『ドリーム・シナリオ』夢が現実を書き換えていく―。戦慄の夢物語!

『ドリーム・シナリオ』夢が現実を書き換えていく―。戦慄の夢物語!

2024-11-15 08:00:00

夢によって自分の夢へと近づき、はたまた、夢によってあらゆるものを奪われていく、平凡な一人の男の物語。

誰もが知っている名優ニコラス・ケイジが演じる大学教授ポール・マシューズは、研究熱心で、家族思いで、頭の毛は禿げ上がっている。その滑稽さを含んだ凡庸具合が、狂気をむしろ際立てる。そして、クリストファー・ボルグリ監督と製作のアリ・アスターによる、普遍性と今っぽさ、おぞましさ、馬鹿らしさ、愛らしさの入り組んだ、バランス感覚ある演出は見事だ。

現実で起きたことが昇華され夢として現れ出てくる、という話はよく聞くが、本作『ドリーム・シナリオ』はその真逆に、現実とは全く関係のない夢が、現実をやがて侵食していく。それは悪夢よりも悪夢である。本当ではないと知りながらも、興味はそそられ、恐れを抱く。物語やフィクションというものが持つ、大きな力についての映画だったようにも思う。その力は私たちが想像するよりもはるかに大きいようだ。確固たるものとされる”現実/ノンフィクション”は思いがけず脆く、儚いとされる”夢/フィクション”によって容易に書き換えられていく…。

「何もしていないのに人気絶頂を迎え、何もしていないのに大炎上したポールの運命はー!?」

これは本作のあらすじにある一文だが、「何もしていない」ことは、ともすると、「何かをする」ことよりも深く、私たちの潜在意識に刻まれうるのかもしれない。だとすれば、ポールは一体どうしたらよかったのだろう。ラストシーン、ポール自身の(または彼の妻の)夢の中の世界として描かれるように、愛し、祈りつづけることしか、私たちにできることは残されていないのだろうか?また、「何もしていない」ポールだが、行動に移すことはなくとも、名声を得たいといった欲望や嫉妬心を持つこと自体がすでに、罪あることなのだろうか?(MO)

イントロダクション

世界中で旋風を巻き起こしている気鋭のスタジオA24と『ミッドサマー』『ヘレディタリ ー/継承』などで人々の不安を煽る鬼才アリ・アスターがタッグを組んだ禁断の<ドリーム・スリラー>が遂に日本上陸!

ごく普通の暮らしをしていた大学教授が何百万もの人々の夢の中に現れ、一躍有名人に。しかし、ある日を境に夢の中の自分が悪事を働き始め一瞬にして大炎上。夢のような日々は一転、悪夢へと変わっていくー。

主演は、100本以上の映画出演歴をもつアカデミー賞®俳優ニコラス・ケイジ。本作で第81回ゴールデングローブ賞主演男優賞・ミュージカル・コメディ部門にノミネートを果たし、ケイジ自身も「キャリア史上最高の作品だ」と自信をのぞかせる。監督は『シック・オブ・ マイセルフ』で長編映画デビューを果たした北欧の異才クリストファー・ボルグリ。ニコラス・ケイジの演技力とSNS社会への風刺を巧みに切り取った本作は米批評サイトRotten Tomatoesで91%フレッシュ、各メディアでも絶賛評を獲得している。

ストーリー

ごく普通の暮らしをしている大学教授のポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。

ある日、何百万人という人々の夢の中に一⻫にポールが現れ、一躍有名人となる。道ゆく人からもてはやされ、メディアにも取り沙汰されるようになり、夢だった本の出版まで持ちかけられ、ポールは天にも昇る気持ちだった。

しかし、そんな夢のような日々は突然終わりを告げる。夢の中のポールが様々な悪事を働くようになり、現実世界で大炎上。その人気は一転、ポールは人々から一気に嫌われ者になり、悪夢のような日常が始まる。

何もしていないのに人気絶頂を迎え、何もしていないのに大炎上したポールの運命は――!?

クリストファー・ボルグリ監督コメント

“夢物語”の誕生

2018年、クリストファー・ボルグリ監督は教職を失いながらも法廷で多額の和解金を受け取った、所謂キャンセルカルチャーの代弁者となった教授についての記事を目にした。

「当時、彼の身に起きたことを表現する言葉はありませんでしたが、学生たちがキャンパス中を追い回し、彼の車に落書きをする様子を見て興味を持つようになりました」。「それは、まるでフランケンシュタインのようで、村人たちに追い詰められた人物を描く古い西部劇のようにも感じられました。このシナリオは非常に映画的に思えたんです」。

ボルグリ監督は同様の経験を持つ教授が他にもいることを知り、彼らがポッドキャストに出演して自分たちの状況を説明しているのを聴いた。「彼らの中には、とても自己中心的かつ妄想的な口調で、ノーベル賞や学問における権威を奪われたと主張する者もいました」。「私はこれらの人物に強い興味を持ちました。彼らは、自分が解雇されるとは夢にも思っていませんでした。彼らは何も悪いことをしておらず、学生たちの頭の中で捏造された犯罪で非難されていると信じ込んでいました。そして、ひとつのアイデアが生まれたんです」。

これまでのボルグリ監督の長編映画は、風刺であり、彼自身が“集団行動に対する建設的ないじめ”と表現するものだった。「これらを観ることで、私たちの行動をより良い方向に導いてくれたらと期待しています」。

クリストファー・ボルグリ監督プロフィール

1985年生まれ、ノルウェー・オスロ出身。ミュージックビデオやコマーシャルの制作からキャリアをスタートさせ、2012年の短編映画『WHATEVEREST(原題)』が AFI 映画祭審査員特別賞を受賞(後日、作品がフィクションであることを映画祭側が指摘し、賞は返上)。2017年、実話を基にしたブラックコメディ『DRIB(原題)』で長編監督デビューを飾り、サウスバイサウスウエスト映画祭、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー 映画祭、ファンタジア国際映画祭など数々の映画祭への出品を果たす。長編第二作目となる『シック・オブ・マイセルフ』では、2022年カンヌ国際映画祭「ある視点」 部門出品、ノルウェーのアカデミー賞であるアマンダ賞では5部門にノミネート、ブルックリンホラーフィルムフェスティバルでは作品賞を受賞した。次回作もA24とアリ・アスター製作で、ゼンデイヤとロバート・パティンソンを主演に迎えた『THE DRAMA(原題)』の撮影を控えている。

アップリンク吉祥寺 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

監督・脚本・編集│クリストファー・ボルグリ

製作│アリ・アスター

撮影監督│ベンジャミン・ローブ

美術│ゾーシャ・マッケンジー

衣装 | ナタリー・ブロンフマン

音楽│オーウェン・パレット

2023年 / アメリカ / 英語・フランス語 / 102 分 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 字幕翻訳:平井かおり/ 原題:DREAM SCENARIO / 映倫:G

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配給:クロックワークス 宣伝:サーティースリー