『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 4Kリマスター版』現代ゾンビの定義を確立した金字塔が劇場初公開

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 4Kリマスター版』現代ゾンビの定義を確立した金字塔が劇場初公開

2022-06-15 18:19:00

現代ゾンビ映画の原点・元祖にして、日本では劇場未公開であった金字塔、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)。そんな古典的名作が、50年以上の時を経て映像からサウンドトラックに至るまでジョージ・A・ロメロ監督自らによって監修され、4Kデジタルレストアにてついにスクリーンに蘇る。

今となっては一つのジャンルとして確立されている”ゾンビ映画”。ゾンビと聞いて真っ先に私たちが思い浮かべるのは、必ずと言っていい程以下の条件を満たしているものではないだろうか。

① 人肉を喰らう。
② 喰われた人間もゾンビ化する。
③ 倒す方法は脳を破壊するしかない。

この定義が誕生したのも、他でもない本作からなのである。いかにこの作品が歴史的にも重要な立ち位置にあるかがお分かりいただけるだろう。
しかし、果たしてこれはただの”生きた屍が人間を襲うホラー映画”なのだろうか?

 

ジョージ・A・ロメロ監督

本作の生みの親であるジョージ・A・ロメロ監督は、1940年ニューヨーク出身の映画監督であり、ホラー映画の巨匠とも言える人物である。彼は、友人らと立ち上げた製作会社、”Image Ten”にて低予算で本作品を完成させ、その後も『ゾンビ』(78)や『死霊のえじき』(85)といったゾンビ映画を次々に世に送り出し、現代ゾンビ映画の礎を築いた。

本作の中で印象的なのは、やはり人間同士の争いである。兄が襲われて茫然自失なバーバラにベンは痺れを切らし、一方でベンは非協力的なハリーとも激しく対立している。そんなハリーと妻の間にも不穏な空気が漂っている。

ゾンビに周りを取り囲まれ、命の危険が迫っているのにも関わらず、身勝手な理由でお互いを傷付け合う登場人物たちの姿は、私たちの目にあまりにも滑稽に映る。

衝撃的かつ秀逸なラストも、この監督の批判的思考が集約されたものと言って良いのではないだろうか。

もっと言うと、死んだ人間がゾンビとなって生きている人間を襲う、という構造そのものに、哀れな人間を嘲笑するかのような皮肉の意図が込められているのかもしれない。

先月行われた第75回カンヌ国際映画祭では、『カメラを止めるな!』(17)のフランス版リメイクである、『キャメラを止めるな!』がオープニング作品として上映された。その他にも、ゲームタイトルとして愛され続ける「バイオハザード」や、同じくカンヌで喝采を浴びた『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)、10年以上続く人気ドラマシリーズである『ウォーキング・デッド』(10~)に至るまで、あらゆる作品の中にゾンビの要素が溶け込んでいる。

そして、これらの作品でも当然のように描かれている、「ゾンビが人肉を喰う」「喰われた人間もゾンビ化する」といった描写は、この『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)から始まったのだ。

ロメロ監督が遺した現代ゾンビのDNAは、監督が亡くなった今もなお連綿と受け継がれ、これから生まれてくる作品の中でも生き続けていくのである。

2017年に惜しまれながらもこの世を去った監督であるが、インターネット上には彼が作品について語った記録が残されており、その中から一つを以下に取り上げる。


『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)について語るロメロ監督

ロメロ監督:「問題なのは、異常なことが起こっているのに、人々が問題に向き合わずに、上の階や下の階がどうこうで、誰がボスなのかといった彼ら自身の問題について議論していることだ。そして、それこそが私の全てのゾンビ映画が描こうとしてきたことだ。」

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ストーリー

父の墓参りにやってきたバーバラと兄のジョニーに、突然よみがえった死体が襲い掛かる。ジョニーは抵抗するも殺害され、バーバラは恐怖と悲しみに襲われながら近くの民家に逃げ込む。彼女に続けて飛び込んできたのは、黒人青年のベン。地下室には、若いカップルのトムとジュディ、クーパー夫妻と大きな傷を負った娘のカレンが隠れていた。外部との連絡も取れないまま、民家はゾンビの群れに取り囲まれていく。ベンはゾンビの侵入を食いとめながら脱出の方法を探るが、クーパー夫妻の夫ハリーは救助が来るまで地下室に隠れていることに強くこだわり、対立を深める。容赦なく押し寄せてくるゾンビの群れ。彼らは生き延びることができるのか……?



予告編

 

公式サイト

6月17日(金) シネマート新宿、アップリンク京都ほか全国順次公開

原案・脚本・監督:ジョージ・A・ロメロ
共同脚本:ジョン・A・ルッソ
製作:カール・ハードマン、ラッセル・ストライナー
撮影・編集:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ウィリアム・ルース、フレッド・シュタイナー
特殊効果:トニー・パンタネラ、レジス・サーヴィンスキー
出演:デュアン・ジョーンズ、マリリン・イーストマン、ジョージ・コサナ、ジュディス・オーディア、カール・ハードマン、キース・ウェイン、ジュディス・リドリー、ラッセル・ストライナー、チャールズ・クレイグ、ビル・カーディル

1968年/アメリカ/96分/モノクロ/スタンダード/モノラル/原題:NIGHT OF THE LIVING DEAD

提供:是空、ハピネット・メディアマーケティング 配給:アンプラグド

4K restoration © 2017 Image Ten, Inc. All rights reserved.“NIGHT OF THE LIVING DEAD was restored by the Museum of Modern Art and The Film Foundation, with funding provided by the George Lucas Family Foundation and the Celeste Bartos Preservation Fund.