『金子差入店』新鋭監督古川豪による魂のオリジナル物語
『金子差入店』新鋭監督古川豪による魂のオリジナル物語。観終わったあと、心に残るのは人の「やさしさ」だった。
拘置所の近くで小さな「差入店」の看板を見つけたとき、当時助監督だった古川豪の心は揺さぶられた。
「なぜ面会者が自分で差し入れせず、代行業者が?」――その素朴な疑問が、11年かけて磨き上げた完全オリジナル脚本の種となった。
刑務所や拘置所に「小さな希望」を届ける「差入屋」という知られざる職業。古川監督の長編初監督作品は、この出会いから生まれた心の物語だ。
坂の途中に佇む「金子差入店」。店主・金子真司(丸山隆平)は、過去の傷害罪を背負い、妻・美和子(真木よう子)、息子・和真(三浦綺羅)、伯父・星田(寺尾聰)と新たな人生を歩む。だが、息子の幼馴染・花梨が無関係の男・小島(北村匠海)に殺され、店に届いたのはその犯人の母親からの差入依頼。プロとして仕事をこなそうとする金子だが、小島の常軌を逸した言動に怒りと疑問が燃え上がる。さらに、母親を殺した男との面会を求める女子高生・佐知(川口真奈)との出会いが、金子の過去と家族の絆を揺さぶっていく。
古川監督が我が子を抱いた瞬間の「何があっても守り続ける」という決意が、この物語の魂となったという。作品に繰り返し現れる割れた植木鉢が印象的だ。そこには、監督の深い想いが宿る。植木鉢は、世間の冷たい視線や壊れた心を象徴し、そこに咲く白いデイジーは「平和」という花言葉とともに、どんな傷の中にも希望が芽吹くことを示す。監督は、時期外れで手に入らないデイジーを撮影現場の建物脇で育てさせた。「映画に人生を救われた私にとって、監督デビューは適当では許されない。花一輪まで魂を込める」と語るそのこだわりは、観る者の胸に静かな感動を刻む。
罪と赦し、家族の絆、知られざる職業の光と影。古川監督の初監督ならではの情熱が、11年の歳月を経て結実した本作は、丸山隆平の新境地の迫真の演技、真木よう子、寺尾聰、北村匠海のチャレンジングな演技、名取裕子、新星・川口真奈の真剣勝負と響き合う。「臭いものに蓋せず、目の前のことに真剣に向き合いたい」と願う監督の心が、観客に希望の花を差し入れる。
誰も観たことのない丁寧に紡がれた物語が、初監督の魂とともに咲き誇る。
イントロダクション
知っていますか?「差入屋」という仕事があることを。刑務所や拘置所に収容された人への差入には、厳しい審査や検閲がある。そこで、登場するのがルールを熟知した差入屋だ。また、様々な事情から面会に行くことができない人たちに代わって、面会室へ出向くこともある。そんな差入店を営む家族の絆と一家が巻き込まれる事件を描く映画が誕生した。
差入店の店主を務める主人公の金子には、『泥棒役者』以来8年ぶりの主役を演じる丸山隆平。これまでのイメージとは一線を画す迫真の演技で、情感豊かに体現。共演は、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰。監督はオリジナル脚本も手掛けた期待の新鋭、古川豪。主題歌は古川監督が助監督を務めた『東京リベンジャーズ』シリーズで結んだ友情からオファーされたSUPER BEAVER「まなざし」。熱い想いが込められた歌詞に心が響く。
誰も見たことのない設定で、人間の可笑しさと切なさ、ダークサイドから希望に満ちた光までを追いかける感動のヒューマンサスペンスが誕生した。
ストーリー
刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する「差入屋」。金子真司は一家で「差入店」を営んでいた。ある日、息子の幼馴染の女の子が殺害される凄惨な事件が発生。彼女の死にショックを受ける一家だったが、犯人の母親が差入をしたいと尋ねてくる。 差入屋として犯人と向き合いながらも、日に日に疑問と怒りが募る金子。そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う。彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を求めていた。2つの事件の謎と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、家族の絆を揺るがしていく―
古川豪監督インタビュー
──実際に差入店を目にされたことから、本作の物語が生まれたそうですね。
