『リトル・エッラ』超絶チャーミングな女の子が繰り広げる笑いに満ちたハートウォーミングストーリー

『リトル・エッラ』超絶チャーミングな女の子が繰り広げる笑いに満ちたハートウォーミングストーリー

2024-04-01 23:50:00

『リトル・エッラ』

小生意気でかわいいエッラの顔を見て、思わず顔がほころぶ人も多いはず。しかしこのエッラ、ただのかわいい女の子ではない。強者だ。

監督を務めるのは、『ロスバンド』のクリスティアン・ロー。2008年に出版されたピア・リンデンバウム著 “Lill-Zlatan och morbror raring”(『リトルズラタンと大好きなおじさん』)という絵本の映画化である。本作で長編映画デビューを果たしたアグネス・コリアンデルが主人公エッラをこの上なくチャーミングに演じる。親友のおじさんトミーには『マスター・プラン』のシーモン・J・ベリエル。

エッラにとっての友情と嫉妬の物語がメインにあり、同性愛者の恋愛がサイドストーリーとして描かれる。全体を通して寓話的だが、同性愛の物語に限ってはメインでない形で組み込まれることで、なぜだかとてもリアルに映る。

洗練された色使いが光る、北欧らしいおしゃれでキッチュで笑いあふれるハートウォーミングストーリー。恋人同士にもファミリーにも、子供にも大人にも、男性にも女性にもトランスジェンダーにも掛け値なしにおすすめでき、観終わったあとの爽快感も格別だ。

「花にあふれた庭も ちょっといいかもしれない」
観れば分かる最後のこのセリフが心憎い。気になる人はぜひ劇場で確かめて!

 

クリスティアン・ロー 監督インタビュー


――なぜ『Lill-Zlatan och morbror raring』を題材に映画を作ろうと思ったのですか。

私が監督を務めた前作の『ロスバンド』で、スウェーデン側の共同プロデューサーをしてくれたSnowcloudのペッテル・リンドブラードから連絡をもらいました。『ロスバンド』ではいい仕事ができましたし、また一緒に仕事ができたらと思っていました。脚本と原作を読んで、その世界観や登場人物、ストーリーに夢中になり、友情や嫉妬を扱ったこの物語を映画にするのは楽しそうだと思いました。嫉妬というのは誰もが人生で抱く、難しい感情ですよね。


――原作との出会いは?

原作はスウェーデンで高く評価されている有名な作品で、児童文学の名手であるスウェーデン出身のピア・リンデンバウムが書いたものです。私自身、聞いたことはあったものの、プロデューサーにこの映画の話を聞くまでは読んだことがありませんでした。

――脚本を初めて読んだとき、どう思いましたか。

サーラ・シェー、エッラ・レムハーゲン、ヤンネ・ヴィエルトによる脚本は素晴らしいものでした。特にサーラとは私がこの映画制作に加わってから何度もやりとりを重ね、彼女とともに脚本の最終版を仕上げました。最終版では物語がもっと面白くなるような要素を加えました。原作は30ページほどの絵本です。それを長編作品にするにはある程度の要素を足す必要があります。その例がカーチェイスです。原作にこのシーンはなく、サーラと私で作りました。

――スウェーデンのスタッフや俳優陣との撮影はどうでしたか。苦労したことはありますか。

カッティ・エードフェルトという助監督に恵まれました。彼女自身も監督業をしています。スウェーデン語とノルウェー語は非常に似ているので、言葉を理解することはできますが、話が難解になったり、誤解をしてしまったりすることもあります。カッティはそういうときに助けてくれました。撮影に関してはたいていのことはスウェーデンもノルウェーも似ています。ディレクションに関して言えば、適切なエネルギーが備わっていれば、それは直感で分かると思っています。スウェーデンでの撮影はノルウェーでの撮影と比べてもそこまで違う点はありませんでした。スタッフもキャストも素晴らしい人ばかりです。

――エッラ役のアグネス・コリアンデルのキャスティングには、どのような経緯があったのでしょうか。

キャスティングはマッギー・ヴィードストランドが担当してくれました。彼女は敏腕のキャスティング・ディレクターで、経験も豊富です。近年制作されたスウェーデン映画の子役のキャスティングを多く手掛けていました。マッギーがアグネスを紹介してくれて、私たちは満場一致で「彼女は完璧だ。素晴らしい俳優だ」と思ったのです。

――原作にはエッラのクラスメイトであるオットーは登場しませんが、どこから着想を得たのでしょうか。

物語を面白くするために、脚本家たちがオットーという存在を考えてくれました。スティーブを追い出したいエッラを助けてくれる名発明家の男の子です。サーラはきっと知り合いの子どもから着想を得たのだと思います。


――エッラとトミーの行きつけのお店として寿司レストランを選んだのはなぜですか。あの場所は実在するお店なのでしょうか。

あの寿司レストランは実際には存在しません。ただ私には娘がいて、娘の幼い頃の好物は寿司でした。そのため寿司レストランにしようと思ったのです。そしてエッラとトミーは歌うことが大好きです。こうして寿司カラオケレストランが出来上がったのです。

――前作の『ロスバンド』でもカーチェイスのシーンがありました。監督は車やカーチェイスがお好きなのですか。

ははは(笑)車やカーチェイスが出てくると楽しいですからね!

