『パリのちいさなオーケストラ』クラシックヒット曲が彩る、夢とエネルギーに満ちた女性指揮者誕生までの実話

『パリのちいさなオーケストラ』クラシックヒット曲が彩る、夢とエネルギーに満ちた女性指揮者誕生までの実話

2024-09-12 10:00:00

本作は、現在も精力的に活動しているフランスの管弦楽団「ディヴェルティメント·オーケストラ(*)」を立ち上げた少女と仲間たちの物語。

(*)1998年に主人公のモデルとなったザイア・ジウアニが設立。交響曲に加えてワールドミュージック、伝統音楽、ポピュラー音楽など幅広いレパートリーで年間約40のコンサートを現在も開催している。

アルジェリア系移民の双子の姉ザイアは、妹のフェットュマとともにパリ郊外の音楽院からパリ市内の名門音楽院へ編入が決まる。これまでヴィオラを学んできたザイアだったが、特別授業にやって来た世界的巨匠のセルジュ·チェリビダッケに出会い、本格的に指揮者を志すようになる。名家出身の生徒たちから移民であることや田舎育ちであることを揶揄されたり、女性が指揮者を目指すことをからかわれたりしながらも、音楽の持つ力を信じて疑わない彼女の姿に胸を打たれる。

実際に演奏しながらの撮影のため、主要キャスト以外の配役は皆現役の音楽家を抜擢しているというのも驚き。これまでほとんど演技経験のない彼らであるからこその、演技を超えたリアルな演奏シーンには釘付けになってしまう。

また、ラヴェル『ボレロ』やフォーレ『夢のあとに』、シューベルト、ドヴォルザークなど、クラシック初心者でも楽しめるような名曲の数々が全編を通して彩っている。

映画の原題でもある、彼女が楽団名にした『Divertimento(ディヴェルティメント)』という言葉は、イタリア語では「楽しみ」「娯楽」の意味で、音楽作品としては「嬉遊曲」と訳される。

格式高いクラシック界においても、人種や階級、性差を乗り越えようとする彼女のひたむきな姿には、音楽に限らず、夢に向かうすべての人に一歩を踏み出す勇気を与えてくれるだろう。

イントロダクション

世界中で女性指揮者はわずか6%
しかも移民の子である少女がパリの名門音楽院に編入し、女性指揮者への夢に挑む―。
夢を諦めず、音楽の力で高い壁を乗り越えていく姿に、胸が熱くなる、爽やかな感動作!

ストーリー

パリ近郊の音楽院でヴィオラを学んできたザイアは、パリ市内の名門音楽院に最終学年で編入が認められ、指揮者になりたいという夢を持つ。だが、女性で指揮者を目指すのはとても困難な上、クラスには指揮者を目指すエリートのランベールがいる。超高級楽器を持つ名家の生徒たちに囲まれアウェーの中、ランベールの仲間たちには田舎者とやじられ、指揮の練習の授業では指揮台に立っても、真面目に演奏してもらえず、練習にならない。しかし、特別授業に来た世界的指揮者に気に入られ、「女性は指揮者向きじゃない。皆 2週間でやめた」と言われながらも、指導を受けることができるようになり、道がわずかに拓き始める――。

マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール監督メッセージ

©Guy FERRANDIS - 2022 ESTELLO FILMS - EASY TIGER - FRANCE 2

私の映画は、カルエにある産院の閉鎖に反対して闘う女性たちに焦点を当てた『BOWLING』以来、フェミニスト的でした。また、他の映画人たちと設立した「フランス映画女性サークル」を通じて、女性たちを何年もサポートしてきました。この活動により、私たちは出会い、アイデアを交換し、解決策を見つけ、情報を伝え、フランスで初めての種類の映画を構築できるようになりました。これまで男性のみが参加していた分野のネットワークです。

私は、男女間の暴力に関する多くの問題を憂慮していますが、私にとってフェミニズムは建設的でポジティブなものでなければなりません。これが『パリのちいさなオーケストラ』にも反映されています。

監督プロフィール

1963年フランス生まれ。ジャーナリズムを学び、ロサンゼルスのハリウッド・レポーターの編集長に就任。アメリカで12年間暮らした後フランスに帰国し、1996年に制作アシスタントとして映画業界でのキャリアをスタート。2009年に脚本を書いた『La première étoile』は164万人を動員の大ヒットを記録し、セザール賞新人賞にノミネートされた。
『Ma première fois』(12)で監督デビュー。監督・脚本作『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(14)で世界各国の映画賞を受賞した。また2005年には映画界の女性プロフェッショナルが集まる団体「フランス映画女性サークル」を設立し、現在会長を務める。他監督作品に『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(16)・第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品 、『パリの家族たち』(18)。

アップリンク吉祥寺 アップリンク京都 ほか全国劇場にて9月20日(金)より公開

公式サイト

監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール

キャスト:ウーヤラ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ(『真夜中のピアニスト』)

 2022年/フランス/フランス語/114分/カラー/ビスタサイズ/原題:Divertimento/映倫区分:PG-12/配給:アット エンタテインメント

© Easy Tiger / Estello Films / France 2 Cinéma