『徒花-ADABANA-』近未来の日本を描く本作のメッセージをAIに聞いてみた
近未来の日本を描く映画として、『PLAN 75』は、75歳以上の高齢者に対して自らの生死の権利を保障し支援する制度という社会の枠組みを描いていたの比べ、本作『徒花』は、未知なるウィルスの流行で人類の体質が変化し出生率の激減が起こったという世界で、富裕層だけが治療を受けられる病院の中だけの設定である。さらにそこでは、特権階級だけに、「それ」と呼ばれるクローンが与えられる。
『PLAN75』が社会の有り様を考えさせるとしたら『徒花』は個人の生き方、死に方を考えさせる映画だ。手術を前にした新次(井浦新)と彼の心理状態をケアする臨床心理士まほろ(水原希子)が発する言葉一つ一つが人生に対する問いのようである。
「やりたい放題の人間と、やりたい放題の自然、どっちが勝つかな」
「世界はあると思えばあるし、ないと思えば無い」
「命の意味は次の世代に命をのこすだけではない」
この映画を観る人の年齢、それは死ぬまでの時間の長さによって答えは違ってくるだろう。
「徒花であっても無駄花では無いと思います」という"まほろ"の言葉がとりわけ気になったので、「その言葉に込められたメッセージはなんですか」とAIに聞いてみた。以下がAIの答えだった。
「徒花は無駄花ではない」という言葉は、表面的には無駄に見えるものでも、実際には意味や価値があることを示唆しています。徒花は通常、実を結ばずに散る花を指し、無駄や儚さの象徴とされますが、それが必ずしも無意味であるとは限らないという考え方です。この言葉は、見た目や結果だけでなく、その過程や存在自体に価値を見出すことを促しています。
(TA)
イントロダクション
少年疾走事件を題材にした映画『赤い雪 Red Snow』で2019年に鮮烈な長編監督デビューを果たし、第14回JAJFF(Los Angeles Japan Film Festival)最優秀作品賞を受賞するなど国内外問わず注目を集めている甲斐さやか監督。
彼女の5年ぶりとなる待望の長編第二作は、死が近づいている新次と、臨床心理士のまほろ、そして治療のために人間へ提供される「それ」との物語だ。
タイトルの『徒花』とは、「無駄な花」を意味するが、そこにこめられた美学と生命の価値とは。甲斐監督は、ここではないどこかの物語を描くことで、今ここにある「怖さ」を突きつける。
ストーリー
裕福な家庭で育った新次(井浦新)は、妻との間に一人娘も生まれ、周りから見れば誰もが望むような理想的な家族を築いていた。しかし、死の危険も伴うような病気にむしばまれ、とある病院で療養している。
手術を前にした新次には、臨床心理士のまほろ(水原希子)が心理状態を常にケアしていた。しかし毎日眠れず、食欲も湧かず、不安に苛まれている新次。まほろから「普段、ためこんでいたことを話すと、手術に良い結果をもたらす」と言われ、過去の記憶を辿る。そこで新次は、海辺で知り合った謎の「海の女」 (三浦透子)の記憶や、幼い頃の母親(斉藤由貴)からの「強くなりなさい、そうすれば守られるから」と言われた記憶を呼び起こすのだった。
記憶がよみがえったことで、さらに不安がぬぐえなくなった新次は、まほろに「それ」という存在に会わせてほしいと懇願する。「それ」とは、病気の人間に提供される、全く同じ見た目の“もう一人の自分(それ)”であった......。
「それ」を持つのは、一部の恵まれた上層階級の人間だけ。選ばれない人間たちには、「それ」を持つことすら許されなかった。新次は、「それ」と対面し、自分とまったく同じ姿をしながらも、 今の自分とは異なる内面を持ち、また純粋で知的な「それ」に関心を持ちのめりこんでいく......。
甲斐さやか監督プロフィール
映画監督、脚本家。10代より舞台や映画の現場で助監督や美術を担当する傍ら、女子美術大学在学中、共同 監督の『BORDER LINE』(2000)、『pellet』(2001) が Santafe ショートフィルムフェスティバル、オーバーハウゼ ン国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに選出される。そして脚本・監督作の『オンディーヌの呪い』がス キップシティ国際Dシネマ映画祭「奨励賞」を受賞。初長編作品の『赤い雪』は、第14回JAJFF(Los Angeles Japan Film Festival)最優秀作品賞を受賞、数々の映画祭にて高評価を受ける。更に小説「シェルター」(別冊 文藝春秋)を2020年に発表し、2023年には舞台『聖なる怪物』(2023)の脚本・演出も手がける。
2024年製作/94分/G/日本
井浦新 水原希子
三浦透子 甲田益也子 板谷由夏
原日出子/斉藤由貴 永瀬正敏
脚本・監督:甲斐さやか
配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES
©2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