『デヴィッド・リンチ:アート・ライフ』追悼上映トークイベント開催「リンチはフランシス・ベイコンにものすごく憧れていて画家になりたかった」
ようこそ、リンチの”アタマの中”へ
2025年1月15日、78歳で逝去したデヴィッド・リンチ。
自主制作映画『イレイザ―ヘッド』で有名となり、カルトの帝王とも呼ばれた。
そんなデヴィッド・リンチは映画監督だけに留まらず、アーティスト、ミュージシャン、俳優としてあらゆる分野で活躍し、この世に数多くの作品を遺した。
映画監督としての側面が際立つデヴィッド・リンチではあったが、幼い頃からフランシス・ベイコンに憧れ、芸術家を志していた。しかし芸術家として生きる道は両親の理解を得られず、才能を持て余し、孤独と苦悩の中、自分を信じ芸術へと邁進するデヴィッド・リンチ。
本作は、デヴィッド・リンチの幼少期から『イレイザーヘッド』を撮るに至るまでを、デヴィッド・リンチ自らが語りつくしたドキュメンタリー映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』。
この度1月15日、78歳で逝去したデヴィッド・リンチを追悼し、トークイベントが開催された。
2月11日(火)には飯田高誉(キュレーター)が上映後トークイベントに登壇。
「デヴィッド・リンチのアートと映画にあてはまるルール」のテーマを元に、デヴィッド・リンチのカリフォルニアのアトリエに訪問し、
身近に感じたデヴィッド・リンチのアートや人柄について、写真とともにスクリーンに投影しデヴィッド・リンチを追悼した。
デヴィッド・リンチとの出会い
「私がデヴィッド・リンチに出会ったのは『イレイザー・ヘッド』でした。1981年公開当時、渋谷で見た『イレイザー・ヘッド』は非常にショッキングで、二度と見たくない映画の1つになっていたんです。その翌年ビデオが発売されたんですが、買うつもりはなかったのに思わず手を伸ばして買っていました。そのまましばらくビデオを放置してあったのですが、ある時手を伸ばして見始めたら止まらなくなって、毎日毎日見るようになってしまったんです。何度見ても全く飽きない。フィラデルフィアの工場地帯の音であるとかノイズとか光と闇とか、頭の中でオーガナイズ出来る映像ではないということに、非常に惹かれていきました。それから3年間程ずっと見ていたら、デヴィッド・リンチの虜になっていました。そして何とかデヴィッド・リンチと仕事がしたいと漠然と思っていたんです」
そしてアトリエでの初対面
「レオ・キャステリと言うNYの大御所のギャラリストがいまして、その方が当時私が働いていたフジテレビギャラリーを尋ねていらして、デヴィッド・リンチは素晴らしい画家だということを彼が教えてくれました。その時初めてデヴィッド・リンチが画家だということを知り、もしかすると一緒に仕事が出来る糸口が掴めるかもしれないと思ったんです。それから独立し、10年目でようやくリンチの展覧会をやりたいと思い始め、ある方たちのつてを辿ってリンチのロサンゼルスの画廊にコンタクトが取れたんです。それから何枚も送った手紙の一部をリンチが見て「画家としての自分を紹介してくれるのであればいいじゃないか」と言って突然メールが来て、LAのアトリエに呼ばれました。で、それから会いに行くと、リンチがイタリアンレストランで待ち合わせようと。レストランに行くとリンチが待っていました。でそこからリンチとの付き合いが始まったわけです」
身近に感じたデヴィッド・リンチの本質
「『デヴィッド・リンチ:アートライフ』をご覧になればお分かりのように、デヴィッド・リンチは画家になりたかったんですよね。フランシス・ベイコンにものすごく憧れていて。ただ、彼はアーティストとしてのビジョンを描いていたんです。映画監督になったのは絵画を動かしたかった。絵画を動かしたらどうなるんだろうということで映画にしていったんだと...」
このつづきは動画でご覧ください。
INTRODUCTION
リンチが紡ぐ「悪夢」はどこから生まれるのか?
『ツイン・ピークス The Return』で再び世界を騒がせる、
映画界で最も得体の知れない監督――その「謎」が「謎」でなくなる、かもしれない。
映像作品のみならず、絵画、立体、写真、音楽など様々な方法で表現活動を続けているリンチ氏。映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』では、リンチ氏自身がプライベート映像と共に、幼少期の家族との思い出や、同居人であったJ・ガイルズ・バンドのピーター・ウルフ、後に『ストレイト・ストーリー』『マルホランド・ドライブ』の美術監督を務めるジャック・フィスクとの出会い、そしてフィラデルフィアでの暮らしや妻ペギーの出産を経て、長編映画デビュー作『イレイザーヘッド』に至るまでを語る。その言葉から、彼の作品には過去の恐怖や苦悶の記憶が大きく反映されていることが分かる。
リンチ氏はこう語る「絵を描いたり何かするたびに、新しいアイデアが浮かんでくる。だが、しばしば過去がアイデアを生み出し、色付けをする。だから新しいアイデアであっても、過去が関わってくるんだ」。
アップリンク吉祥寺、アップリンク京都にて上映中
CREDIT
映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』
監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネール・ガード=ホルム
出演:デヴィッド・リンチ 音楽:ジョナサン・ベンタ(C) Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016(2016/アメリカ・デンマーク/88分/原題:David Lynch: The Art Life)