『男女残酷物語/サソリ決戦』60年代のポップカルチャーに溢れた、どこか懐かしい、それでいてクールな魅力をもった作品

『男女残酷物語/サソリ決戦』60年代のポップカルチャーに溢れた、どこか懐かしい、それでいてクールな魅力をもった作品

2024-06-03 13:30:00

1969年の作品が、55年の時を経て、初めて日本で公開される。60年台のカルチャーと懐かしさが詰まった作品と言えるだろう。

エロチックスリラーという内容的には「精巧な拷問技術の達人という裏の顔を持つ慈善財団大幹部セイヤーは、ジャーナリストのメアリーを拉致監禁…」と、かなり“とんでもない”しろものだが、その“とんでもなさ”を楽しむことこそ、本作の楽しみ方だ。その“とんでもない”映画を、最後まで飽くことなく惹きつけているのが、本作品の美術、装飾、衣装であり、巨匠ステルヴィオ・チプリアーニの音楽であり、それらが相まって作り出される、非常にセンス溢れるクールな魅力だろう。

とにかく、とにかく悪い冗談にしか思えないエロスをテーマにしていながら、この映画は何者にも媚びていない、突き抜けた存在感を持っている。この時代のバディム監督作品の『バーバレラ』やこの『男女残酷物語/サソリ決戦』のフィリップ・ルロワが主演した『黄金の7人』など、この時代のこういった作品がお好きな方には、おすすめの映画だ。1960年代から70年代にかけて、この映画が持っているようなカルチャーに彩られた映画をみんなが楽しんでいたのは間違いなく、逆に、当時ではなく製作されてから55年経った今、見ることで、私たちに新鮮な驚きを提供してくれる。

雑学的ではあるが、この映画作品に登場する水陸両用のスポーツカーは、当時の西ドイツのメーカー「アールスルーエ」という会社が製造した“アンフィカー770”という自動車だ。水陸両用自動車として大量生産して市販された数少ない車である。実際には、あまり実用的ではなかったようだが、夢のある車だ。この映画の中では、そのアンフィカー770が颯爽と地上を走り、水上も優雅に航行する。これが見れるだけでも、嬉しくなる。

21世紀の現代、余裕のない生活を送る我々だが、たまには、こういう“とんでもない”映画を楽しんで、息をつくのも必要なことかもしれない。

 

イントロダクション

これまで一切日本に紹介された形跡のない、1969年のイタリア製ウルトラ・ポップ・アヴァンギャルド・セックス・スリラー『FeminaRidens』(原題)が、邦題『男女残酷物語/サソリ決戦』として、日本劇場初公開。

本作は、終わりなき男女の対決を描き、『華麗なる殺人』(65)、『バーバレラ』(67)、『女性上位時代』(68)といった時代を象徴する作品に匹敵する内容ながらも50年以上もの間埋もれ、海外でようやく近年その存在と価値を発見された作品だ。日本ではほとんど誰にも知られることなく、知られていないが故に誰にも待たれることもなく、存在自体が確認されていなかった。この上映で初めて、我々はこの傑作を発見することとなる。

主演は『黄金の七人』(65)、『女性上位時代』、『愛の嵐』(73)の名優フィリップ・ルロワと、マリオ・バーヴァやルチオ・フルチ作品にも出演したドイツの女優ダグマー・ラッサンダー。音楽は『ベニスの愛』(70)『夜行性情欲魔』(71)『血みどろの入江』(71)等を手掛けるイタリア映画音楽の巨匠ステルヴィオ・チプリアーニ。エンニオ・モリコーネの影響も垣間見える極上のラウンジ・ミュージックをベースにポップ、サイケデリック、ジャズを縦横無尽に駆け巡るチプリアーニの美しいメロディは映画を飛び越えて独立した存在感を発揮、本作の「メリーのテーマ」は世界的な人気を誇る。また、美術面では射撃絵画や女性性を強調する巨大像<ナナ>で知られるフランスの芸術家ニキ・ド・サンファルが1966年にストックホルム近代美術館で展示した巨大娼婦像≪ホン≫のレプリカが使われ作品に忘れ得ぬ印象を刻むほか、記号の繰り返しによる空間構成で平面を造形するイタリアの抽象画家ジュゼッペ・カポグロッシ作品へのオマージュが劇中に施されている。

 

ストーリー

精巧な拷問技術の達人という裏の顔を持つ慈善財団大幹部セイヤーは、ジャーナリストのメアリーを拉致監禁、ハイテク装備満載の秘密のアジトで、想像を絶する肉体的、精神的凌辱の限りを尽くす。だが、言葉にできない恥辱を受けても微笑むメリーはセイヤーの想像を遥かに超えていた。弱音を吐き始めるセイヤー。いま、洗練と野蛮が表裏一体の、性の対決がはじまる。

 

『男女残酷物語/サソリ決戦』予告編

 

公式サイト

特報

 

2024年6月7日(金) TOHOシネマズ 日比谷、テアトル新宿、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

2024年6月14日(金) アップリンク京都

 

監督・脚本:ピエロ・スキヴァザッパ 製作:ジュゼッペ・ザッカリエーロ 撮影:サンテ・アキーリ
美術:フランチェスコ・クッピーニ 衣装:エンリコ・サバティーニ 編集:カルロ・リアリイ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:フィリップ・ルロワ、ダグマー・ラッサンダー、ロレンツァ・グェッリエリ、バロ・ソレリ、マリア・クマニ・クアジモド、ミレッラ・パンフィーリ
キングレコード提供 アンプラグド配給 イタリア残酷超特作

1969年|イタリア映画|ビスタ|90分|原題:Femina Ridens|英題:The Laughing Woman / The Frightened Woman|映倫区分:G / 
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