助監督として参加した作品を撮影していた時、拘置所の近くにある差入店が目に留まりました。面会に行く人が自分で用意した物を差し入れるのだと思っていたので、なぜ代行業者が必要なのかと疑問を持ったのが始まりです。いろいろ調べていくうちに、世の中には知られていないけれど、絶対になくすことが出来ない職業だと思いました。僕が助監督を務めた『おくりびと』で、葬儀屋とは別に納棺士という職業があることに感銘を受けた過去もあり、映画にしたいと脚本を書き出しました。
──キャスティングについて教えてください。
僕自身が映画に人生を賭けているので、真剣勝負で受けてくれる人でなければ絶対に嫌だというのが、まずありました。戦う姿を見せてくれる人たちに、出てほしいと思いました。丸山隆平さんは、プロデューサーの紹介でたまたまお会いして、役者として新たな挑戦をしたいという胸の内をお聞きしたのですが、その時のお顔がすごく素敵で、一緒に仕事をしたいとずっと思っていました。真剣勝負のステージに立ちたいと言われているような気がしたんです。だから、プロデューサーから金子役に推薦された時は、是非お願いしたいと。ただ、グループの活動もあってお忙しいのはわかっていたの
で、まずは脚本だけでもと送ったのですが、非常に早く「こういう役を演じたかった」というお返事をいただきました。真木よう子さんは、今回初めてお会いしたのですが、作品を観て確実に戦ってくれる人だと認識していたので、候補に出された時には喜んでという想いでした。
──撮影前に、丸山さんとはどんなお話をされましたか?
丸山さんとはクランクイン前に何度もお会いして、お互いの生い立ちや人生観など、たくさん話をさせていただいたので、よく理解し合ってから撮影に入ることができました。繊細で凝り性、その上勉強家で、非常に尊敬できる人です。丸山さんは金子には僕が投影されていると思われていたので、僕を観察することが役作りの一つだったようです。
──真木さんとはどんなお話をされましたか?
美和子は場面によって、気弱になったり強気になったり、気持ちの振り幅が大きな女性です。彼女の過去に何があったから、そのような性質になったのか。設定表を書いて真木さんに渡し、明日のあなたと今のあなたは違う、それが人間というものですよねというようなお話をしました。
──北村さんの役柄は特に難しかったのではないでしょうか?
北村さんには、「音楽と出会わなかったトム・ヨークをイメージしてください」と伝えました。小島の右目は、幼少期から手術を繰り返したというトム・ヨークのエピソードをもらいました。
──今の時代に、どんな作品になったと感じてらっしゃいますか?
臭いものにふたすらせず、その場から立ち去るような世の中になってしまったと感じています。でも、たとえ世の中がどう変わろうと、僕たちは心臓が止まるその日までは、何があっても目の前のことに真伨に向き合って、生きていかなければなりません。ならば、自分とは立場や考え方が異なる人たちを責めるようなことに時間を使わず、明るく「ただいま」と家族に言えるように、まさにSUPER BEAVERの歌にあるように「強くやさしくなりたい」。観終わった方の気持ちに、少しだけでもそんな変化が起こることを願っています。
古川豪監督プロフィール
1976年生まれ、京都府出身。松竹シナリオ研究所卒業。2003年、名取裕子主演の「早乙女千春の添乗報告書14 奥飛騨・下呂湯けむりツアー殺人事件」に制作進行見習いとして参加。翌年、『釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?』(04)でフリー助監督に転身、『ゼブラーマン』シリーズ(03・10)、『おくりびと』(08)、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21・23)など数々の作品に帯同する。2010年、オムニバスショートフィルム『dance?』で監督デビュー。TVドラマやショートフィルム、SUPER BEAVERのMVなどの演出・脚本・監督を経て、本作が劇場用長編映画の監督第1作となる。
アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰製作:英田 理志 小山洋平 中村浩子 鶴丸智康
プロデューサー:稲葉尚人 成瀬保則 平岡祐子 共同プロデューサー:石田雄治
企画協力:川口真五
製作:REMOW 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ ストームレーベルズ ハピネット・メディアマーケティング
制作プロダクション:KADOKAWA
配給:ショウゲート
©2025「金子差入店」製作委員会