『映画コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』見どころは4人のママさんミュージシャン!夢の形と生き方に共感するだろう

『映画コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』見どころは4人のママさんミュージシャン!夢の形と生き方に共感するだろう

2024-04-09 20:47:00

『コザママ うたって!コザのママさん!!』は、沖縄を舞台にした作品を撮ってきた東京出身の中川陽介監督作品。2009年から沖縄県糸満市に移り住み、トマトやインゲンを栽培する農家となり、コンスタントに短編映画などを制作する中で、14年ぶりに長編作品を監督した。

中川監督によると、コザのシャッターが降りた店の多い商店街“銀天街”の「街興し」、実在する喫茶店 ”ノア”のオーナーが店を「子供の居場所」として開放していること、そしてベトナム戦争当時街で流れていた「R&B」、この3つのキーワードをもとにコザママの物語ができあがったという。

映画の見どころは、4人のママさんミュージシャン。演じるのはJimama(シンガーソングライター)、新垣美竹(ドラマー)、畠山尚子(俳優・演技講師)、上門みき(俳優)。沖縄在住の4人のキャストのリアリティあふれる演技を通して、映画の中のそれぞれの夢の形と生き方に共感するだろう。

長年の中川監督の友人で本作の音楽を担当した澤田譲治は「長い間、彼の映画作品を見てきた音楽家として、彼の人生の一つの到達点であると感じたし、彼の劇場再デビューを飾るに相応しい、深みのある作品だと思います」とコメントを寄せている。

 

中川陽介 監督インタビュー


ーーこの作品『コザママ♪ うたって! コザのママさん!!』ですが、既に沖縄県内では封切られているんですよね。観客の反応はどうですか?

いいですよ。公開が決まるときに驚いたのは沖縄で一番大きな配給会社が手を挙げてくれたこと。一気に4館で上映してくれました。当初二週間の約束だったのが、最終的に二ヶ月にも延びました。もうそろそろ終わりかな?と思っていたら週末にまた伸びる、その繰り返しで。舞台となったコザ銀天街を知っているオジイやオバア達が、街を懐かしがってきてくれましたね。


ーー映画の企画が生まれたきっかけはどこにあったのでしょう。

コザ十字路通り会会長の森さんと“映画制作によるまち興し”の話をしたのがきっかけです。最初は探偵モノとかを考えていたのですが、県からの補助金が出る話もあって、ならば街を救うママさん達の話というのを漠然と構想していたんです。銀天街を取材していくうちに、ストーリーがどんどん固まっていった。そんな感じです。主人公の一人は子ども食堂的なことをやっているカフェを経営しているのですが、それもリアルな話。そしてあったので脚本に落とし込みました。


ーー舞台になったのはコザ銀天街。かつてコザと呼ばれた沖縄市にある商店街で、戦後のアメリカ統治下では米兵達で賑わった凄い繁華街だったと聞いています。

コザ銀天街はそのころ黒人街と呼ばれたくらい、米兵の中でも黒人兵が多かったんだそうです。沖縄に来ても区別され、差別されていた黒人兵達の歓楽街がここにあって、そこではみんなR&Bを聴いていたんだそうで。おばあ達が「みんなドーナツ盤は黒人たちの音楽ばかりだったよ」「でもあいつら、嘉手苅林昌だけは踊るわけサー」なんて話してくれる。それが面白くて(笑)。ドンドン興味が高まっていきました。


ーーコザと言えば沖縄ロックのメッカとして知られていますが、そうではないエリアもあったと。

ええ、コザはハードロックだろうと思っていたんだけど、それとは全く違う埋もれた歴史がそこにはありました。


ーーそもそも「銀天街」というのは、アーケードが設置された商店街を指す呼び名で、○○銀天街というのが全国あちらこちらにあります。コザ銀天街はアーケードそのものも数年前に撤去されて、すっかり寂れた印象ですが。

そう。今はぱっと見死に体で、年中シャッターが閉まっています。でも夜になると何軒か店が開くんです。完全には死んでいない。新しいなにかがくすぶっている感じですね。


ーーところで中川さんは東京出身なのに、監督デビュー以来作品をずっと沖縄で撮り続けていますね。

僕はもともとアメリカン・ニュー・シネマが好きで、その後に続くアジア映画の流れに興味を持ちました。そうした作品は街の魅力が強いと思っていて、自分が最初に撮るときにそういった場所を探しました。そうやって見つけたのが那覇だったんです。そこからは沖縄を舞台に、沖縄の街を借景として撮っていました。


ーーフィルモグラフィーを観ると初監督作品の『青い魚』から既に注目を集めていて、メジャー作品では長澤まさみさんや鈴木京香さんほか、著名な俳優さんを起用した大きな映画制作も手がけていらっしゃいます。14年振りに劇場用長編映画のメガホンを撮られた本作は、ほぼ沖縄で活動する俳優さん達を起用した“オール沖縄”な顔ぶれですね。借景からドップリ沖縄に浸かった作品になりましたね。

