『ストップモーション』恐ろしく美しく交じり合う、ストップモーション・アニメと実写

『ストップモーション』恐ろしく美しく交じり合う、ストップモーション・アニメと実写

2025-01-14 08:00:00

伝説的なアニメーターを母親に持つエラは、母とともにストップモーション・アニメーション(コマ撮りアニメ)の映画を制作している。監督は母親で、エラは母親の指示に従い人形を動かすアニメーターの役割だ。エラが言う。「母が脳で、私は手だ」と。

やがて母親が病に倒れ、エラが自分一人で映画の制作を始めるようになることにより、本作のホラー映画としてのストーリーが広がっていくのだが、物語の冒頭から、母親は亡霊のようである。人形を動かすエラの背中へ投げかける、「同じ方向に」「2ミリ左へ」などの指示を出す声は、囁きであるが語気は強い。

パートナーや友人との飲み会に顔を出すと、「洞窟から出てきたね」と声をかけられるエラ。パートナーの家で過ごす束の間の夜にも、「仕事があるから」「母が目覚める前に戻らないと」と、夜更け前に家へと帰っていく。

何より衝撃的なのは、母親が娘であるエラのことを「パペット(お人形さん)」と呼ぶことだ。それもごく自然に。
なるほど、人形に魂を吹き込むストップモーション・アニメーションは、親が、まだ空っぽで自由な子どもを躾けることにも似ている。
ピノキオとゼペットじいさんのような美しい魔法は、現実には存在しがたい。

ロバート・モーガン監督は言う。「ストップモーションという名前さえ、不気味である」。
「ストップ」、そして「モーション」。動きを生み出すのではなく、動きを止めることなのか。「静止しているのに動いている、死んでいるのに生きている」。

アニメーションと実写が組み合わされ、不可解さに終わりがないことが、恐ろしくそして美しく描かれている(MO)

イントロダクション

それは現実か悪夢か・・・。

ストップモーション・アニメと実写が交錯し重層的な恐怖を生み出す!

フィル・ティペット監督『マッドゴッド』や堀貴秀監督『JUNK HEAD』、チリの『オオカミの家』など、近年脚光を浴びるストップモーション・アニメの新たな話題作が日本に上陸。

本作は、フランシス・ベーコンやクライヴ・バーカー作品を彷彿とさせるホラーテイストでダークなストップモーション・アニメと実写を交錯させながら、重層的な恐怖とスリルを与える珠玉のサイコロジカル・ホラーだ。

イギリス映画でありながら北米では『悪魔と夜 ふかし』(23)のヒットで注目を集めるアメリカのインディペンデント・スタジオ、IFCフィルムズが配給し、384館の限定公開ながらなんとTOP20入りを果たし、アメリカの映画批評集計サイト「ロッテン・トマト」では 91%フレッシュのハイスコアをマーク。

シッチェス・カタロニア国際映画祭審査員特別賞をはじめ、世界各国の映画祭でも絶賛された。

ストーリー

偉大なストップモーション・アニメーターであるスザンヌ・ブレイクの愛娘エラは、母の病により中断された作品を完成させようと奮闘する。

しかし、独力では作業が進まず、偶然出会った謎の少女の力を借りながら制作を進めるが、次第に現実と虚構の壁が崩壊し精神的に追い詰められていく...。

ロバート・モーガン監督メッセージ

STOPMOTIONは、アーティストが芸術のためにどこまでやるか、芸術がいかに彼らの人生を規定するか、そしてそれがいかに破壊的な力になりうるかを描いている。この作品は独特で独創的なホラー・シナリオの中で、コントロール、創造性、狂気の関係を探求している。

大人になってからずっと映画制作に携わってきた私は、真の創造的体験は、爽快であると同時に、狂気に満ちたものであることを発見した。このプロジェクトの出発点はストップモーションの短編を作っていたときの体験だった。私はこう感じたのだ。自分の創作物が、自分ではほとんどコントロールできない不思議な生命を宿したような気がしたのだ。

ある意味、それは現実そのものよりもリアルに感じられた。ある種の精神病に似ていると思った。エラの創造性はもっと極端だ。他の人々にとっては存在しないかもしれないが、エラにとっては実にリアルな存在なのだ。創造性と狂気は紙一重であり、彼女はその狭間で迷うことになる。(一部抜粋)

ロバート・モーガン監督プロフィール

イギリス出身。実写とストップモーション・アニメーションを駆使した独創的なホラー作品で知られる。 短編映画やアニメーションで高い評価を得ており、サンダンス映画祭やクレルモンフェラン国際短編映画祭な ど、様々な国際映画祭で上映され、数多くの賞を受賞している。これまでに60以上の国際的な賞を獲得し、作品はイギリス映画協会 (BFI) のナショナル・アーカイブにも収蔵されてる。また、実写作品ではホラーアンソ ロジー『ABC・オブ・デス 2』(2014)にもヴィンチェンゾ・ナタリ(『CUBE』)やアレクサンドロ・バス ティロ&ジュリアン・モーリー(『屋敷女』)といった監督たちと共に参加している。 本作はモーガンの長編映画監督デビュー作であり、ストップモーション・アニメと実写を組み合わせた心理ホラーとして注目を集め世界中の映画祭で高く評価されている。

アップリンク吉祥寺 アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

監督・脚本:ロバート・モーガン  

出演:アシュリン・フランチオージ、トム・ヨーク、ケイリン・スプリンゴール、セリカ・ウィルソン・リード and ステラ・ゴネット

2023年/イギリス/英語/93分/16:9/5.1ch/カラー/原題:Stopmotion PG-12

配給:スターキャット 宣伝:AMGエンタテインメント 

© Bluelight Stopmotion Limited / The British Film Institute 2023