『ハッピー☆エンド』あなたが末期がんという死病でなくとも死を俯瞰して捉え直す機会となる映画

『ハッピー☆エンド』あなたが末期がんという死病でなくとも死を俯瞰して捉え直す機会となる映画

2025-04-16 08:00:00

『ハッピー☆エンド』では5組のがん患者とその家族が描かれる。
映画の中では2018年にがんで亡くなった樹木希林さんの講演模様の記録映像が挟み込まれこう語っている。
「皆さんは死に顔というのはあまり見たことないでしょ。昔は世代を超えて一緒に住んでたから、さっきまでそこにいたおばあちゃんがぽてっと亡くなり口きかなくなったりして、死というものが日常にあったので、死が怖くなかったのよ」。

オオタヴィン監督が描く『ハッピー☆エンド』には、5人のがん患者とその家族の生きる輝きがスクリーンいっぱいに映し出されている。こんなに死を捉えた映画はないのではないだろうか。

樹木希林さんは自身も全身がんになったが、抗がん剤治療を行わなかった。
「がんという死病を患い、自分の覚悟を持てるようになった。毎日一度死んでみるといった達観した視点で生活を見ることができるようになった」と語る。

在宅緩和ケアで200人以上の末期がん患者を看取った経験のある、萬田緑平先生のドキュメンタリー。

おそらくこの映画は、観る世代によって感じ方が大きく変わるだろう。映画で描かれる5人の死を、患者や家族に感情移入してを感情を揺さぶられる。しかし、自身や家族の死以外はあくまで他人の死であり、本作では「死」を客観的にスクリーンを通して俯瞰して観ることができる。
余命宣告を受けた末期がん患者にとっては、本人、家族とも「在宅緩和ケア」による死をイメージすることができ選択の一つとなるだろう。

日本人の平均寿命は70年前の1955年は男性63歳、女性68歳。2023年の平均寿命は、男性81歳、女性87歳。本作の末期がん患者の皆さんは、70年前の平均寿命より長生きして命を全うされている。当たり前だが、がんという死病でなくとも人は皆必ず死ぬのである。

60歳以上でまだ元気なシニアにとっては、死病でなくとも必ず訪れる死を俯瞰して観る機会を与えてくれ、どこでどうやって死ぬかをシミュレーションできる映画と言えるだろう。(TA)

イントロダクション

萬田緑平医師と5つの家族が教えてくれた「在宅緩和ケア」という選択肢。

希望あふれるハートフル・ドキュメンタリー。

・・・

『いただきます』『夢みる小学校』で教育、農業、食育を描いてきたオオタヴィン監督が、本作では医療をテーマに生きる喜びを問い直す。

ナレーションは、佐藤浩市と室井滋の希少なコラボレーションが実現。また、2018年に亡くなった樹木希林の講演会時の映像を使用。エンディング曲には、明るく前を向いて過ごせるような気持ちになれる、ウルフルズの「笑えればV」が起用された。

在宅ケア医療を選んだ患者たちは、住み慣れた我が家で「生き抜く」ことを選択する。

描かれるのは最期まで精一杯生きる、その輝き。感謝の言葉を贈りあう家族の絆の尊さだ。

がんに悩まされる現代人に勇気をもたらす在宅医療に密着したハートフル・ドキュメンタリー。あなたの人生をハッピーエンドにするためのヒントがここにある。

ストーリー

在宅緩和ケア医師の萬田緑平先生の診療所は、いつも笑い声が絶えない。

「在宅緩和ケア」。それは身体と心の苦痛をやわらげ、自分らしい生活を送れる希望の医療だ。

過酷ながんの延命治療で苦しむことなく、痛みのない日常生活を続けられる「在宅緩和ケアという新たな選択肢」は、病院の面会が禁止されたコロナ禍を経て、さらに大きな注目を集めている。

本作の患者たちは、末期がんで余命宣告され、病院での治療をやめて自宅で過ごす人々。

在宅ケアで 2000人以上を看取った経験のある萬田緑平先生の適切な指導のもと、薬と家族の力で、時にはお酒を嗜んだり、食べたいものを食べたり、ゴルフをしたり、旅行に行ったり、ペットと過ごしたり、そして自分自身のお葬式やお墓のデザインまで考えながら、自然体で最期まで生き抜く姿が映し出されている。

同時に、自宅で一緒に過ごす家族たちにとっては気持ちの整理をする時期となり、納得してお別れをしている様子が伺える。誰もが迎える死について、見送られる側も見送る側もひとつの理想のかたちを目にする映画と言えるだろう。

オオタヴィン監督メッセージ

この映画は、「病院の医療」を否定して「在宅緩和ケアを勧める映画」ではありません。

「病院医療」以外の「在宅緩和ケアという選択肢」があることを知っていただくための映画です。

こうした情報を知って初めて私たちは自分事として、「病院」か「在宅」かの選択を冷静に判断できるようになるのではないでしょうか。

「在宅緩和ケアという選択肢」を、5つの家族を通してリアルにお伝えする。

この一点だけでも本作を作った社会的な意義があると思います。

この映画は「涙を誘う闘病映画」や「悲しい終活映画」の対極にある映画だと思っています。

歩くこと。

笑うこと。

生きているということ。

何気ない日常の輝きを、患者の目線で再体験していただければうれしいです。

オオタヴィン監督プロフィール

監督、撮影、編集、デザインなど映像制作のすべてをひとりで兼任する。医食同源・食養生をテーマにした『いただきます1』を初監督。劇場公開7年後の今も全国で1000回を超える上映会が続くロングセラー映画となった。有機農業と発酵をテーマにした『いただきます2 ここは、発酵の楽園』劇場公開。自由教育の一年間を追った『夢みる小学校』は全国80映画館で公開。延べ15万人動員したヒット作となり、日本映画批評家大賞ドキュメンタリー部門を受賞。公立学校にフォーカスした『夢みる校長先生』、公立学校給食をテーマにした『夢みる給食』など精力的に毎年劇場公開を続けている。夢みる三部作を完成させた。

アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

キャステイング:木暮 こずえ

整音:音響ハウス 中田 仁

アニメーション:萬田 翠

配給:新日本映画社 宣伝:高木 真寿美

ポスターデザイン:大寿美 トモエ

編集・撮影協力:目黒 秀綺

ホームページ制作:ゴーゴーデザイン

まほろばスタジオ広報

長谷川 悦子 三浦 喜美子 八幡 名子

2025年/日本/85分/カラー/16:9  

©まほろばスタジオ