ほぼ全員沖縄キャストです。東京からやってくるプロデューサー役の 芳野友美さんが福岡出身ですが。後はウチナー(沖縄)ばかり。メジャーで映画を撮るときは、有名なキャストを招いてヒットを狙うわけですが、彼らが慣れないウチナーグチ(沖縄方言)を話したりすると、みているうちなーんちゅはワジワジー(イライラ)するわけですよ(笑)だけれどもこれはいわば県産の作品だからそれに囚われないので、沖縄の役者さんを使いたいと思ったんです。あちこち沖縄の小劇場とかをまわって徐々に声をかけていきました。スターでなくても、あくまでも上手い人を選びました。
主役の4人の中で上門みきさんと畠山尚子さんが役者でjmamaさんと新垣美竹さんはミュージシャン。上門さんは小劇場で芝居を観たら圧倒的に上手かったんです。役になりきる力が強い、安心する存在です。ウチナーグチもうまいからとてもリアルですね。名コメディエンヌぶりを発揮した畠山さん沖縄アクターズ出身で子役から演っている方ですが、コメディもいける。ドラマーの役は演奏シーンがあるので、実際に叩けないとバレちゃうんですよね。それもあって現役ドラマーの新垣さんを選びました。一番苦労したのはヴォーカルですね、ココが嘘だと映画そのものがこけてしまうので。音楽の沢田穣治さんと相談していて、二人とも真っ先に名前を上げたのがjimamaでした。知っていたのですぐに電話して。「監督、久しぶり〜」「相談だけど、ちょっと映画出ない?」「いいよー。どうせちょい役でしょ?」「いや、主役で」(笑)


ーー子どもたちも沢山出てきますね。

なるべく地元を巻き込みたいと思って、出演者募集の説明会を開いたんですが、恥ずかしいのか誰も来てくれないんです。それで地元のダンススクールに企画書を持っていくつか相談に行ったら、あるスクールが興味を持ってくれて。それがきっかけで広まってくれて、さらにお母さん達にも飛び火していきました。昔はエイサーとか三線を通してのコミュニティが地域にあったのが、最近では無くなりつつあります。むしろ今はダンスを軸に新しいコミュニティができつつあります。


ーー音楽もこの作品の大きな軸ですが、担当の沢田穣治さんはショーロ・クラブでの活躍や作曲家としての作品、そして映画音楽など幅広いフィールドを持った音楽家ですね。

もうずっと組んでもらっています。今回はシンプルにR&Bの曲で、とお願いして、後は銀天街を一緒に歩いて回りました。コテコテのR&Bを予想していたら、出てきたのは今時のジャズファンクみたいなものでした。でもそこには沢田さんの想いがあるのだろうと思っています。


ーー沢田さんが手がける他の仕事をみていると、挿入歌の「100 回目のキス」なんてポップな曲が書けるのかと、ちょっと驚かされますね。ともかくコザ=ロックという今までの図式から外れていることもあって、とてもユニークだと思います。

コザを舞台にした映画は何本もあるんですが、暴行事件やコザ暴動であったりを取り上げるばかりで、住民からするともう充分だと思われている。だからそういったことではない部分をこの作品では描きたかったんです。


ーーその一方で、ジョニー宜野湾さん、そしてjmamaさんが歌う「燃える街」は、真正面からコザ暴動を扱った曲ですね。詞は監督が書かれたのですか。

はい。あの歌は(沖縄やコザの歴史を)知らないとピンとこないと思います。「街が燃えている」ってなんだ?と思うばかりで。でも映画を観て歌詞を聴いてくれたときに、わかる人には伝えたいと思いました。上から声高に押しつけるのでは無く、事実を歌って、後で聴いた人があの歌はなんだったのか?という気づきがあればいいなと。


ーーそこ以外にも、沖縄の人でないとわからない笑いのツボも埋め込まれていますね(笑)

結構沖縄度が強いですね。その攻め具合は難しいところですね。ウチナーグチのギャグも連発しいてます。でもまあ改めて説明しなくてもいいかな?と思っています。


ーー後半で上門さんの夫役を演じるKジャージさんが、稼ごうとする音楽でないからこそ尊いと諭しますが、沖縄は一流の唄者でも別の仕事を持っているのが普通だったりする。それはこっち側からすると羨ましい点なのですが。

東京に住んでいて音楽をやると言ったら「それ幾らになるの?」「食えるの?」「テレビで出るの」という基準で語られます。エンタメ=商売としてしか捉えられない。沖縄で暮らして10年を越えて気づいたんだけど、オジイオバアがみんな芸達者で、海人のオジイに三線弾かせたらものすごく上手くてビックリしたなんて話があって、そんな人が普通に居るけど、みんなそれで食おうかなんて思ってない。僕は今農家をやっているんですが、地元の農家さんにいわれるのは「農業だけで生活しちゃだめだよ」「金儲けだけだと人生つまらないよ、歌三線でも踊りでもやったらいいよ」ということ。最初はわかりませんでした。だって映画を棄てて農家をするために沖縄来たのに、なんで今更そんなことを言われるんだろうと。でも今になって金を稼ぐだけの人生なんて味気ないと思う様になりました。今回久々に映画を作ってみんなと大笑いしながら弁当食っている日々はとても楽しかったです。そして農繁期の今は農家に戻って野菜を作っている。そういう部分が沖縄の文化だし、沖縄に限らず田舎には残っていると思います。


