『フード・インク ポスト・コロナ』経済、社会、自然、地球、血肉…。「食」は私たちのすべてにつながる
「身体に悪いと知ってはいても…この背徳感がむしろたまらない」「ファーマーズマーケット、オーガニック、、、ヴィーガンミート?、たまにはおしゃれに、流行りのサステナブル!」などなど。私たちの大半が、こんなふうに矛盾した食生活を送っているのではないだろうか。少なくとも私はそうである。
そんな健康意識の乏しい筆者でも、好き放題食べることのできそうな富裕層は有機野菜などの質の良い食事にありつけるので、安いファーストフードを食べる低所得者たちよりもむしろ痩せている傾向がある、くらいのことは知っていた。しかし本作は、その先を丁寧に、そして冷静に追う。
あの”背徳感”はどこからどうして生まれるのか、オーガニック野菜を作る農家の葛藤と喜び、代替肉の是非…。
フロリダ州で子どもの頃から畑仕事をしているメキシコ人男性。ミズーリ州で20年以上ファーストフード店で働きながら家族を支える女性。モンタナ州で農家を営みながら”農家議員”として地方の生産者の声を政権に届ける男性。コネチカット州で新しい養殖のシステムを模索する元漁師の男性。糖尿病を患いながら新しい食について調査しているジャーナリスト。イェール大学で食品と脳の報酬系の関係を研究する教授。培養肉のスタートアップを開業した元心臓外科医...。食の今を支えたり、食の未来を考えたりしている多種多様な立場の人々の声が聞こえてくる。
この健康意識の高そうなドキュメンタリーを見てしまったら、もう甘いソーダを飲みながら映画鑑賞を楽しんだり、ドライブスルーでバーガー片手にドライブを楽しんだり、、といったことができなくなるのではないか、と心配になる人もいるだろう。
しかし本作において重要なことは、健康を意識しよう、ということよりも、私たちにとって根源的な「食べる」ということは何であるのかということと、ある食べ物が私やあなたの口に入るまでにたくさんのストーリーがあるという事実を改めて知ることだ。
私たちは誰でも、食べることなしに生きていかれない。経済、社会、自然、地球、血肉…「食」ほど、私たちを取り囲むほとんどすべて、そして私たち自身に直接つながっているものはないかもしれない(MO)
イントロダクション
動員10万人の大ヒットを記録したフード・ドキュメンタリーの続編!
アメリカのフード・システムに鋭く切り込み、タブーとされていた食品業界の闇を暴いた『フード・インク』(09)の続編。
グローバル・フードの発達の陰にある巨大食品企業や農業問題の闇を暴きながら、オーガニック・フードの本当の価値を訴えたフード・ドキュメンタリー『フード・インク』。2009年にアメリカで公開されると、約10万人を動員&興行収入は約460万ドルを超え、第82回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞にノミネートされるなど大ヒットを記録。日本では2011年に公開され、ロングランヒットとなった。
続編となる本作は、新型コロナウイルスの世界的流行後に浮き彫りになった、アメリカのフード・システムの脆弱性を暴き出す。
パンデミック後、巨大食品企業の市場独占がより一層進み、個人農家の衰退と貧富の格差が大きく広がった実態や、“超加工食品”による健康被害や子どもの糖尿病の増加、さらには巨大企業による奴隷のような移民労働者の搾取など、今話題の米大統領選挙の争点となっている移民問題、社会的格差を「食」の観点から浮き彫りにしていく。
一方で、解決策を求め、持続可能な未来を作り出そうと奮闘する農家や活動家、政治家たちの前向きな姿も映し出される。これはアメリカに限った話ではない。日本でも起こっていることである。自分の食が自身を変える。私たちが学ぶべき食の知識や、明日を生きるヒントが満載のフード・ドキュメンタリーが再び誕生した。
ロバート・ケナー監督メッセージ
「『フード・インク』では糖分や塩分、脂肪の害について取りあげましたが、『フード・インク ポスト・コロナ』の段階で新事実が発覚しました。糖分や塩分、脂肪の摂りすぎが良くないだけではなく、製造方法にも問題があったのです。それらを組みあわせて超加工食品とすることで、より害のあるものができあがります。これが新しい情報です」。
「超加工食品は脳に影響します。何を食べるかを決める配線を変えてしまうのです。収益性がとても高い食品なので、企業は人工脂や人工甘味料が健康被害を起こすかもしれないと分かっても、製造をやめません。売れるのですから」。
ロバート・ケナー監督プロフィール
ドキュメンタリーの巨匠と呼ばれ、過去30年にわたり、娯楽性と洞察力に富んだドキュメンタリー作品で数々の賞を受賞してきた。マーティン・スコセッシ製作総指揮の『ブルース』シリーズの1作品である『ロード・トゥ・メンフィス』(03)にプロデューサーとして参加。第58回エミー賞など様々な賞を受賞した『Two Days in October』(05・原題)を監督。TVシリーズ「American Experience」の「Influenza 1918」(98・原題)で監督・製作を、「War Letters」(01・原題)では監督・脚本・製作をつとめ、なかでも監督・脚本・製作を担当した「Command and Control」(17・原題)は高く評価され、アメリカで劇場公開された。第50回エミー賞ほかを受賞したTV作品「America's Endangered Species: Don't Say Good-bye」(98・原題)で監督・製作を担当。『フード・インク』(09)では第82回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー部門にノミネートされ、第32回エミー賞ではベスト・ドキュメンタリー賞など2部門受賞するなど、多数の映画賞にノミネート。自身の代表作となったNETFLIXシリーズ「コンフェッション・キラー: 疑惑の自供」(19)では監督・製作総指をつとめている。
提供:パーティシパント&リバーロード
製作・監督:ロバート・ケナー、メリッサ・ロブレド
音楽プロデューサー:ブルース・ローレン、マリー・ミカス
音楽:マーク・アドラー
編集:レオナルド・ファインスタイン、ライアン・ロフラー
撮影:ジェイ・レドモンド 共同製作:リズ・シア
製作総指揮:キム・ロス、クリスタ・ワークマン、ジェフ・スコール、ダイアン・ワイヤーマン
製作:エリック・シュローサー、マイケル・ポーラン
出演:マイケル・ポーラン、ゲラルド・レイエス・チャベス、エリック・シュローサー、トニー・トンプソン、サラ・ロイド、ジョン・テスター、コリー・ブッカー、ドナルド・トランプ(アーカイブ)
2023年/アメリカ/94分/1.85:1/英語/原題:FOOD,INC.2/カラー/5.1ch
字幕:福原龍一
配給:アンプラグド
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