『忘れない、パレスチナの子どもたちを』ガザ=ロンドンを繋いでの舞台挨拶動画&全文

『忘れない、パレスチナの子どもたちを』ガザ=ロンドンを繋いでの舞台挨拶動画&全文

2024-10-08 11:11:00

登壇者:マイケル・ウィンターボトム(本作監督)、ムハンマド・サウワーフ(本作監督)

2024年10月4日@アップリンク吉祥寺 

昨年の10月7日にハマスのイスラエルへの越境攻撃、そしてイスラエルのガザ攻撃から1年。
今も、空爆で一般市民が殺されているガザの現地から『忘れない、パレスチナの子どもたちを』の共同監督のムハンマド・サウワーフ監督、そしてロンドンからマイケル・ウィンターボトム監督を迎えて、10月4日の初日に舞台挨拶が行われました。

サウワーフ監督の舞台挨拶中継をしている場所は、昨年爆弾が落ち、監督の両親や兄弟を含む47人が空爆で殺された場所という監督にとっても悲しみの場所から挨拶を行ってもらいました。


── 映画が制作されて2年、いまのおきお気持ちをお聞かせください。

ウィンターボトム監督:映画の素晴らしいところはインターナショナルであるということ。どこでみることも、どんなことについてもみることができ、他の人の生活をみて、感動したり理解することができる。この映画は、殺された子どもたちとその家族、父、母、兄弟、姉妹などが、殺された子どもに対する愛が語られています。それもみることによって、子どもがあのように殺されてしまう状況で生きるというのはどのようなことなのか、自分の身に置きかえてみることもできると思います。

サウワーフ監督:日本で上映されることを非常にうれしく、ありがたいと思っています。この映画は全世界で上映されることが大切だと思っております。ヨーロッパ各地でも、ガザから地理的に非常に遠い日本で上映され、みなさんがご覧になって、ガザの子どもも日本の子どもも、みな同じだとわかっていただくのが大切だと考えています。

── ガザの現状についてお聞かせください。監督のご家族やご友人などはご無事でいらっしゃいますでしょうか。

サウワーフ監督:ガザには220万人の人がいて、安全な場所はまったくありません。シェルターもありません。比喩的な意味でなく、この戦争はガザのあらゆる面で非常にネガティブな意味で、街中すべての人々に害を与えています。家族の誰かや愛する人を失ったり、自分の身体の一部を失ったり、リアルな意味で全員が、すべての場所がこの戦争によって、害されています。
そして、私はその一人であります。今こうやってみなさんとお話しをしていますが、まったく安全を感じていません。どの瞬間にロケットが落ちてきたり、空爆が起こるかわからないという状況です。私がいるこの場所は、私の家族や親戚 47 人が殺された場所でもあります。
去年2023年11月17日、逃げたシェルターに爆弾が落ち、47人が殺されました。その中に私の両親、兄弟2人、彼らの妻、その子どもたち、つまり私の姪や甥などが殺され、私も非常に致命的な傷を負いました。
その2週間後、2 人の兄弟が殺されました。1人は私と一緒に映像プロダクションの会社で働いていて、この映画にも関わっていました。もう1人は外国メディアに関わっていました。このような悲劇がどんどん聞こえてきますし、私の友人知人も殺されていますが、こういう状況でも人々は希望を持っています。戦争というものは、ガザの争いはいずれ終わる、と希望を持っています。

── イスラエルの空爆から1年となります。ロンドンではメディアや街中での抗議活動を目にすることはありますか。

ウィンターボトム監督:ロンドンでは抗議行動は起こっています。メディアでもそのニュースは流れています。イギリスの中でも何人かの政治家は、ガザに対して抗議活動を行うべきだといっています。ですが、イギリスはアメリカの決断をサポートしている状況です。アメリカは口では停戦を言いながらも同時に、ガザ紛争の間に150億ドルもの武器をイスラエルに提供しています。


── 亡くなった子どもたちの話をしてもらうには、ご家族と親密な関係を築く必要があったと思います。どのように信頼関係を築かれていったのでしょうか。


サウワーフ監督:ガザは非常に狭いエリアで360キロ平方メートルしかないので、人にアクセスするのは非常に容易です。私たちも紛争がおこってる間ずっと、2021 年も今もガザに住んでいます。ご家族を訪問して、声を届けることが大事だと、彼らを説得しました。また中東おこっていることを知らせる重要性を訴えて、関係性を築き信頼関係を築いていきました。


