひと夏の光と影に宿る、やさしい裏切り
不倫をきっかけに展開するラブストーリーと聞くと、どこか定型的な愛憎劇を想像しがちだが、『真夏の果実』はそうした先入観をやさしく裏切ってくれる。
舞台は山梨のぶどう畑。毎年冬になると東京へ出稼ぎに行く夫・設楽龍馬が不在の間、妻・あゆみは義母とふたり、静かに暮らしている。だがその静けさの裏には、満たされぬ心と触れられぬ愛が潜んでいた。
そんなあゆみの前に現れたのが、年下の営業マン・草壁。戸惑いながらも惹かれ合うふたりは、やがて一線を越える。一方、東京に出た龍馬も、かつての初恋相手・千尋と偶然再会し、揺れ動く心に抗えなくなる。
お互いが同時に「すれ違い」と「浮気」を経験することで、夫婦という関係の脆さと再生の可能性があぶり出されていく。
監督はいまおかしんじ。30年のキャリアを重ねた彼が今回描いたのは、セリフや物語の大きなうねりよりも、何気ないまなざしや躊躇の仕草、ぶどう畑に響く虫の声といった、細部に宿る感情の揺らぎだ。主演のあべみほは、主婦という役柄をそのまま身体に通して演じきり、日常に潜む欲望と孤独を瑞々しく体現する。彼女の存在感に寄り添うように、奥野瑛太演じる龍馬の不器用さも、どこか憎めず愛おしい。
誰かを裏切ることは、本当に悪なのか。愛し続ける努力と、愛されなくなる痛みの狭間で、人はどんな選択をすべきなのか。『真夏の果実』はそんな問いを、決して声高に語ることなく、ひと夏の終わりの光と影の中にそっと託してくる。ラストに残るのは、果実のように甘くて酸っぱい、でもどこか温かい余韻だ。
イントロダクション
いまおかしんじ監督最新作はあべみほ主演・奥野瑛太共演
不倫から始まるひと夏の赤裸々なラブストーリー
ブドウ農家を営む主人公・あゆみ役をチャーミングに演じるのはグラビア、レースクィーン、バラエティ、プロレス界のディーバなど様々なジャンルで活動してきたあべみほ。
共に農家を営むあゆみの夫・龍馬に『心平、』『碁盤斬り』『SHOGUN 将軍』『サヨナラのつづき』などに出演し近年活躍が目覚ましい奥野瑛太が扮する。
あゆみの浮気相手となる営業マン役に『十一人の賊軍』の佐野岳。龍馬の母親役に名女優・仁科亜季子。そのほか、東ちづる、小原徳子、中野マサアキ、丸純子と多彩なキャストが揃った。
監督を務めるのは監督デビュー30 年を迎えるいまおかしんじ。近年では映画のみならず TV ドラマへも進出し、また脚本家としても『化け猫あんずちゃん』をはじめ注目作が後を絶たない。
脚本家・松本稔の人情味あふれるシナリオといまおか監督の優しいユーモアに満ちた演出で綴られる、愛を見失いそうなふたりの、甘くて酸っぱいひと夏の物語。
ストーリー
ぶどう農家を営む設楽龍馬は毎年冬になると家と畑を妻に任せて東京に出稼ぎに行く。
龍馬のいない季節、妻のあゆみは義母と二人暮らしで、たまに龍馬に電話をしてもいつもぶっきらぼうに切られてしまう。
そんな龍馬に東京で幼なじみの千尋との偶然の再会があった。昔好きだった千尋との再会に浮足立つ龍馬。一方であゆみにも心惹かれる年下の男性・草壁が現れた。あゆみと草壁は急接近し、ある時ふたりは一線を越えてしまい...
いまおかしんじ監督コメント
気がついたら引き込まれて見ていた。あべみほは実に楽しそうにのびのびやってるし、奥野瑛太は全力でいろいろぶっ込んでくる。みんな好き放題やっていて、でも全然そんなことでは壊れなくて、全部が躍動しまくっていた。「奇跡や!奇跡!」オレもアホみたいに一緒に踊りながら撮りました。みなさんよろしくお願いします。
いまおかしんじ監督プロフィール
1965 年生まれ、大阪府出身。
1990 年に獅子プロダクションに入社し、瀬々敬久、神代辰⺒らの助監督を経て1995 年『彗星まち』で監督デビュー。
2011 年にはクリストファー・ドイルを撮影にむかえた日独合作映画『UNDERWATER LOVE おんなの河童』を発表。代表作に『たまもの』『島田陽子に逢い
たい』『れいこいるか』など。
2023 年は『道で拾った女』『天国か、ここ?』など、劇場映画5作の公開を果たし、ミニシアター系映画のファンに温かく迎えられた。また自身初となる TV ドラマ『死神バーバー』を監督。
脚本家としても活動しており、『苦役列車』『華魂』『銀平町シネマブルース』『まなみ 100%』『化け猫あんずちゃん』などがあ
る。
アップリンク京都ほか上映中
監督:いまおかしんじ
脚本:松本 稔
企画:利倉 亮 郷 龍二 プロデューサー:江尻健司 アシスタントプロデューサー:竹内宏子
撮影:田宮健彦 録音:飴田秀彦 植田 中 編集:蛭田智子 助監督:伊藤一平
ヘアメイク:刈茅樹里 衣裳:藤田賢美 制作:井口光穂 インティマシー・シーン監修:佐倉 萌写真:三宅英文 音楽:宇波 拓 整音・音響効果:藤本 淳
キャスティング協力:関根浩一 営業統括:堤 亜希彦
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト配給協力:ミカタ・エンタテインメント
制作:レジェンド・ピクチャーズ
2025 年/85 分/ステレオ/R-15 作品
©2025「真夏の果実」製作委員会