『クリス・マルケル特集 2022』没後10周年記念特集
クリス・マルケルが今この時代に生きていたら、zoomなどのネットを使用した会話や、配信の技術を使った新しい作品を創っていただろう。
彼の作品は、フィルム、写真、本、ビデオ、ゲーム、CD-ROMなど多様なメディアを自在に使って完成させる作品は優雅にして詩的であり、2012 年の没後も世界中のクリエイターに大きな影響を与え続けている。
世界のあらゆるところに出没しカメラに収め、その映像と音声を編集し、シネ・エッセイシストとして自由に紡ぐ彼の源にあるのは、世界を知りたいという”好奇心”だ。
クリス・マルケルの作品を体験したことのない観客は、この機会にぜひ観て欲しい。自分がなにかクリエイションを行うときの大きな刺激になることは間違いだろう。
クリス・マルケル Chris Marker
(1921年7月29日~2012年 7月29日)
デジタル技術により誰もが映像を取れるようになりました。映画制作手段の民主化は、あなたという社会的な映画制作者を誘惑していますか?
クリス・マルケル:インタビューより(Libération, March 5, 2003)
ここで、私に貼られたレッテルをはがす良い機会です。多くの人にとって、「社会的関与」とは「政治的」という意味であり、政治、妥協の芸術(それはあるべき姿であり、もし妥協がなければ、今まさにその例を見ているような強引さがあるだけです)は、私を深く退屈にさせます。
私の関心は歴史であり、政治に関心を持つのは、歴史が現在に刻んだ痕跡を示す程度にすぎない。強迫観念的な好奇心で(キプリングの登場人物の中で私が共感するのは、"Elephant Boy of the Just-So Stories"だ。その理由は「飽くことのない好奇心」だ)私は問い続ける。という疑問が湧いてきて、あちらこちらで「どうなっているのか」を見てみたいというマニアックな気持ちが生まれる。長い間、「どうなっているか」を見るのに最も適した人たちは、自分の知覚を形にする道具を手に入れることができなかった。形のない知覚は疲れるものだ。そして今、突然、その道具が登場したのです。私のような人間にとっては、まさに夢のような話です。
注意しなければならないのは、「道具の民主化」は、経済的、技術的に多くの制約を伴い、仕事の必要性から我々を救ってはくれないということだ。DVカメラを所有したからといって、何も持っていない人、あるいは自分に何かあるかどうか尋ねるのが面倒な人に、魔法のように才能が授けられるわけではありません。小型化しようと思えばいくらでもできる。しかし、映画には必ず膨大な作業と、それを行う理由が必要なのだ。
クリス・マルケル
パリ生まれの映画作家/プロデューサー/写真家など。サルトルの許で哲学を学ぶ。第二次世界大戦中、ナチスに対するレジスタンスに参加。『夜と霧』(1955 年)でアラン・レネの助監督を務める。『12 モンキーズ』(1995 年)のテリー・ギリアム監督を始め、影響を与えたクリエイターは世界中に数多い。監督以外にも、『ベトナムから遠く離れて』(1967 年)のプロデューサーなど、多彩な作品の誕生に寄与した。また数回来日もしている。
Chris Marker Documentary
テリー・ギリアム:『ラ・ジュテ』は編集が素晴らしかった、まるで音楽を聴いている感覚だ。リズム、声、それは詩そのものだった。
10分間のクリス・マルケル、ドキュメンタリー。出演:テリー・ギリアム(『12モンキーズ』)、マイケルシェンバーグ(映画プロデユーサー) 『12モンキーズ』はマルケルの『ラ・ジュテ』にインスパイアされたと言われている。
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上映作品冒頭約60秒紹介
『北京の日曜日』
1956 年/フランス/カラー/DCP/20 分
ある日曜日のスケッチとして革命後の北京の人々や風景を鮮やかに描いた初期短編。
『シベリアからの手紙』
1958 年/フランス/モノクロ/DCP/61 分
開発途上のシベリアの街と風景や人々の様子をアニメーションやアーカイブ映像を挿入しつつ書簡形式のナレーションで描く。
『ある闘いの記述』
1960 年/イスラエル=フランス/カラー/DCP/57 分
1961 年ベルリン国際映画祭ドキュメンタリー部門金熊賞。1948 年の建国以来 12 年を迎えたイスラエルの複雑な現実を描く。第三次中東戦争以降、マルケル自身によって上映禁止に。
『イヴ・モンタン〜ある長距離歌手の孤独』
1974 年/フランス/カラー/DCP/60 分 出演:イヴ・モンタン
チリ難民支援コンサートのためにリハーサル中のイヴ・モンタンを映す。
『サン・ソレイユ』
1982 年/フランス/カラー/DCP/104 分
1983 年ベルリン国際映画祭 OCIC 特別賞/1983 年英国映画協会賞サザーランド賞/2014 年シネマ・アイ・オナーズ他。世界を旅するカメラマンから届いた手紙を朗読する女性。日本とアフリカ、記憶や旅をテーマに、フィクションやドキュメンタリー、哲学的考察が混在したマルケルの代表作の 1 本。
『レベル5』
1997 年/フランス/カラー/DCP/110 分 出演:カトリーヌ・ベルコジャ
ローラは亡くなった恋人の仕事を引き継ぎ沖縄戦についてのコンピュータ・ゲームを完成させようとする...仮想空–間
の中に現実と虚構が交錯するマルケル晩年の問題作。大島渚監督のインタビューをコラージュして用いている。
『クリス・マルケル特集 2022』予告編
5月27日(金)~6月16日(木) アップリンク吉祥寺にて公開
監督:クリス・マルケル
配給:パンドラ