『沖縄狂想曲』沖縄は日本のカナリアである、沖縄が生きていけなくなったら日本の息が止まる時
『沖縄狂騒曲』は、本土の日本人必見の映画。米軍のオスプレイが墜落し、乗員8人が死亡した事故が起きたのは昨年11月29日のこと。映画の中で欠陥機と紹介されたオスプレイは米国で2026年に製造ラインが閉鎖されることが決まっている。その欠陥機が沖縄には24機あり、住宅地のど真ん中にある普天間基地で訓練を行っている。
原発事故を題材とした『朝日のあたる家』の太田隆文監督が、沖縄問題を徹底取材。インタビューの積み重ねで沖縄の現実を炙り出していく。本土に住む日本人は知らないことの連続で絶対に見るべき映画だろう。
終戦6ヶ月前に長野県に首都移転計画が進められ、沖縄戦は、移転計画の時間稼ぎのための「捨て石」だったいう証言。羽田から関西、沖縄に飛んで行く民間の飛行機がなぜ遠回りしなければならないのか、その理由は「横田ラプコン」と呼ばれる進入管制区が存在し、そこはアメリカによって制空権が掌握されているという事実。迂回するために年間6000億円くらいの燃料が無駄になっているという。それらの原因は、主権を放棄した日米地位協定にある。その協定がなぜ結ばれ続けているのかというと、「国民の無知と無関心、政治家の無責任、官僚の無能力」と沖縄国際大学大学院教授の前泊博盛氏は明言する。
映画の後半では、普天間と辺野古の問題について、沖縄と本土のメディアの言葉の言い換えにより本質が見えにくくなっている様をバッサリ暴いていく。
「辺野古新基地建設問題」が「辺野古移設問題」
「普天間撤去問題」が「普天間移設問題」
というように。
そして、基地撤去に関して「普天間基地を最低でも県外」と発言した鳩山元首相にその真意を太田監督が問いただす。鳩山氏は撤去はもとより移転はなぜ実現できなかったのかをニセ文章に騙された自身の愚かさ、総理より上位にある日米合同委員会の存在を語るが、最後はカメラを見つめて「総理としてうまくいかなかった人間が何を言っているのか」と自嘲する。映画は、オバマ大統領の発言「グアムに移転」を映し出す。
前泊博盛氏は映画の最後で語る。
「沖縄は日本のカナリアである。この沖縄が生きていけなくなったら日本の息が止まる時」
太田隆文 監督
太田隆文
監督
1961年、和歌山県生まれ。62歳。ロサンゼルスの南カリフォルニア大学(USC)に留学。帰国後、テレビドラマ、ビデオ映画を演出。2003年、大林宣彦監督の映画『理由』でメイキングを担当。以後、大林監督を師事。2006年、故郷・和歌山を舞台にした映画『ストロベリーフィールズ』を脚本、監督。
その後、地方を舞台にした青春映画を発表。『青い青い空』(2010)、『向日葵の丘1983年夏』(2015)、『明日にかける橋1989年の想い出』(2019)の脚本、監督を担当。
2013年、原発事故を題材とした『朝日のあたる家』では山本太郎が出演し大ヒット。以降、社会派ドキュメンタリー『ドキュメンタリー沖縄戦 知られされる悲しみの記憶』(2020)、『乙女たちの沖縄戦 白梅学徒の記録』(2022)を発表。ほとんどの監督作品は海外の映画祭で上映され、高い評価を受けている。
ストーリー
沖縄で起こる数々の問題。辺野古基地-問題。国際大学ヘリコプター墜落事故。オスプレー騒音、墜落問題。古くはコザ蜂起(暴動)、由美子ちゃん事件等。多くの日本人が、それら県民の苦悩を知る機会は少ない。
そんな沖縄問題を取材、有識者による徹底解説。元大手新聞-論説委員、沖縄の著名大学教諭、元市長、元県庁の幹部らが、マスコミが伝えない現実を徹底して解説。
さらに沖縄県知事だった大田昌秀の挑戦。元内閣総理大臣・鳩山由紀夫が「最低でも県外」と発言した真意を激白。れいわ新選組・山本太郎の驚きの国会質問も紹介する。
原発問題を描いた『朝日のあたる家』の太田隆文監督が『ドキュメンタリー沖縄戦』『乙女たちの沖縄戦』に続いて、沖縄と日本の現実に切り込んだ問題作。
『沖縄狂想曲』予告編
公式サイト
2024年2月3日(土) 新宿K’s cinema、ほか全国順次ロードショー
2024年2月23日(金・祝) アップリンク京都
Cast
宮本弘美・下地輝明・上原美智子・山城正輝・宮城 弘・佐喜眞道夫・池上智海・知花昌一・永山博美・松田 栄・長浜美枝子・恩河幸彦・津波竜斗・菊上元明・栩野幸知・宮島真一・岸本 健・橋本美千代・大城定夫・大城貴代子・大田昌秀・金城 実・高山朝光・石原昌家・比嘉幹郎・比屋根照夫・前泊博盛・松田恵子・井上あすか・山内和将・遠藤晃治・瑞慶覧長敏・屋良朝博・リリー・瑞慶覧長風・川満卓郎
山本太郎・鳩山由紀夫
Staff
監督・構成:太田隆文
製作:鯛中 淳
撮影・編集:三本木久城
企画:岩下秀雄
インタビュー:太田隆文・永田よしのり
撮影応援:富澤昭文
プロダクションマネージャー:小林良二
プロデューサー:太田隆文
提供:シンク アンド ウィル
制作:青空映画舎
語り:斉藤とも子・久場寿幸
声の出演:水津亜子・嵯峨崇司・酒井康行
2024年、日本、上映時間:115分
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