ーー中川さん自身、一度は映画界から身を退いて、農家をやろうと沖縄に来たんですよね。でも久々のメガホンで銀天街同様に監督としての中川さんのシャッターも開きそうですね。

そうかもしれません(笑)。でも僕はやっぱりあくまでも農家ですよ。

 

中川陽介
監督
武蔵大学経済学部を卒業後、1984年出版社入社。若者向けの雑誌編集部でデスク、FM番組やビデオ監督、プロデュース。
95年退社後、97年『青い魚』で映画監督デビュー。98年ベルリン映画祭ヤングフィルムフォーラム正式招待作品選出のほか、数々の映画祭に招待、上映された。続く『Departure』では、サンダンス・NHK国際映像作家賞優秀賞、ベルリン映画祭ヤングフィルムフォーラム正式招待。
05年『真昼ノ星空』(主演:鈴木京香)がベルリン国際映画祭のヤングフォーラム部門に正式出品。
09年『群青 愛が沈んだ海の色』(主演:長澤まさみ)後、沖縄・糸満市に移住し、農家になる。
18年に小説『唐船ドーイ』で新沖縄文学賞受賞。19年に10年ぶりにメガフォンをとり、短編映画『コザンチュ探偵新垣ジョージ』を総監督・脚本。
以後、コンスタントに短編映画を制作し、23年、14ぶりとなる長編映画『コザママ♪うたって!コザのママさん!!』で劇場に復帰した。
デビュー以来全ての作品を沖縄で撮影。また、音楽監督・沢田穣治は、3作目『FIRE!』(02年)以来全ての作品の音楽を手がけている。

 

ストーリー

沖縄のR&Bの聖地・コザを舞台に、
再起をかけたママさんバンドの奮闘がはじまる!
夢を追う全ての女性たちに送る、うちなーミュージックエンタテインメント

高校時代に大人気を博したR&Bバンド『銀天ガールズ』。
20年を経て、それぞれ家庭をもつアラフォー世代となったメンバー4人が、
地元の沖縄・コザの商店街「銀天街」の街おこしを目指して再結成!
街の不況や子供たちの貧困など、さまざまな事情を抱えながらも、青春と人生を取り戻し、コザの街を再び輝かせるべく、バンド活動で再起をかけることになるが……


銀天街について

◆銀天街とは

銀天街は、ゴヤ十字路から西約2km、国道330号線と331号線との交差点(コザ十字路)の南側の一角にある。住所は沖縄市照屋。
78年にコザ十字路の本町通りと十字路市場が合併し、銀天街振興組合が誕生し、アーケードが設置された。米軍だけでなく、地元市場として活況を呈し、最盛期には120店舗にも。

◆照屋と公民権運動

ベトナム戦争と時期を前後して、米国内では差別による人種対立が激化。沖縄の米軍も例外ではなかった。歓楽街だったコザでも、胡屋地区は白人街、照屋地区は黒人街と、エリアが分かれていた。
黒人たちにとって照屋は、差別から自由でいられる、まさにユートピアだった。公民権運動や「ブラック・イズ・ビューティフル」というスローガンの熱気が感じられる街。もちろん、街にはR&Bなどのブラック・ミュージックが流れていた。

◆基地景気の縮小と現在

ベトナム戦争終結によって軍備縮小と軍人が減少。また、ドル円の変動相場制への変更と85年のプラザ合意更になどで急激な円高に。71年までの1ドル360円だったが、85年には150円代になった。結果米軍人は派手にドルを使用しなくなった。91年にバブル崩壊で更に景気は冷え込み、シャッターを閉める店が増えていった。2020年に、老朽化したアーケードが撤去された。23年現在も多くの店がシャッターを閉めている銀天街だが、Cafe NooRの放課後の子どもたちの受け入れや銀天街プラザなど、新しい取り組みが始まっている。

 

『映画コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』予告編


公式サイト

 

2024年4月12日(金) アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

Cast
上門みき 畠山尚子 新垣美竹 jimama
芳野友美 田島龍 ジョーイ大鵞 ナオキ屋 ゆっきー(キャン×キャン)
謝花喜司・石川 賢・喜瀬 剛(さんさんず)
K ジャージ 仲座健太 山内千草 玉城満 ジョニー宜野湾

Staff
原案・監督・脚本:中川陽介 脚本:山田優樹
音楽:沢田穣治 撮影・編集:砂川 幸太 録音:横澤匡弘
ゼネラルプロデューサー:森 寛和
プロデューサー:上里忠司 音楽プロデューサー:森脇将太
配 給:ミカタ・エンタテインメント 宣伝:MAP

2022/日本/カラー/116分
©︎YOSUKE NAKAGAWA / SOUTHEND PICURES