『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』またのタイトルをつけるとすれば『女子高生リリアン、シビル・ウォーの世界を行く』

『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』またのタイトルをつけるとすれば『女子高生リリアン、シビル・ウォーの世界を行く』

2025-03-11 08:00:00

予告編の最後のカット 、主役の高校タリア・ライダーが軽やかにカメラに向かって歩いて来るその笑顔を見ると本作はガーリー度100%の映画かと思うが、それだけではない様々な知識を動員しなくては読みきれない仕掛けがある作品だ。そこは邦題の方が原題よりも的確に本作を表しているだろう。
原題『The Sweet East 』、邦題『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』。
またのタイトルをつけるとすれば『女子高生リリアン、シビル・ウォーの世界を行く』だろうか。

監督のショーン・プライス・ウイリアムズが企画を思いついたのは脚本家のニック・ピンカートンと一緒に電車に乗っていたとき、いかにもお洒落な若者たちを目にし、まるで別の惑星からの訪問者のように感じた時だという。
脚本の執筆が始められたのは第一期トランプ政権の時。陰謀論が渦巻き政治的思考で分断されたアメリカをサウスカロライナから東海岸をスイートに旅するリリアン。

各地でリリアンが遭遇する人々や事象のバックグラウンドをアメリカの観客はふむふむと頷きニヤッとしながら観るのだろうが、日本の観客は映画を観終わった後パンフを読んでもらうとして、まずはリリアン視点で本作を楽しんでみてはどうだろうか。

私に関わって来るあんたらの事はよくわからないけど私は自由に生きるよ、自由に映画を観るよというスタンスで。

SNSを見ていると日本もアメリカに似てきており、まさに不思議の国を生ている事を実感する時代に生まれた作品。(TA)

リリアンは我々のアリスであり、アメリカは暗い鏡のワンダーランドだ 。
( Daily Telegraph (UK) )

 

イントロダクション

鬼才っぷりを放ちまくる!

NYインディペンデント映画シーンを牽引してきた撮影監督ショーン・プライス・ウィリアムズ衝撃の監督デビュー。

第76回カンヌ国際映画祭監督週間に出品され、そのクールな映像スタイルと奇妙でアイロニカルに溢れた物語の構築で話題となった野心作がついに日本公開。

監督は、NYインディペンデント映画シーンの鬼才ショーン・プライス・ウィリアムズ。サフディ兄弟監督『神さまなんかくそくらえ』、『グッドタイム』などの撮影監督としてインディーズ映画シーンを支えてきた。

また福永壮志監督『アイヌモシリ』や遠藤麻衣子監督『TOKYO TELEPATH 2020』など日本人監督ともいくつかコラボレーションしている。

長編・短編映画・TVシリーズ・ミュージックビデオなど120本以上の作品を撮影してきた彼の監督デビューとなる本作でも、全編16mmフィルムで撮影し、被写体に迫る鋭いリアリティとラフでありながら味わい深いカメラワークを遺憾なく発揮している。

ストーリー

サウスカロライナ州の高校3年生リリアンは、彼氏のトロイ、親友のテッサ、何かとトロイにちょっかいを出してくるアナベルたち同級生と、修学旅行でワシントンD.C.を訪れている。

はしゃぐクラスメイトを、ひとり冷めた目で眺めている、どこか物憂げなリリアン。

夜、皆で抜け出して行ったカラオケバーで、陰謀論に憑りつかれた若い男による銃乱射事件に巻き込まれてしまう。

その場にいたド派手なパンク・ファッションのケイレブに導かれ、店のトイレに逃げ込むと、大きな鏡の裏に“秘密の扉”があった。

それは地下通路へと繋がっていた・・・。

ショーン・プライス・ウィリアムズ監督メッセージ

『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』は、アメリカの空に放たれたフレア(発光弾)のような作品です。アメリカがこの映画を生み出しました。

私たちは、自分たちの故郷に関連する何かを作りたかったのです。実際、アメリカは古い国ですが、その背中は力強く、筋肉はたくましく、関節はしなやかです。私たちがこの先、どこへ向かうのか、ワクワクしませんか?

私たちは深刻に捉えすぎているのではないでしょうか。

本作は、アメリカ映画史への言及により、独自の意義を示唆しています。

私たちは愛国者であり、アメリカは個性と色彩に富んだ国なのです。

物語のヒロインはリリアン。彼女は私たちの国のように、賢明でありながらも世間知らずに見えることがあります。

彼女はまだ自分の道を模索している若い女性なのか? それとも、最も早く立憲民主主義が確立された国のように、すっかり成熟しているのだろうか?これは成長を描いたロードムービーなのか? それとも、自分が誰なのか100%分からないまま、自分を貫いていく物語なのか?

重要なのは、確信が持てないということ。なぜなら、確信によって足元をすくわれるからです。

ショーン・プライム・ウィリアムズ監督プロフィール

1977年生まれ。アメリカ東部のデラウェア州ウィルミントンで生まれ育つ。ウィルミントンの近郊は本作の主要な舞台にもなっている。数本の短編とジャン=マヌエル・フェルナンデスとの共同監督作品『Eyes Find Eyes』(11)を経て、本作で長編監督デビュー。インディペンデント映画界を代表する撮影監督として、20年を超えるキャリアを築いてきた。その間に撮影した長編映画は約60本。さらに50本の短編と7本のシリーズもの、数本のミュージックビデオという驚異的な仕事量を誇っている。最新作は現在公開中の『セカンドステップ 僕らの人生第2章』(24年12月20日 日本公開)や、12月に配信されたBLACKPINK ロゼのミュージックビデオ「toxic till the end」(24)などを手掛けている。

アップリンク吉祥寺 アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

監督・撮影:ショーン・プライス・ウィリアムズ

脚本:ニック・ピンカートン

製作:クレイグ・ブッタ、アレックス・ココ、アレックス・ロス・ペリー

編集:ステファン・グレヴィッツ プロダクション・デザイン:マデリン・サドウスキー

オリジナル音楽:ポール・グリムスタッド サウンドデザイン:ディーン・ハーリー

2023年|アメリカ映画|英語|104 分|16:9 ビスタ|5.1ch|原題:The Sweet East|R-15+

提供:ニューセレクト

配給:アルバトロス・フィルム

© 2023 THE SWEET EAST PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.