『デヴィッド・リンチ:アート・ライフ』追悼上映トークイベント開催「リンチは音楽家としても有能で、映画の中で彼のオリジナル曲は3曲流れます」
ようこそ、リンチの”アタマの中”へ
DICE+にて配信中:レンタル500円・会員見放題
2025年1月15日、78歳で逝去したデヴィッド・リンチ。
自主制作映画『イレイザ―ヘッド』で有名となり、カルトの帝王とも呼ばれた。
そんなデヴィッド・リンチは映画監督だけに留まらず、アーティスト、ミュージシャン、俳優としてあらゆる分野で活躍し、この世に数多くの作品を遺した。
映画監督としての側面が際立つデヴィッド・リンチではあったが、幼い頃からフランシス・ベイコンに憧れ、芸術家を志していた。しかし芸術家として生きる道は両親の理解を得られず、才能を持て余し、孤独と苦悩の中、自分を信じ芸術へと邁進するデヴィッド・リンチ。
本作は、デヴィッド・リンチの幼少期から『イレイザーヘッド』を撮るに至るまでを、デヴィッド・リンチ自らが語りつくしたドキュメンタリー映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』。
この度1月15日、78歳で逝去したデヴィッド・リンチを追悼し、トークイベントが開催された。
2月10日(月)には菊地成孔(音楽家・文筆家)が上映後トークイベントに登壇。
音楽家として活躍する菊地成孔の視点から、作品や音楽家としてのデヴィッド・リンチなどについて
菊地の巧みなトークで、デヴィッド・リンチを追悼した。
『デヴィッド・リンチ:アートライフ』を観た感想は?
「デヴィッド・リンチは芸術家として両親に否定されるという場面があるのですが、否定されると言うより、期待をかけて裏切っていると言うことを話しています。母親がログ(木の丸太)を抱えているシーンなんかは、リンチのオープンセッションの1つで、古いフィルムから母親がログを持っているシーンが最初に出てくるファーストパンチは素晴らしい。リンチの興味があることに関して、本人の語りと既存の映像によって生々しく再確認できる作品です」と感想を述べた。
音楽家としてのデヴィッド・リンチとは?
「デヴィッド・リンチは音楽家としても有能で、映画の中でリンチのオリジナル曲は3曲流れます。リンチにとって暗くきついフィラデルフィアの工場地帯の中で、リンチが不適応の果てに適応していくという流れがこの映画の中には描かれています。そこに廃墟とはこういうものだという素晴らしいモノクロ写真が描写され、まるで廃墟と天国は繋がっているかのような物凄い音楽が流れます」とデヴィット・リンチの音楽家としての才能と素晴らしさを挙げた。
ギターと音楽性について
「デヴィッド・リンチの音楽というのは、やはりギターにつきます。音楽的にリンチのギターサウンドは、いい意味での金太郎飴で、リンチの曲は全てがあのギターサウンドです。金属的な音が「ジャリーン」と鳴って、ブルースをやっているのですが」と語った。
また音楽性について「音楽で言うと最もケネス・アンガーの映画に近い音楽だと思いました。ケネス・アンガーの映画以上にケネス・アンガーの映画っぽい音楽がデヴィッド・リンチの音楽だと思います。デヴィッド・リンチの曲は3曲流れていて、エンディングもリンチの曲ですが、劇中は別のフランス系の方が担当していますが、それもまた素晴らしいですね」と印象を話した。
最後に
「今回デヴィッド・リンチの映画で劇場公開された4Kデジタルリマスター版の中には、『ローラパーマー最後の7日間』という作品があります。原題は『Fire Walk With Me』。デヴィッド・リンチを語る多くの批評家や研究者たちは、まるで聖書の一節であるかのように「炎よ、我と共にあれ」とか「炎よ、我と共に歩め」と訳したがるのですが、FIRE WALKは、米俗語で火渡りのことを言います。転じて「やばいことをする」という意味があって、中西部では「一緒にやばいことしない」という意味にもなります。この2つの大きな違いこそがアメリカニズムでもありますし、デヴィッド・リンチの本質であると私は思っています」と締め括った。
INTRODUCTION
リンチが紡ぐ「悪夢」はどこから生まれるのか?
『ツイン・ピークス The Return』で再び世界を騒がせる、
映画界で最も得体の知れない監督――その「謎」が「謎」でなくなる、かもしれない。
映像作品のみならず、絵画、立体、写真、音楽など様々な方法で表現活動を続けているリンチ氏。映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』では、リンチ氏自身がプライベート映像と共に、幼少期の家族との思い出や、同居人であったJ・ガイルズ・バンドのピーター・ウルフ、後に『ストレイト・ストーリー』『マルホランド・ドライブ』の美術監督を務めるジャック・フィスクとの出会い、そしてフィラデルフィアでの暮らしや妻ペギーの出産を経て、長編映画デビュー作『イレイザーヘッド』に至るまでを語る。その言葉から、彼の作品には過去の恐怖や苦悶の記憶が大きく反映されていることが分かる。
リンチ氏はこう語る「絵を描いたり何かするたびに、新しいアイデアが浮かんでくる。だが、しばしば過去がアイデアを生み出し、色付けをする。だから新しいアイデアであっても、過去が関わってくるんだ」。
アップリンク吉祥寺、アップリンク京都にて上映中
CREDIT
映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』
監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネール・ガード=ホルム
出演:デヴィッド・リンチ 音楽:ジョナサン・ベンタ(C) Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016(2016/アメリカ・デンマーク/88分/原題:David Lynch: The Art Life)