『君の忘れ方』幼い頃父を病死で亡くした作道監督が、避けていたテーマ、"グリーフケア"に挑戦した本作

『君の忘れ方』幼い頃父を病死で亡くした作道監督が、避けていたテーマ、"グリーフケア"に挑戦した本作

2025-01-14 08:00:00

『君の忘れ方』本作の配給会社ラビットハウスの増田英明氏が作道雄監督に“グリーフケア”をテーマにした映画を作る話があるとの脚本執筆の相談をしたところから企画は始まった。

英語の”グリーフ”とは「悲嘆」という意味、日本ではグリーフケアというと主に死別により残された人の心をケアすることである。小学1年生の頃に⽗を病死で亡くした経験を持つ作道監督は、「グリーフケアをテーマに映画を撮るのは、避けられるものなら避けたい」と思っていたという。
「⼼の傷は簡単に癒せるものではない」という感覚があったがその⼀⽅で、グリーフケアをテーマにした映画は⾃分の⼼に突き刺さるのはわかっている。避けたいと思っていたのは、あまりにも⾃分のど真ん中にあり過ぎて描くのが怖いという思いが⼼の奥底にあったからだという。

作道監督は「ここで逃げたら、⼀⽣死別ものを描くことはできないかもしれない」と腹を括り、様々な書物や映画を通じてグリーフケアに関して改めて学び、 「もし大切な人が亡くなったとしたらどうなるだろう」と思いを馳せ脚本を書き始めた。

交通事故で突然恋人を失くすラジオの構成作家森下昴を初の映画単独主演となる坂東⿓汰が演じ、その恋人役を『孤狼の⾎LEVEL2』での演技が⾼く評価され、第45回⽇本アカデミー賞優秀助演⼥優賞・新⼈俳優賞を受賞した西野七瀬が演じる。

作道監督は、愛する人を失った感情を、「ひとくちに“喪失感”といっても、怒りや⾃責の念など、様々な感情が湧いてくると知り、⾃⾝や家族の実体験も盛り込みつつ、感情の種類をジャンルに振り分けながらプロットに落とし込みました」という。

観客は、昴に寄り添い、グリーフケアのプロセスを体感できる。

映画制作を通して作道監督は、「⼤事な⼈には死んでほしくない、という思いを改めて強くするとともに、 思い出すたびに関係性が続くとも感じられるようになった。 会えなくなることはすべてがゼロになることだと思っていたが、いまは思い出す限りは、ゼロではないと新たな死⽣観が確⽴した感がある」という境地にいたっという。

ふと、映画との関係に思いを馳せた。「今日、出会った映画はいつしか忘れるかもしれないが、思い出す限り、自分との関係性は続く」と。(TA)

イントロダクション

坂東龍汰、初の映画単独主演。

大切な人の喪失からの再生を描いたヒューマンドラマ。

主人公・昂を演じるのは、若手実力派俳優として振り幅の広い演技で圧倒的な存在感を放つ、坂東龍汰。
本作で初の映画単独主演を飾る。亡くなった恋人役には、映画や舞台など八面六臂の活躍をみせる西野七瀬、昂の母を海外にも活動の場を広げる南果歩が演じるほか、津田寛治、岡田義徳、風間杜夫らベテラン勢が脇を固める。

監督は、国際映画祭で数々の賞を受賞し、第79回ヴェネチア国際映画祭VENICE IMMERSIVE部門の正式招待を果たしたVR映画『Thank you for sharing your world』の新鋭・作道雄。監督自身がオリジナル脚本を執筆した。

グリーフケアの概念が近年、日本国内にも広がりつつある。決して癒えることのない深い悲しみ=グリーフ。
しかし、悲しみとの付き合い方は、人それぞれ。周囲の人々の手を借り、不器用ながらも再生の道を歩む姿を独創的に描いた希望の物語が誕生した。

ストーリー

付き合って3年になる恋人・美紀(⻄野七瀬)との結婚を間近に控え、幸せに満ちた日々を送る昴(坂東龍汰)。

しかし、「一緒に帰ろうよ」と留守電にメッセージを残したまま、美紀は事故で突然亡くなってしまう。

愛する婚約者を亡くした昴は、深い喪失感に苛まれながらも、母・洋子(南果歩)に促され、久しぶりに故郷の岐阜へ帰省する。

そこで同じ悲しみを抱えるグリーフケアの仲間たちと出会い、少しずつ美紀の死を受け入れ始める。

そんなある日、昴の前に突然、美紀が現れる。彼女は現実なのか、それとも“まぼろし”なのか...。美紀は言葉を発さず、優しく昴を見守るだけ。

「覚えているから辛いのか、忘れていくからか...」と自問しつつも、その美紀の存在に深く依存していく昴。

憔悴した昴を温かく受け入れる母・洋子もまた、不慮の事故で亡くなった夫のことで未だ悩み続け、葛藤していた。

「見えなくても、近くにいてね」と、このまま美紀との再会の時が続くことを願う昴。

悲しみの果てに昴が見つけたものとは...。

作道 雄監督メッセージ

難しいテーマでしたので、脚本を書くのにとても苦しみました。

いつもは悩むと、一人籠りがちになるし、今作も企画立ち上げの頃はそうでした。が、あまりに苦しんだので、周囲に助けを求めました。するとたくさんの意見や励ましをもらい、3 年をかけて脚本を書き上げ、スタッフの力と支えで撮影を開始することができました。

その経験はそのまま、人は辛い時に一人になりたがる生き物だが、人の中で生きていく道を消してはならないという、今作のテーマへ結び付きました。

坂東龍汰さん、⻄野七瀬さんほか、最高のキャストの方々とお会いして、その結びつきを、 力強くも繊細に、皆さんの元に届けることができるだろう、と確信しています。

作道 雄監督プロフィール

1990年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒業。2014年に映像制作会社「クリエイティブスタジオゲツクロ」を設立、代表に就任。映画監督として活躍する一方、脚本家としてテレビドラマの脚本などを手掛けている。監督・脚本作のVRアニメーション「Thank you for sharing your world」が第79回ヴェネチア国際映画祭のイマーシブ部門(コンペティション)にノミネート・正式招待された。

アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

出演:坂東龍汰 ⻄野七瀬 津田寛治 岡田義徳 風間杜夫 南 果歩ほか
監督・脚本:作道 雄 
エンディング歌唱:坂本美雨
製作総指揮:志賀司 
原案:一条真也『愛する人を亡くした人へ』(現代書林・PHP 文庫)
プロデューサー:益田祐美子 羽田文彦 
音楽:平井真美子 徳澤青弦 
共同脚本:伊藤基晴
後援:飛騨市 高山市 飛騨市観光協会 高山市文化協会 飛騨高山観光コンベンション協会/飛騨市ロケーション促進事業 飛騨市企業版ふるさと納税 
製作幹事:セレモニー 平成プロジェクト 
制作プロダクション:セレモニーエンタテイメント マウンテンゲート 
配給:ラビットハウス
©「君の忘れ方」製作委員会2024 
2024/日本/カラー/16:9/5.1ch/107分 
映倫区分:G