『日本セルビア映画祭』滅多見る機会の国の良質な作品をみるチャンス!

『日本セルビア映画祭』滅多見る機会の国の良質な作品をみるチャンス!

2024-06-10 12:00:00

セルビア共和国は、ヨーロッパに位置しながら、EUにもNATOにも加盟していない。旧ユーゴスラビアでは、EUに非加盟なのは、スロベニア以外のすべての国だが、NATOには、スロベニア以外でもクロアチア、モンテネグロ、北マケドニアが加盟していて、セルビアとボスニア・ヘルツェゴビナの2カ国は加盟していない。

そういう意味でもセルビアは独自の路線を歩んでいる国だということが理解できる。現在の首都ベオグラードは、かつてのユーゴスラビアの首都であり、セルビアはユーゴスラビアの地域の中央であり、政治的中心地であった。そういった国が、欧州諸国の中では独自の歩みを続けている。それだけで、どんな国で、どんな国民が住んでいるのかが知りたくなるような、興味深い国である。

その国の映画作品を堪能できるのが、今回の日本セルビア映画祭だ。6月14日(金)から16(日)までの間、UPLINK吉祥寺で実施される。今回の映画祭は、セルビア作品だけでなく、日本作品も上映する。そもそも、この日本セルビア映画祭は通常の映画祭とはかなり趣が異なった映画祭だ。この映画祭の趣旨は映画を通じて、セルビアと日本の文化交流を促進 し、多様性を称え、芸術的なコラボレーションを促進するということにあり、セルビア共和国の首都ベオグラードと東京の両都市で開催するユニークな形式をとっている。

映画祭は2014年に第1回が開催され、今年は10年の筋目の年であり、「LASTING/永続」をテーマに、映画のジャンルや規模を問わず、様々な日本・セルビア両国の短編・長編映画が上映されるとのことだ。

今映画祭の中で、注目すべき作品として、セルビア映画の長編の中から3本を上げたい。

1本目は、6月14日(金)19:35から上映される“BEHEADING” 監督はシニシャ・ツヴェティッチ。
この“BEHEADING”は斬首という意味で、聖ヨハネが斬首形に処された日を祝日として敬う正教徒の「前駆授洗イオアン斬首祭」のことを指す。
映画はその祝日「前駆授洗イオアン斬首祭」の日に家族が集い、物語は展開する。祝賀会の主催者とその妻は離婚し、聖守護聖人の日が終わるまでは、特に次男のヨヴァン(ジョンに似たセルビア名)には離婚のことを秘密にするつもりだった。彼は鬱病で、大学にも行かず、仕事もせず、友達もおらず、ドラッグをやり、ノイローゼ寸前。ガールフレンドと暮らし、お金を稼ぎ、家族の中で最も自立した有能なメンバーである兄のドゥシャンとは正反対だ。その日、些細なことから大きなことまで、何もかもが計画通りに進まない。混乱の中で、ヨヴァンは現実逃避に耽る。アルコール、薬物、ストレスの影響で、家族と客人の間には次第に亀裂が入り始める...。

2本目は6月16(日)15:00から上映される“HAVE YOU SEEN THIS WOMAN”で、 監督はドゥシャン ゾリッチ,マティア グルシュ チェヴィッチの2人が務めた。
本作品は22022年のベネツィア国際映画祭国際批評家週間で上映された作品であり、内容は、「夏の暑い日、ドラギンジャは自分に似た死体を発見する。夏の日の暑い中、ドラギンジャは偽の夫を雇って友達の前で自慢します。寒い冬の夜、ドラギンジャは失われた記憶を取り戻すことを願って街をさまよいます。 3つの異なる人生の可能性を通して、中年女性は自分の肌から抜け出そうとする…」というものだ。

3本目は、同じ16日の18:25から、映画祭のクロージング作品として上映される“WHERE THE ROAD LEADS”。
監督はニナ・オグニャノヴィッチ。内容は「外国人の若者が村に足を踏み入れた途端、村の電気が止まる。近くに新しい高速道路ができたせいかもしれないが、もしかするとこの若者が関係しているのだろうか…?
やがて彼の到着の知らせは広まり、村人たちは二極化する。以前にもよそ者が村を訪れたことがあり、彼らには常に何か目論みがあるからだ。酒と饗宴の一夜が明けると、トラブルメーカーとして知られる乱暴な2人の村人が彼を殺そうとしているという噂が広まる。彼らの脅威を真剣に受け止めているのはヤナだけで、彼女はそれを阻止するために全力を尽くす。彼女にとっては、その外国人が村から出る唯一の切符なのだ」というもので、非常に興味深く、しかも美しい作品だ。

このように、非常に力を持った作品を東京にいながらにして見ることができるのは、恵まれていると言えるのではないか。ぜひ、この機会に、滅多に見ることのできない国の映画作品をご覧になっていただければ幸いである。

開催概要

第 10 回日本セルビア映画祭開催日程:2024 年 6 月 14 日(金)ー6 月 16 日(日) 会場:UPLINK 吉祥寺 スクリーン 3主催:CULTCRAVE/日本セルビア映画祭(JSFF) 共催:株式会社クローバーアーツ 企画制作・運営:株式会社クローバーアーツ/株式会社シンカ 協力:在日セルビア共和国大使館、UPS アカデミー

