『君を想い、バスに乗る』亡き妻との約束を胸に、バスを乗り継いで人生を振り返る人生最後の旅

『君を想い、バスに乗る』亡き妻との約束を胸に、バスを乗り継いで人生を振り返る人生最後の旅

2022-05-31 12:00:00

本作の主人公は、バスのフリーパスを利⽤してイギリス縦断の旅に出ることを決意する。陽光と雄大なイングランドの大地、その中をひた走る乗合バス、主人公の老人の悲しく美しく、滋味あふれる表情が印象的だ。

脚本を手がけたジョー・エインズワースによると、この物語は、彼の⽗と義⽗の「⾼齢者向けの無料バス乗⾞券を使ってどこに旅をするか」という会話から、着想を得たのだという。身近なバスのフリーパスから人生を振り返る壮大な旅が始まる、という設定が、本作の魅力の一つである。

主演は、「ハリー・ポッター」シリーズで有名なティモシー・スポール。実年齢より30歳近く年老いた役を特殊メイクなしで演じ、味のある表情で観客を魅了。2021年にイタリアバーリ国際映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞した。亡き妻メアリー役には「ダウントン・アビー」シリーズのフィリス・ローガン。そして、「グッバイ・モロッコ」で知られ、画家でも作家でもあるスコットランドのギリーズ・マッキノンが監督を務める。

人生は旅に似ている。それも、乗合バスの旅に。
そこには必ず、老若男女、見知らぬ人の存在があり、トラブルに巻き込まれたり、心ある人に助けられたり。主人公の長旅を引きで見ると、人生のイベントとは、あらかたバスの中で起こることとそう変わらないのかもしれない、と思わせる何か不思議な説得力がある。そして、“⼈は⼀⼈じゃない“ことを思い出させてくれる。

エンドクレジットに「新型コロナウィルスで亡くなられた方に捧ぐ」の文字。身近な人を亡くされた方の心にも、この映画が届くことを願う。

 

 

ストーリー


人生は乗合バスのように、出会いが過去と未来を紡いでいく。

トム・ハーパー(ティモシー・スポ―ル)とその妻・メアリーは、スコットランド最北端の村ジョンオグローツでささやかながら愛に満ちた穏やかな日々を送っていた。

しかし50年もの間続いてきた二人の生活は突然終わりを迎えることになってしまった。いつもの窓から庭を眺めても、そこにはもうメアリーの姿はない。

最愛の妻を亡くしたばかりのトムは、ローカルバスのフリーパスを利⽤してイギリス縦断の壮⼤な旅に出ることを決意する。財布に入っているわずかなキャッシュとバスのフリーパスを確認し、家を出る。

⽬指すは、イングランドの最南端“ランズエンド”。愛する妻と出会い、⼆⼈の⼈⽣が始まった場所――。

⾏く先々で様々な⼈と出会い、トラブルに巻き込まれながらも、妻と交わしたある“約束”を胸に、時間・年齢・運命に抗い旅を続けるトムは、まさに勇敢なヒーローだ。

愛妻との思い出と⾃⾝の“過去”ばかりを⾒つめていたトムが、旅を通して⾒つけたものとは……?

 

 

主演&監督インタビュー
~ティモシー・スポールの役作りについて~

 

監督コメント
Director’s Voice


ジョー・エインズワースが書いた『君を想い、バスに乗る』を初めて読んだ時、高齢者用の無料バス乗車券を使って路線バスの旅に出る老人のロードムービーという設定が非常に気に入った。スコットランドの最北端 (ジョンオグローツ) からイングランドの最南端 (ランズエンド) までの約1300キロの旅は、彼の人生最後の旅となる。

妻メアリーの死後、トム・ハーパーは60年以上前の夫婦の旅を細部にわたって再現しようとする。同じ路線バスのルートや朝食付き宿を利用しながら、もと来た道をさかのぼる。この旅は彼にとって忠実に守る儀式であるが、人生に脱線はつきものだ。

トムの旅には、人には言えない大切な理由がある。これが物語に情緒的な深みを与えている。さらにトムは自分に残された時間の中で、約束を果たすために困難に立ち向かう。

入念な計画に沿って旅を進めるが、想定外の出来事がトムを待ち受ける。あらゆる問題、障害、喜びを伴う、まさに人生そのものだ。人生と出会いがもたらす脱線は、彼の旅に様々な形で花を添える。

『Another Time, Another Place (原題)』(日本未公開)でフィリス・ローガンを見て以来、彼女と仕事がしたいと思っていた。この映画で、ついに念願が叶った。

審査員としてトリノ映画祭に参加した際、ティモシー・スポールに出会い、この映画の話をした。彼はすぐに興味を示してくれた。主人公のトムよりもはるかに若かったが、ティモシーならうまくやり通せると直感的に思った。90歳の身体的特徴を捉えた見事な役作りに加え、メイクアップアーティストのクリスティーン・カントが高価なアイテムを使わず、見事なメイク技術だけでティモシーを老けさせてくれた。

多彩な出演者はグラスゴーの人たちだ。その多くが30年以上を共にした俳優たちで、再び一緒に仕事ができたことを嬉しく思う。

ギリーズ・マッキノン

 

 

『君を想い、バスに乗る』予告編

 

公式サイト

 

6月3日(金) シネスイッチ銀座、アップリンク京都、ほか全国順次ロードショー

 

監督:ギリーズ・マッキノン
出演:ティモシー・スポール、フィリス・ローガン

2021/イギリス/英語/カラー/シネスコ/DCP/5.1ch/86分原題:The Last Bus

日本語字幕:大城哲郎
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:HIGH BROW CINEMA
© Last Bus Ltd 2021

 

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