『エコー・イン・ザ・キャニオン』60年代のローレル・キャニオンの素晴らしさと名曲誕生の秘話が綴られた音楽ドキュメンタリー

『エコー・イン・ザ・キャニオン』60年代のローレル・キャニオンの素晴らしさと名曲誕生の秘話が綴られた音楽ドキュメンタリー

2022-05-23 12:00:00

60年代後半から70年代にかけて多くのミュージシャンが住み、数々の名曲を生み出したロックの聖地、ローレル・キャニオンを巡る音楽ドキュメンタリー。今年のGWに公開されたROCK UMENTARY 2022の音楽3部作の内の1つ『ローレルキャニオン 夢のウエストコースト・ロック』に続く、聖地へのオマージュ第二弾だ。

ロサンゼルスに本社を持つキャピトル・レコードの代表を務めたアンドリュー・スレイターが監督を務め、ボブ・ディランの息子でミュージシャンのジェイコブ・ディランが、インタビュアーと共にエグゼクティブ・プロデューサーを務める。

2018年9月に開催されたロサンゼルス映画祭のオープニングを飾った本作。2019年5月24日にロサンゼルスの2館で上映が始まり、2019年のドキュメンタリーとしては5ヶ月以上にのぼるロングラン、アートハウス系では異例の330万ドル以上の大ヒット映画となった。

ローレルキャニオンの地で、互いに切磋琢磨しながらカリフォルニア・サウンドが創り上げられて行った様子が、超大物ミュージシャンらの言葉によって生き生きと語られてゆく。60年代の音楽制作秘話が盛り込まれた古き良き時代へのトリビュートであり、新たな時代に語り継がれるべき作品の一つであることは間違いない。

 

 

イントロダクション

この映画の発端は、2015年、LAのシンボルの一つに数えられるオルフェウム・シアターで開催された「エコー・イン・ザ・キャニオン・フェスティバル」。60年代に発表されたウェストコースト・ロックの名曲を、誕生から50周年を記念して、新しい世代のミュージシャンたちが演奏し、トリビュートアルバムを完成させるというプロジェクトだった。2001年から2007年にかけて、キャピトル・レコードの代表を務めたアンドリュー・スレイターと、エグゼクティブ・プロデューサーを務めたジェイコブ・ディランがタッグを組んで始めた企画である。

映画では、ジェイコブが聞き手となって伝説のミュージシャンたちにインタビューを行い、ウェストコースト・ロック誕生とその隆盛を紐解いていく。一方、トリビュートアルバムを作り上げるのは、ジェイコブ・ディラン、フィオナ・アップル、ベック、ノラ・ジョーンズ、レジーナ・スペクター、キャット・パワー、ジェイド・カストリノスなど、当時の音楽に影響を受けたミュージシャンたち。映画の完成と同時にアルバム「エコー・イン・ザ・キャニオン」も完成した。

 

 


リンゴ・スター    Ringo Starr


ブライアン・ウィルソン Brian Wilson


エリック・クラプトン Eric Clapton

 

ストーリー

ウエストコースト・ロックの聖地「ローレルキャニオン」。

ハリウッドのナイトクラブ街から車で5分のこの土地は、数々のアーティストがカリフォルニア・サウンドを作り上げた伝説の場所である。ザ・ビーチ・ボーイズが住み、ザ・バーズが最初のヒットを飛ばしてからウェストコースト・ロック・ブームが巻き起こった。保守的なNYとは対照的な、自由な風潮に溢れたLAの地にレコード会社や音楽スタジオも続々と集まり、ザ・ビートルズにも影響を与えた。彼らが好んでこの地を訪れるようになると、ますます多くのアーティストらを惹きつけることとなった。

本作には、リンゴ・スター、ブライアン・ウィルソン、ロジャー・マッギン、ジャクソン・ブラウン、ミシェル・フィリップス、トム・ペティ、エリック・クラプトン、スティーヴン・スティルス、デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、60年代から一線で活躍し、現在も人気を誇る有名ミュージシャンたちが出演、自分たちの音楽ルーツを語る。エリック・クラプトンとスティーヴン・スティルスがセッションしてバッファロー・スプリングフィールドの「クエスチョンズ」(68)の演奏をするシーンは、めったに見ることの出来ない貴重なシーンだ。