開催プログラム

※登壇者及び上映作品の予定は、都合により予告なく急遽変更になる場合がございます。
Day 1. 6/14(金)16:00 - 22:00
第 10 回セルビア映画祭の初日は、開会の挨拶、映画祭とテーマ紹介の後、映画界で著名なピーター・ウェーバー監督らが登場 し、日本の皆さまを JSFF 東京に歓迎いたします。 次の短編映画とアニメーションのプログラムでは、両国の多様で魅力的な作品を紹介します。本プログラムの最後には、映像制作 者と観客の方が直接会話することができる Q&A セッションが開催されます。 続いて、日本映画の専門家らによる、共同制作や国を越えた映像制作の新たな機会についてのパネルディスカッションが行われま す。
そして、Day1 の最後は、JSFF で審査員特別賞を受賞した長編映画、Sinisa Cvetic(シニシャ・ツヴェティッチ)監督 『BEHEADING』が上映されます。


プログラム A

➢ 16:00 - 16:15 Opening Greetings ○ 開会のご挨拶
○ 日本セルビア映画祭およびテーマのご紹介 ○ 特別ゲストによる歓迎の挨拶
Peter Weber ピーター・ウェーバー(映画監督)、角﨑 利夫(前在セルビア日本大使) Jovana Stevic ヨヴァナ・ステヴィッチ(JSFF マネージング・ディレクター)
➢ 16:15 - 18:10 JSFF Short Program(104’)
○ “MY UNIVERSE HERE” /曽根剛 (1')
○ “YOUR GUARDIAN” / Mimi Vlaović ミミ・ヴラオヴィッチ (20') ※日本語字幕
○ “直人と美咲の日々” /今野雅夫 (5’)
○ “遠まわりする青” /木村凌 (25')
○ “5/3/0” /Danilo Stanimirović ダニロ・スタニミロヴィッチ (18') ※日本語字幕
○ “THE FINAL ACT” /Una Bojić ウナ・ボイッチ (20') ※日本語字幕
※上映後、Q&A セッションあり
➢ 18:30 - 19:15 Panel Discussion (45’) 日本とセルビアの文化交流に向けて映像制作者にできること1
  
「セルビアとの共同制作の可能性について」 日本の映画関係者がセルビアでの経験、共同制作や国を越えた映像制作の新たな機会について語ります。 Panelist: 木村凌氏、生津徹氏、川村誠氏 、今野雅夫氏

プログラム B

➢ 19:35 - 21:45 Feature Film Screening
○ “BEHEADING” /Siniša Cvetić シニシャ・ツヴェティッチ (127') ※日本語字幕
Day 2. 6/15(土)15:00 - 21:00
第 10 回日本セルビア映画祭の 2 日目は、 JSFF2023 の受賞作品を中心に、日本映画の優美な世界に焦点を当てます。 この上映会では、選ばれた日本作品に対する海外審査員や観客の反応を反映させながら、両国の映画市場に共通する側面に ついて議論を深めます。

プログラム C

➢ 15:00 - 15:15 Day 2 プログラムの紹介
➢ 15:15 - 17:00 JSFF Short Program (86’)○ “SPRING, SUMMER, FALL, WINTER... AND” /曽根剛 (1')○ “THE OLD YOUNG CROW” / Liam LoPinto リアム ・ロピント (12') ※日本語字幕○ “MY FATHER'S DAMN CAMERA” /Milos Tomic ミロシュ・トミッチ (7') ※日本語字幕 ○ “FITNESS JIM” /Ognjen Isailović オグニェン・イサイロヴィッチ (25') ※日本語字幕○ “LIFE AFTER DEATH” /Ognjen Petković オグニェン・ペトコヴィッチ (18') ※日本語字幕 ○ “ゾウのかたち” /SANG YUXUAN クワ・ウケン (8')○ “MAGNIFIED CITY” /金子勲矩 (12')○ “RAPOLLO RIVER” / 榊原澄人 (3'12)※上映後、Q&A セッションあり
➢ 17:20 - 18:20 Panel Discussion (60’)日本とセルビアの文化交流に向けて映像制作者にできること2「日本の共同制作のシステムについて知っておくべきこと」 日本を代表するテレビ局や映像制作会社、政府機関関係者を招いて、日本の共同制作システムの背景や助成金の制度につ いて話し合います。Panelist: UPS アカデミー, JETRO, CULTCRAVE 他


プログラム D

➢ 18:40 - 21:00 Feature Film Screening ○ “さかなのこ” /沖田修一 (139')※上映後、Q&A セッション予定Day 3. 6/16(日)15:00 - 21:00日本セルビア映画祭のクロージングでは、文化交流に焦点を当て、フェスティバルの精神とアニメーション映画、短編の融合を要約 し、ベオグラード市で開催された JSFF の受賞作品を上映します。

プログラム E

➢ 15:00 - 16:20 Feature Film Screening○ “HAVE YOU SEEN THIS WOMAN” /Dušan Zorić ドゥシャン ゾリッチ, Matija Gluščević マティア グルシュ チェヴィッチ (79') ※日本語字幕

プログラム F

➢   17:00 - 19:05 ○ “取り残された人々:日本におけるシングルマザーの苦境” / ライオーン・マカヴォイ (78’)

プログラム G

➢ ○ ○Feature Film ScreeningClosing Greetings & Closing Film Screening“WHERE THE ROAD LEADS” / Nina Ognjanović ニナ・オグニャノヴィッチ (81') ※日本語字幕 19:25 - 21:00 閉会のご挨拶