『世界征服やめた』北村匠海が高校生の時に出会ったポエトリーリーディングを短編映画化
8歳で芸能界デビューし、ダンスロックバンド・DISH//のギターボーカルを務める傍ら、数々のテレビCM、ドラマ、映画に出演と、俳優として第一線を行く北村匠海。
監督デビュー作となる本作でそのセンスと、芸能というある意味で特殊な場所に長い間身を置きながらも絶やすことのない繊細さ、そしてものづくりへの意欲を昇華させた。
原案は、不慮の事故により24歳で逝ったポエトリーラッパー、不可思議/wonderboyの『世界征服やめた』。この曲を知った時、北村監督はまだ高校生だった。
芸能活動と両立しながらの中学校生活は、周囲とのリズムの違いに悩んだ。それを受けて高校は役者が多い学校に進学。そこでも周りとの違和感は埋まらなかった。そんな時期に出会ったのが、このポエトリーリーディングというジャンルの、この楽曲だったという。
幼い頃からずっと芸能の世界にいる北村監督が、就職して数年ほどの、彼方と星野という若い会社員二人を描くということに、初めは違和感を抱いた。芸能の苦悩は、サラリーマンに代表されるようないわゆる社会人の抱える悩みとは、かけ離れたものなのではないか、と。しかしなんと北村監督は中学生の頃、学校で「将来の夢」を聞かれて「サラリーマン」と答えていたという。そんな思春期のある種の歪みを拗らせず、彼の中の炎のような、風のような揺れる何かを、揺らしつづけていたのだろう。
星野が屋上で、『世界征服やめた』をポエトリーリーディングする。笑うように文句を言うように、つぶやくように叫ぶように。
彼方と星野。星の彼方にいる、不可思議/wonderboyへ、またありし日の自分自身へ、精一杯捧げているのだろう(MO)
イントロダクション
北村匠海監督が幼少期から芸能の道を生きる彼が高校時代に出合い、「人生を変えてくれた」と感謝をささげる不可思議/wonderboy の楽曲を原案に、自ら企画・脚本を兼任した念願の1本にして短編映画初監督作、それが『世界征服やめた』だ。
その渾身の企画を 体現する仲間として声をかけたのは、現象化した「美しい彼」シリーズや『キングダム』『ミステリと言う勿れ』といった話題作に次々と出演を続ける萩原利久。そして『東京リベンジャーズ』シリーズや『遺書、公開。』(2025年1月31日公開予定)などで頭角を表す藤堂日向。
萩原はかつての快活さや気力をいつしか見失ってしまった彼方の壊れかけた哀しみを佇まいから存分に漂わせ、藤堂は前半では気安さ、後半ではありったけの痛みを放出する硬軟織り交ぜた熱演で観る者を引き込む。加えて、北村のオファーを快諾した名優・井浦新が友情出演。製作陣には、北村と『スクロール』やDISH//の「プランA」MVで組んだ映像作家・清水康彦、フォトグラファーとしてポカリスエットの広告から映画『正体』撮影まで手掛ける川上智之といったトップクリエイターが結集した。
ストーリー
主人公・彼方(萩原利久)は、社会の中で生きる内向的な社会人。
変化の乏しい日常をやり過ごす中で、「自分なんて誰にも必要とされてないのではないか・・・」と自分の無力さを感じていた。
そしてどこか飄々として、それでいて白黒をはっきりさせたがる彼方の同僚の星野(藤堂日向)。
星野の選んだ決断に彼方の人生は大きく揺れ動く。
「死」の意味を知る時、明日の選択は自分でできることを知る。世界征服という途方もない夢を追いかけるよりも、自分にしか描けない道がきっとある――。
世界征服やめた!
北村匠海監督インタビュー
――20 歳の頃から「不可思議/wonderboy さんと『世界征服やめた』からもらった感情を映画にしたい」と言い続 けたと伺いましたが、当時からご自身の脚本・監督をイメージされていたのでしょうか。
「世界征服やめた」を作品として具現化しければならないという漠然とした自分の中の目標は 10 代の頃からありましたが、どちらかというと「監督をやりたい」という想いの方が強くあったように思います。
というのも、小学校6年生のときに出演した『シュアリー・サムデイ』(2010)で、監督としての小栗旬さんの姿を見ていたから。第一線で活躍している俳優である小栗さんが監督をしていて「監督ってカッコいいな」と憧れを抱きました。
小栗さんのことを俳優としても、監督としても尊敬していて「小栗さんは 26~27 歳くらいで初監督作を作った。自分もそうなりたい」と考えるようになりました。
――今後の監督作について、意欲はいかがでしょう。
もちろんやりたいです。
役者や音楽、他にも自分のライフワークにしていることは色々とありますが、その中で「これだ」と答え合わせできたのが監督でした。全ての要素が集まって自分はいま監督をやっているんだと実感できたのです。
自分の生活を守るためにすることでも、今まで来た道を全て蹴っても監督として生きていくんだということでもなく、自分が色々なことをやり続けてきた先にご褒美としてできたのが映画監督という感覚を抱いています。
8歳から関わらせてもらっている映像というものに改めて恩返しであり社会活動という想いもあります。ただ、監督が中心であるべきではなく、大枠として存在していてその中に役者や音楽があるのが、自分にとっての答えです。
北村匠海監督プロフィール
1997年、東京都生まれ。2008年に俳優デビューし、その後数々の映画・ドラマに出演する。今回、短編映画「世界征服やめた」で、初短編映画監督を務めた。
アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開
原案・主題歌:「世界征服やめた」不可思議/wonderboy(LOW HIGH WHO? STUDIO)
企画・脚本・監督:北村匠海
出演:萩原利久|藤堂日向|井浦新(友情出演)
製作・制作プロダクション:EAST FILM
2025年2月7日(金)より全国順次公開
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS|
©『世界征服やめた』製作委員会