『エミリア・ペレス』その圧倒的虚構感がこれぞ映画だということを知らしめてくれる。大々傑作!
『 エミリア・ペレス』ジャック・・オーディアール監督は、アカデミー賞には12部門、13ノミネートされ、結果オスカーを受賞したのは、弁護士リタを演じたゾーイ・サルダナが助演女優賞を獲得、また歌曲賞も受賞した。
メキシコの麻薬カルテルのボスが性適合手術で女性になるという奇想天外な設定をミュージカル仕立てで描いていく。麻薬王マニタスと性別移行したエミリアを演じるのは、トランスジェンダーのカルラ・ソフィア・ガスコン。
日本的な「侘び寂び」といった感性からは数億光年の距離がある豪華絢爛、過剰で派手な表現世界だ。好みがはっきり分かれるだろう。サスペンス、ミュージカル、コメディ、ヒューマンドラマと全てがごった煮となった本作は、大阪のおばちゃんを1万人と仁義なき戦いのヤクザを1万人集めれば太刀打ちできそうではある。
この例えがわかる人には、本作は、大々傑作だ。
本作の制作会社の一つに2023年に設立され、アート映画市場に参入したサンローラン・プロダクションズが参加。サンローランは、アーカイブ衣装を提供し、クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロがサンローラン芸術衣装を監修。ラグジュアリー・ブランドとメキシコの麻薬王の世界、メキシコの貧民街へからハイソなパーティ会場へと一気に駆け上がるシーンがジェットコースターのように繰り返されるが、両極端には、共通するものがある。人が生きるエネルギーを感じることができれば、見た目は関係ない。同じだ。トランスジェンダー麻薬王の自分探し物語に最後は涙する。
本作のようなミュージカル映画は絶対に映画館で観なければ作品の本質は伝わらない。
シリアスなセリフを喋っていた俳優が突然歌い出す、これが苦手な人はいるだろうが、その圧倒的虚構感がこれぞ映画だということを知らしめてくれる。
映像に音楽が重なり、人の心を芯から動かす「映画の力」が最大限に発揮された映画が『エミリア・ペレス』だ。
ぜひ映画館で鑑賞してほしい。(TA)
イントロダクション
本年度ゴールデングローブ賞では最多4部門受賞、アカデミー賞®では作品賞、監督賞を含む最多12部門で13ノミネートを果たすなど、今この時も各国の観客に衝撃と感動を轟かせているアカデミー賞®最有力作品が、ついに日本にも最大風速の嵐を巻き起こす!
出演は、ハリウッド超大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のゾーイ・サルダナ、トランスジェンダー女優初のアカデミー賞®主演女優賞受賞が期待されるカルラ・ソフィア・ガスコン、全米の若者から絶大な人気を誇るセレーナ・ゴメスら。女優たちの圧巻の演技はカンヌ国際映画祭を沸かせ、アンサンブルで女優賞を受賞。大注目のサンローラン プロダクション制作にも期待が高まる。
フランスの名匠ジャック・オーディアール監督が破天荒なストーリーをかつてない世界観で描く、ジャンルを超えた異色のミュージカル・エンターテインメントがここに!
ストーリー
リタ・モラ・カストロ(ゾーイ・サルダナ)は優秀な弁護士だっ たが、その能力をボスに利用され心をすり減らす毎日を送って いる。明らかに罪を犯した男たちが、金の力で裁判を動かし無罪放免される現実にも怒りを募らせていた。
そんなリタに、メキシコ全土を恐怖に陥れる麻薬カルテルの冷 酷なリーダー、マニタス・デル・モンテ(カルラ・ソフィア・ガ スコン)から驚くべき依頼が舞い込む。莫大な謝礼と引き換え に、「女性としての新たな人生を極秘に用意してほしい」というのだ。
リタは、テルアビブで名医を見つけ「多くを失う ことはわかっているが、自分らしく生きたい」と訴えるマニタ スの強い意志を確認した医師は、性別適合手術*を引き受ける。
マニタスの手術は秘密裡 に成功し、「エミリア・ペレス」としての新たな人生が始まる。
それから 4 年後、リタもまたロンドンで新しい人生を歩んでいた。ある夜、仕事関係の会食で、一人の女性に声を かけられるリタ。最初は気づかなかったが、彼女こそがエミリアだった。リタは最後の目撃者である自分を消しに 来たのではないかと疑うが、エミリアから「頼みがある」と持ち掛けられる。子供たちが恋しくて仕方ないから、メ キシコに連れ戻してほしいというのだ──。
ジャック・オーディアール監督インタビュー
――始まりはオペラのアイデアだったそうですが、その前提に基づいて音楽担当を探し始めたのですか?
そうだね。音楽好きのプロデューサーの友人から、クレマン・デュコルのことを教えてもらって、会ってみたんだ。彼の仲間のカミーユもすぐに作詞家として参加してくれた。トマ・ビデガンを含む私たち 4 人で、パリ郊外の家に こもって制作を始めたんだ。2020年の春のことだった。
――オペラの台本がいつ映画の脚本に変わったのですか?
小説の登場人物を変更し始めたときだね。
――主人公がタミル語を話す『ディーパンの闘い』(15)、全編英語で撮影された『ゴールデン・リバー』(18)に続き、なぜ再び外国語で制作したいと思ったのですか?
フランス語だと文法や単語の選び方、句読点など、ほとんど意味がないような細部に注目しがちだ。代わりに、あまり得意ではない、あるいはほとんど話せない言語で制作を行うとき、映画のセリフと私とのつながりは完全に音楽的なものになるんだ。
ジャック・オーディアール監督プロフィール
1952年、フランス、パリ生まれ。父親は脚本家で、叔父はプロデューサーという映画一家に育つ。大学で文学と哲学を専攻した後、編集技師として映画界に携わるようになる。その後、1981年から脚本家としての活動を開始し、1994年に『天使が隣で眠る夜』で映画監督デビュー。同作でセザール賞を3部門受賞し、続く『つつましき詐欺師』(96)でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した。カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した『預言者』 (09)、同じくカンヌでパルム・ドールを受賞した『ディーパンの闘い』(15)、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた『ゴールデン・リバー』(18)などがある。
アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開
監督・脚本:ジャック・オーディアール『君と歩く世界』『ゴールデン・リバー』『パリ 13 区』
出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス
制作:サンローラン プロダクション by アンソニー・ヴァカレロ
配給:ギャガ
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