『Viva Niki タロット・ガーデンへの道』笑いと不安、慈愛と憎しみが混ざり合うニキの作品世界へ

『Viva Niki タロット・ガーデンへの道』笑いと不安、慈愛と憎しみが混ざり合うニキの作品世界へ

2024-09-19 15:00:00

フランス貴族の娘として生まれた、ニキ・ド・サンファル(1930-2002)。
幼少期からニューヨークに移り住み、モデルとして『ヴォーグ』誌や『ライフ』誌の表紙を飾るなど華々しい活躍をしていたが、1953年、精神疾患の治療をきっかけに、彼女はアートに出会う。
箱根・彫刻の森美術館や直島のベネッセハウスで、実際に彼女の作品を見たことのある人は多いのではないだろうか。

そして、そのニキを1981年から10数年にわたり取材したのが、本作の監督であり戦後日本を代表する写真家の一人、松本路子(1950-)だ。
70年代に国内外で起こったウーマン・リブを捉えた作品や、オノ・ヨーコやピナ・バウシュをはじめ第一線で活動する女性アーティストのポートレート作品で知られる松本だが、彼女が長期間にわたって追い続けたのは、ニキ一人だけだという。

このドキュメンタリーは、松本が作家として生涯やり残したことは何かと考えたとき、「もう一度ニキと向き合ってみたい」と思ったことから制作が始まった。
数々の著名なアーティストを見てきた松本をこれほどまでに惹きつける、ニキのもつ魅力とは一体何なのか。

1961年に発表された、様々なモチーフの内部に塗料を埋め込んで石膏で付着させた画面にライフルを放つことで完成する、通称「射撃絵画」。ニキの代名詞となった、カラフルで開放的な女性像の「ナナ」シリーズ。そして、20年の歳月をかけ、イタリア・トスカーナ地方にあるオリーブの森に集大成としてつくり上げた「タロット・ガーデン」...。

ニキは、自分自身からも、自らを取り巻く社会からも、決して目をそらさなかった。そして受け取めたすべてを、タロット・ガーデンとして残そうとしたのかもしれない。彼女の作品には笑いと不安が、慈愛と憎しみが、混ざり合っている。

松本監督の心のこもった構成によって、そんな思いにのびのびと導かれた。

本作のタイトルにある通り、これはニキから現代を生きる私たちまで続く、タロット・ガーデンへの道――。(MO)

イントロダクション

20世紀を代表するフランス生まれの造形作家ニキ・ド・サンファルと、世界各地の女性アーティストの写真を撮り続けてきた写真家の松本路子。

二人のアーティストの軌跡が交差する、刺激的でワクワク感に満ちたドキュメンタリー。

ストーリー

国内外でアーティストポートレイトを撮影してきた松本路子は、1981年から10年以上にわたり、ニキ・ド・サンファルの写真を撮影している。生涯でやり残したことは何かと考え始めた時、ニキともう一度向き合ってみたいと思い、映画の製作に挑むことになった。タロット・ガーデンを再訪、ヨーロッパ各地、アメリカ、日本国内でニキ作品を自ら撮影し、脚本も手掛けた。ゆかりのある8人へのインタヴューの他に、ニキ、その娘、孫、曾孫と、4世代にわたる女性たちを撮影することも叶った。映像には未公開の多数の写真作品、監督による語りが含まれ、2人の女性アーティストの交流から生まれた物語になっている。

松本路子監督メッセージ

のびやかに、そして不屈の精神で既成の価値観と闘い続けたアーティスト、ニキ・ド・サンファル。撮影・編集を終え、あらためて彼女の作品が深い思索と、人生哲学によって成り立っていることを実感している。美術館から飛び出したカラフルでのびやかな女性像「ナナ」たちは、町や公園で、生きることへの讃歌と愛を高らかに歌っている。私はこの映画で、ニキの解き放たれた創造の魂と、壮大な宇宙的空間を伝えることができたら、と願っている。ニキが残した多くのメッセージを、次の世代にも受け渡したいのだ。

松本路子監督プロフィール

1950年、静岡県生まれ。法政大学文学部卒業。10歳の頃、父のお古のカメラを手にして写真を撮り始める。 1970年代の女性運動を日本、アメリカ、ヨーロッパで記録し『のびやかな女たち』(話の特集)を出版。80年代より、世界各地の現代を代表するアーティストやダンサーなどのポートレイトを撮影。写真集に『肖像 ニューヨークの女たち』(冬樹社)『Portraits 女性アーティストの肖像』(河出書房新社)『DANCERS エロスの肖像』(講談社)などがある。エッセイ集を出版のほか、個展多数。東京国立近代美術館、東京都写真美術館など、国内外の美術館に作品が永久収蔵されている。今作が初めての監督作品で、監督・撮影・構成・英語字幕翻訳を担っている。

http://www.matsumotomichiko.com/

©撮影 松本路子

アップリンク吉祥寺 アップリンク京都 ほか全国劇場にて公開

公式サイト

2024年/日本/日本語/76分/カラー&モノクロ/1.78:1/ステレオ

監督・撮影・脚本 松本路子

ナレーション 小泉今日子

製作:ニキの映画を創る会  助成:ポーラ美術振興財団、クラウドファンディングPLAN GO、藤田晴子の会、上野千鶴子基金  後援:ニキアート財団

編集:池田剛

音楽監修:青柳いづみこ

オリジナルエンディング曲 : 黒猫同盟(上田ケンジと小泉今日子)

グラフィックデザイン: 辛嶋陽子 

配給・宣伝 : ミモザフィルムズ    

宣伝協力 : クレスト

©Artworks by Niki de Saint Phalle /NCAF

©2024 Niki Film Project  All Rights Reserve