また、各ミュージシャンが影響を受けた音楽も明らかになる。
ビーチ・ボーイズのメンバーであり、ほとんどの曲を作っていたブライアン・ウィルソンは「ラバー・ソウル」(65)に影響を受け「ペット・サウンズ」(66)をリリース。今度はビートルズがこのアルバムに多大な影響を受け、翌年にコンセプトアルバムとなる「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を発表した。若き日のビートルズはザ・バーズからも感化されたという。クラプトンもザ・バーズ、ビーチ・ボーイズからは哲学的に、自身の曲「レット・イット・レイン」(70)は、バッファロー・スプリングフィールドの「クエスチョンズ」(67)から影響を受けている。60年代の音楽シーンは、国を越えて様々な形で刺激を受け合い、新しいものを生み出した時代であった。なおこの映画は、出演者の一人であるトム・ペティの生前最後のフィルム・インタビューとなった。

ジェイコブ・ディランが着想を得たという、60年代のローレル・キャニオンの情景を映し取った1969年のフランス・アメリカ合作映画『モデル・ショップ』(監督:ジャック・ドゥミ)。彼はこの映画で流れる曲を聴くうち60年代の音楽へ興味を抱き、このドキュメンタリーを作り始めた。『モデル・ショップ』の主演は、『2001年宇宙の旅』(68)でディスカバリー号の副船長を演じたゲイリー・ロックウッド、相手役は『男と女』(66)のアヌーク・エーメ 。ジェイコブ自身が生まれた年に公開されたこの映画の影響は大きく、彼は『エコー・イン・ザ・キャニオン』でも映画と同じ車に乗り、同じ角度でローレル・キャニオンの街角を映すなど、オマージュを捧げている。

 


ジェイコブ・ディラン Jakob Dylan


ローレル・キャニオン

 

S O N G S


Turn! Turn! Turn! (65)/ The Byrds

 

Wild Mountain Thyme (66)/ The Byrds

I Want To Hold Your Hand (63)/ The Beatles

 

I’ll Feel A Whole Lot Better (65)  / The Byrds

Bells of Rhymney (65)/ The Byrds

It Won’t Be Wrong (66)/ The Byrds

California Girls (65)/ The Beach Boys

Sloop John B (66)/ The Beach Boys

In My Room (63)/ The Beach Boys

You Still Believe In Me (66)/ The Beach Boys

 

Pet Sounds (66)/ The Beach Boys

I Just Wasn't Made For These Times (66)/ The Beach Boys

Dedicated To The One I Love (67)/ The Mamas & the Papas

California Dreamin' (65)/ The Mamas & the Papas

 

Monday Monday (66)/ The Mamas & the Papas

Boys and Girls Together (67)/ The Mamas & the Papas

Go Where You Wanna Go (65)/ The Mamas & the Papas

You’re Gonna Lose That Girl (65)/ The Beatles

If I Needed Someone (65)/ The Beatles

You Showed Me (69)/ The Byrds

For What It’s Worth (66)/ Buffalo Springfield

Mr. Soul (67)/ Buffalo Springfield

Bluebird (67)/ Buffalo Springfield

Questions (68)/ Buffalo Springfield

 

Black Queen (70)/ Stephen Stills

 

The “In” Crowd (65)/ The Ramsey Lewis Trio

 

Never My Love (67)/ The Association

 

Somebody Groovy (66)/ The Mamas & the Papas

Ding Dang (77)/ The Beach Boys

Goin’ Back (67)/ The Byrds

Triad (68)/ The Byrds

Expecting To Fly (67)/ Buffalo Springfield

What’s Happening?!?! (66)/ The Byrds

 


(向かって右から)ジェイコブ・ディラン Jakob Dylan/ベック Beck /ジェイド・カストリノス Jade Castrinos/レジーナ・スペクター Regina Spektor

 

『エコー・イン・ザ・キャニオン』予告編

 

【本編映像】世界一豪華な住宅地!?『エコー・イン・ザ・キャニオン』

 

公式サイト

 

5月27日(金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー

 

監督:アンドリュー・スレイター
脚本:アンドリュー・スレイター、エリック・バーレット
出演:トム・ペティ、ブライアン・ウィルソン、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、スティーヴン・スティルス、デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、ジャクソン・ブラウン、フィオナ・アップル、ベック、ノラ・ジョーンズ、キャット・パワー、ジェイコブ・ディラン

2018年/アメリカ/原題:Echo in the Canyon/ビスタ/83分/5.1ch

日本語字幕:本田久乃
配給・宣伝:アンプラグド

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