── その100時間分の映像をロンドンではじめてご覧になった時のお気持ちをお聞かせください。


ウィンターボトム監督:映像をみて非常に心が動かされました。私も子どもがいる親です。殺された子どもについて、お父さんやお母さん、兄弟たちが、その子が持っていた夢や希望、野心やこうなりたい、これが好きだったという話を聞くのは、子どもに対する愛、兄弟に対する愛とは国や文化を超えてみな同じだと強く感じさせられました。同時に、彼らの殺されたこどもに対する愛情を悼む気持ちは非常に力強いと思いみておりました。

── 映画の音楽をマックス・リヒターさんに依頼した経緯をお聞かせください。

ウィンターボトム監督:非常にシンプルに直接お願いしました。アメリカにいる彼のマネージャーに連絡をとって、映画をみてもらい、作ってもらうことになりました。彼の音楽が非常に好きです。とてもシンプルでフレーズの繰り返しが多く、それによって繰り返されていくうちに感情的なパワーというものが積み重なっていく。そういったものがこの映画にもあるといいなと思っていました。それぞれの家族が子どもについての愛を語ります。でも、家族の愛は同じです。それが繰り返されることによって、感情的なインパクトがどんどん大きくなっていく。マックスの音楽と同じようになればいいと願っていました。その意味でもパーフェクトで、作っていただけて幸運でした。

── 映画に出演されたご家族や子どもたちは、今空爆の被害などはいかがでしょうか。

サウワーフ監督:2ヶ月前、家族の方々にコンタクトしようとしました。35家族のうち、20家族とは連絡がとれました。できなかった方々は、電話やあらゆる手段でコンタクトを試みましたがお応えがまったくなかったという状況です。
映画に登場した家族たち全員が空爆によってインパクトを受けました。連絡のとれた20家族全員が家を失いました。ほとんどの場合、家族の1人またはそれ以上の人を失っていました。
映画にでてきたアリヤさんは、2021 年時点奥さんと子どもを亡くし、彼と娘1人マリアが生きのびていました。その後、新しい奥さんと結婚し赤ちゃんが生まれました。マリアの妹になったのですが、その後の空爆でアリヤさんも、その奥さんも赤ちゃんも、妹ができたはずのマリアも全員殺され、家族がなくなりました。
映画で、ディナについて姪や甥が出てきて話をし、ディナのお父さんが誕生日に子どもたちにお菓子やキャンディを配っている様子がありました。2ケ月まえにそのお父さんと話をすることができ、そのお菓子をもらっていた子どもたち、姪が殺されたと聞きました。その子どもたちは瓦礫のかなに埋もれたままで、10ケ月以上遺体を見つけることもできない状況です。
この映画に出ている子どもたちはガザ北部に住んでいますが、いま飢餓に苦しんでいます。本来なら豚のエサにするようなものを食べて、それでも苦しんでいます。残っている家族たちからも、みな同じような話をしてくれました。
つまり前回の空爆で、誰もが凄まじい被害を受けているのです。

── 最後に日本の観客にメッセージをお願いします。

サウワーフ監督:もし人間にこのガザでの紛争を止めることができる手段があるとしたら、それをぜひ使っていただきたいです。子どもは、悲惨な状況の中で殺されるために生まれたのではなく、夢を叶えたり、夢をみたり、希望を持ったりするために生まれているのです。日本の方々は、どんな方でも何かはできると思いますので、ぜひこのガザでの戦争を止めるために何かできることをなさってください。
子どもは非常に無垢で、肌の色が違う、違う文化だと区別をしません。子どもは自分が幸せになるものを、そのまま素直に追いかけていきます。ハローキティのおもちゃを持つことで幸せになるなら、キティを追いかける。それが子どもです。

ウィンターボトム監督:ムハンマド監督の発言に付け加えることはないです。この映画は、私のようにイギリスに住んでいる者がメッセージを伝える
のではなく、ガザに今も住んで、今も映画を作り続けている彼の言葉で締めたいと思います。彼は今もガザで映画を作り続けている。だから私たちはガザからの映画をみることができる。そういう意味でもムハンマドにありがとうと申し上げたい。

(2024年10月4日 ガザ=ロンドン=吉祥寺=京都 通訳:富田香里 司会:汐月しゅう)