『WILL』俳優・東出昌大に密着。狩猟によっての野生の命をいただき、生きながらえる命とは何か?

『WILL』俳優・東出昌大に密着。狩猟によっての野生の命をいただき、生きながらえる命とは何か?

2024-02-14 16:26:00

本作は、俳優・東出昌大の山での狩猟生活に、約1年間密着したドキュメンタリーである。しかし、なんだかテイストが違う。

東出のスキャンダルとリアルな心の葛藤をありのままに映し出し、そこへ彼の葛藤を代弁しあぶり出すようなMOROHAの詩が重なり、ドラマ仕立てとも違い、もちろんMVでもないが、それらが渾然一体となって物語全体のうねりを構成している。フィクションやドキュメンタリーといったジャンルをはるかに超越した音楽的な映像体験で、「一体私は今、何を観ているのだろう?」といった気持ちになるのだ。

監督を務めるのは優里の『ドライフラワー』などMVや、藤井風のドキュメンタリーなどを手がける、高知生まれの映像作家・エリザベス宮地。同じくMVを手がけるミュージシャンMOROHAのライブで東出昌大と出会い、本作が誕生する。MVを数多く手がける彼らしく、映画は一貫して音楽的で、それがまた命の躍動を感じさせる。

本作の中で、狩猟を始めた東出にとっての憧れの存在、登山家で作家でもある服部氏が、「命とはなんですか?」という質問にこう答えている。

「命とは、命を食べる存在です。自分の食い物と一緒に生きてんだよね。お互い食い物同⼠のものが、同時に生きてる。俺たち人間だけが、自分の食い物を畑や家畜で管理して生態系から離れようとしてるけど、それでは本当は生きていけないんじゃないか。自分が食われることも含めて、生態系とうねっていかなきゃ存在できない。命って言うと、一つの個体みたいなイメージがあるけど、全部を含めたごっちゃの命の方が、本当の命。今回殺した鹿も、俺も、俺らが思ってるほど境界線はない。命の集団というおっきい存在として一緒にいて、それが食ったり食われたりで混ざり合ってるイメージを、最近持ってる」

もしこの命の感覚を多くの人が共有できるようになれば、人は生かし生かされる大いなる命とのつながりを常に感じながら、力強く生きていけるようになるのかもしれない。命をいただくこともせず、ただただ誰かのちっぽけなエゴのために、あるいは大義のために行われてきた戦争による“無駄な死”をすこしは減らせるのかもしれない。

野生の動物たちの亡骸を丁寧に食する東出たちの姿には、そんな前向きな思いを喚起させる力があった。仕留めた鹿の内臓をその場で引っ張り出し、川で血を洗い、鹿を体に巻きつけて車まで運び、山小屋に帰って捌き、調理していただく。命と向き合うパワフルな日々を通じて、彼自身が再生していくプロセスに、観る側も大いに力をもらえる一作だ。

東出昌大
1988 年、埼玉県生れ。俳優。映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューし、同作で第 67 回毎日映画コンクール、スポニチグランプリ新人賞。第 36 回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。NHK  の連続テレビ小説『あまちゃん』、『ごちそうさん』、『コンフィデンスマン jp』など数々のドラマに出演。最近の主な出演作は映画『とべない風船』、『天上の花』、『Winny』、『福田村事件』など。

 

エリザベス宮地 監督コメント



「子宮」

東出が発砲し、山道を走り、

獲物の解体を始めてからはじめて口にした言葉だった。

彼の右手には言葉通りのそれが握られていた。

〝役者の東出がどうして狩猟をしているのか〟

その答えを求め狩猟に同行したが、

納得するための都合のいい言葉や理由が目の前の臓器や自

然には追いつかないのを痛感した。

東出と共に、答えのない旅をした1年間の記録。

 

エリザベス宮地
監督・撮影・編集
1985 年、高知県生まれ。映像作家。2016 年に公開した元恋人と過ごした 2 年間を当時の写真と映像で綴った MO ROHA『バラ色の日々』MV が話題を集める。2020 年に公開した優里『ドライフラワー』MV はトータルで 2 億回再生を越える。ドキュメンタリーの最新作として BiSH の解散ツアーに密着した『LOVE iS NOT OVER』、藤井風の怒涛の半年間に密着した『Fujii Kaze: grace 2022 Documentary』を 2023 年に発表している。

 

イントロダクション

ただ、生きるために―

俳優・東出昌大は猟銃を持ち、山へ向かった。
水道もガスもない状態での暮らし。
狩猟で獲た鹿やイノシシを食べ、
地元の人々と触れ合う日々は、彼に何をもたらしたのか――。

なぜ俳優である東出昌大が狩猟をしているのか。
彼が狩猟をして生命を頂き、生きながらえる生命とは何なのか――。

本作は、根底にある気持ちの混沌、矛盾、葛藤を抱える東出昌大という一人の人間と、MOROHAが発する渾身の言葉とすさまじい熱量が重なり合い、東出自身が問い続けている日々を生々しくスクリーンに映し出していく。

本作の監督を務めた映像作家・エリザベス宮地は、MOROHA「バラ色の日々」「五文銭」「エリザベス」など数々のMVを手掛け、2017年にはMOROHAのドキュメント映画『劇場版 其ノ灯、暮ラシ』を公開。

本作は、事務所退所前より宮地監督から東出サイドへオファーをするが、途中頓挫するも、再度東出からの連絡で企画が動き出し、完成・公開の運びとなる。

また自身も出演し、音楽を担当するのは、今年結成15周年を迎える2人組バンド・MOROHA。

彼らのアコースティックギター一本での切ないメロディは、夢や挫折、恋愛や失恋など実体験を詰め込んだリリックという“魂の叫び”で、聴く者の心に深く刻み付ける。MOROHA・アフロと東出は長年の友人であり、本作では東出自身の心情とMOROHAの歌が熱く交錯していく。

そして2023年、映画『Winny』、『福田村事件』等センセーショナルな作品の出演が続き話題を集め、今、日本映画界に欠かせない存在の俳優・東出昌大。居場所を失い、彼は何を思い感じ、山へ向かったのか――、その答えが本作には遺されている。

狩猟とは――命とは――人間とは――。

MOROHAの作り出す壮絶な音楽と共に、残酷すぎる世界で生きる意志(WILL)を呼び起こす、魂の140分。


 


東出昌大


服部文祥


阿部達也


石川竜一


GOMA


コムアイ


森達也


MOROHA

※出演者:敬称略

『WILL』予告編


公式サイト

 

2024年2月16日(金) 渋谷シネクイント、テアトル新宿、アップリンク京都、ほか全国順次ロードショー

 

監督・撮影・編集:エリザベス宮地
出演:東出昌大、服部文祥、阿部達也、⽯川⻯一、GOMA、コムアイ、森達也  他
音楽・出演:MOROHA

2024 年|日本|カラー|ビスタ|140 分|DCP|映倫審査区分:G

製作・配給・宣伝: SPACE SHOWER FILMS
©2024 SPACE SHOWER FILMS