――本作ではエッラの抱くジェラシーに焦点を当てていますが、監督が子どもの頃にジェラシーを感じたエピソードがあれば教えてください。

ずっと欲しいと思っていたレゴのお城を友達が買ってもらっていたときや、兄や姉の友達が家に来ても、弟である私は遊びに入れてもらえなかったときに、ジェラシーを感じたのを覚えています。

――原作および本作では同性愛を扱っています。多様性を描く絵本は、ノルウェーやスウェーデンなどの北欧の国々ではよく見られるものなのでしょうか。

私が子どもの頃よりも一般的になったように思いますし、それは良いことだと思います。本作では同性愛をメインテーマにしているわけではありませんが、その見せ方が気に入っています。この物語は世界のありのままの姿を描いていると思います。男性を愛する人もいれば、女性を愛する人もいる。愛は愛なのです。エッラにとっては友情と嫉妬の物語です。トミーの恋人であるスティーブが現れ、トミーを独り占めしてしまうので、エッラはジェラシーを感じるわけですが、トミーの恋人が女性であっても嫉妬することには変わりはないでしょう。物語は同じように展開するはずです。大好きな親友を独り占めする人物の存在が気にくわない。エッラはトミーの関心を独り占めしたいのです。

――劇中歌の『You and Me Song』との出会いは?この曲を使うことにした理由は何だったのでしょうか。

私も脚本家のサーラも若い頃からこの曲とバンドのことを知っていました。この曲を使おうと提案してくれたのはサーラだったと思います。ふたりともこの曲はストーリーにぴったりだと思いました。The Wannadiesの作曲家がOKを出してくれたときはとてもうれしかったのを覚えています。

――監督の作品では音楽がキーになっているように思えますが、ご自身も音楽が好きなのでしょうか。

はい、大好きです。音楽は私の子ども時代を形作る大きな要素です。若い頃はバンドで演奏していましたし、バンドでの演奏を通して、人が持つ原動力や感情の多くを学びました。音楽を演奏することで得た原動力を、私は自身の作品や映画制作に反映させていると思います。

――日本の皆様にメッセージをお願いします!

この物語やキャラクターたちを楽しんでくれたらうれしいです。「友とは人生の庭に咲く花」ですからね!

クリスティアン・ロー
監督
1977年、ノルウェー・ヴィンストラ生まれ。子どもや家族を描いた作品を得意とする映画監督。ドラマチックで魅力的な作品の中で生き生きとした登場人物を描くことで観客を楽しませ、若者の視点で物語を語り、彼らが抱く思いやりの心や衝動を描くことに主眼を置いている。2001年、イギリスのサリー・インスティテュート・オブ・アート・アンド・デザイン大学(現UCA芸術大学)の映像制作科を卒業。卒業制作の『PUNKTERT(PUNCTURED)』(01)をはじめとする子ども向けの短編作品で数々の賞を獲得した。ノルウェーを舞台にロック大会を目指す若者たちを主人公にした長編3作目の『ロスバンド』では2018年のベルリン国際映画祭ジェネレーション部門にノミネート。4作目の本作『リトル・エッラ』では舞台をスウェーデンに移し、めいとおじさんの物語を暖かく軽快なタッチで描いた。

 

ストーリー

人と仲良くするのが苦手な人もいる。特にエッラにとっては難しいことだった。
エッラが唯一仲良くできるのは、おじさんで“永遠の親友”であるトミーだけ。
両親が休暇で出かけている間、トミーと過ごすのを楽しみにしていたエッラだったが、夢の1週間は悪夢へと変わってしまう!
オランダからトミーの恋人スティーブがやってきたのだ。
トミーとスティーブは英語で話すため、何を話しているのか全く分からないエッラ。
のけ者にされたような気分になり、トミーを取られるのではないかと気が気でない。
親友を取り戻したいエッラは、彼女と友達になりたがっている転校生オットーの力を借りてスティーブを追い出すための作戦を実行するのだが……。


『リトル・エッラ』予告編


公式サイト

 

2024年4月5日(金) 新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、シネマート心斎橋、ほか全国順次ロードショー

 

監督:クリスティアン・ロー
出演:アグネス・コリアンデル、シーモン・J・ベリエル、ティボール・ルーカス 他
原題:LILL-ZLATAN OCH MORBROR RARING|スウェーデン・ノルウェー|2022|81分|カラー|スウェーデン語・英語|フラット|5.1ch|映倫G|日本語字幕:高橋彩|字幕監修:速水望|後援:スウェーデン大使館・ノルウェー大使館
配給:カルチュアルライフ|宣伝:VALERIA

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