『早乙女カナコの場合は』橋本愛が「ワセジョ」に?!原作は柚木麻子の小説『早稲女、女、男』。

『早乙女カナコの場合は』橋本愛が「ワセジョ」に?!原作は柚木麻子の小説『早稲女、女、男』。

2025-03-13 08:00:00

原作は、柚木麻子の小説『早稲女、女、男』。早稲田大学の女子学生を揶揄する、実は筆者にも耳の痛い単語、「ワセジョ」(なぜかこれはカタカナで表す方がしっくりくると思っている)。その言い回しにぴったりな、生真面目ゆえの不器用、そして男まさりな主人公・早乙女カナコを演じるのは、橋本愛。ミスセブンティーン出身、圧倒的な目鼻立ちの美しさでモデル、女優と活躍する彼女が、ワセジョに扮することなんて可能なのだろうか…と、原作者の柚木氏もきっと思ったことだろう。

しかし、今年で30歳を迎える橋本愛は、大学進学したばかりのカナコから、就活生、内定先で研修中のカナコ、そして入社6年が経ち立派な編集者へと成長したカナコまで、10年の間のどの年のカナコも、すばらしく演じている。

プライベートでは読書家で、雑誌「週刊文春」に連載「私の読書日記」をもつ橋本。連載に紹介している書籍は、『「待つ」ということ』(鷲田清一)、『言語の本質』(今井むつみ、秋田喜美)、『##NAME##』(児玉雨子)、『チ。―地球の運動について―』(作・画:魚豊)、『中学生から知りたいウクライナのこと』(小山哲・藤原辰史)など、小説から学術書、新書、漫画まで幅広いジャンルにわたる。

そんな橋本であるからこそ、『早稲女、女、男』という小説の、また『早乙女カナコの場合は』という脚本の、そのエッセンスを見逃さず、あるいはそれ以上のものが表現できたのだろう。

本作は、カナコと、カナコの大学時代の恋人・長津田をめぐる、10年がかりのラブストーリーが軸となっている。がしかし、”恋敵”とも言える二人の女―後輩・本田麻衣子と上司・慶野亜依子―との関係が、長津田との恋よりも不思議と応援したくなってくる。タイトルは『早乙女カナコの場合は』だが、この物語は『本田麻衣子の場合は』であり、また、『慶野亜依子の場合は』でもある。

これまで辻村深月や魚喃キリコ、⻄加奈子など女性の作家の作品を映像化してきた矢崎監督ならではの演出が、光っている。

「あまりにも美しい愛についての映画で自分の原作かどうか、疑ってしまった。」と、原作者自らコメントするように、本作は恋愛映画を超え、いつまでもまばゆい、愛についての映画であった(MO)

イントロダクション

早乙女カナコ、10年にわたる恋と人生。
恋、人間関係、キャリアーこれは、私たちの物語。

魚喃キリコによる同名漫画を映画化した『ストロベリーショートケイクス』(05)、西加奈子による同名小説を映画化した『さくら』(20)をはじめ、絶大な支持を得ている作家たちの物語を、これまで独自の世界観で数多く手がけてきた矢崎仁司。

今回5年ぶりとなる矢崎の最新作の原作には、日本のみならず海外でも人気を誇り、『BUTTER』や『ナイルパーチの女子会』といった作品で知られる柚木麻子による小説『早稲女、女、男』が選ばれた。

本作『早乙女カナコの場合は』は、およそ10年にも及ぶラブストーリーを中心としながらも、女性の生き方や女性同士の関係を描く映画にも仕上がっている。

ストーリー

大学進学と同時に友達と二人暮らしを始めた早乙女カナコ。
入学式で演劇サークル「チャリングクロス」で脚本家を目指す長津田と出会い、そのまま付き合うことに。

就職活動を終え、念願の大手出版社に就職が決まる。長津田とも3年の付き合いになるが、このところ口げんかが絶えない。
⻑津田は、口ばかりで脚本を最後まで書かず、卒業もする気はなさそう。サークルに入ってきた女子大の1年生・麻衣子と浮気疑惑さえある。

そんなとき、カナコは内定先の先輩・吉沢から告白される。
編集者になる夢を追うカナコは、長津田の生き方とだんだんとすれ違っていく。

大学入学から10年―。
それぞれが抱える葛藤、迷い、そして二人の恋の行方は―。

矢崎仁司監督メッセージ

物語より、光景の積み重ねこそが、観る人の心に触れると信じて映画を作り続けてきました。
素晴らしいスタッフとの出会いで光景が映し撮れたと思います。
ぼんやりした不安の世界をサバイブする彼、彼女たちに会いに来てください。
きっと元気になれる。見えない鎖を解き放つ作品になると嬉しいです。

矢崎仁司監督プロフィール

日本大学在学中に『風たちの午後』(80)で監督デビュー。『三月のライオン』(92)がベルリン国際映画祭他、世界の映画祭で高い評価を得、ルイス・ブニュエルの「黄金時代」賞を受賞。2000年、ロンドンを舞台にした『花を摘む少女 虫を殺す少女』を発表。他監督作品に『ストロベリーショートケイクス』(05)、『スイートリトルライズ』(10)、『不倫純愛』(11)、『1+1=1 1(イチタスイチハイチ イチ)』(12)、『太陽の坐る場所』(14)、『××× KISS KISS KISS』(15)、『無伴奏』(15)、『スティルライフオブメモリーズ』(18)、『さくら』(20)がある。

アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

橋本愛
中川大志 山田杏奈
根矢涼香 久保田紗友 平井亜門 /吉岡睦雄 草野康太/ のん
臼田あさ美
中村蒼

監督:矢崎仁司 原作:柚木麻子『早稲女、女、男』(祥伝社文庫刊) 脚本:朝⻄真砂 知 愛 音楽:田中拓人
製作:石井紹良 髙橋紀行 宮⻄克典
プロデュース:中村優子 金 山 
企画・プロデューサー:登山里紗 
プロデューサー:古賀奏一郎
撮影:石井勲 照明:大坂章夫 音響:弥栄裕樹 美術:高草聡太 装飾:杉崎匠平 編集:目見田健 衣裳:篠塚奈美 ヘアメイク:酒井夢月
キャスティング:北田由利子 助監督:古畑耕平 制作担当:福島伸司 宣伝協力: FINOR

製作幹事:murmur KDDI 配給: 日活/KDDI 制作:SS工房 企画協力:祥伝社 

2024/日本/DCP/2:1/5.1ch/119min 映倫区分:G

(C)2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会